宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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核融合反応ではなかった! 急速に成長している白色矮星が超軟X線を放射する原因

2018年12月31日 | 宇宙 space
白色矮星の連星系から放射されている超軟X線が検出されました。

ただこの超軟X線は、これまでの理論とは異なるメカニズムにより放射されたものだと考えられているんですねー
さらに、白色矮星は伴星から多くの物質を引き込んでいて観測史上最速で太りつつあるようです。


白色矮星は核融合を続けることが出来なくなった天体

太陽のような恒星は、中心部で起こる核融合反応によって光と熱を発しています。

核融合反応が進むと、恒星の中心には反応によって生成されたヘリウムの塊のような芯ができてきます。
これにより、今まで中心部で起こっていた核融合反応も、ヘリウムの周りで起こるようになります。

このように核融合反応が起こる場所が外側へ行くことによって恒星全体は膨らみ始めるんですねー
この状態を赤色巨星といいます。

赤色巨星の膨らんだ外層部分は星の中心から遠いので、重力があまり強くありません。
なので、外層部分にあるガスは重力を振り切って宇宙空間へと離散していくことに…

外層のガスが離散し続けると、最後には星の中心核がむき出しになってしまいます。
ガスが無くなってしまうと核融合反応を続けることが出来なくなり、恒星はこの段階で死を迎え、重力で縮んでいき青白く輝く高温の天体になります。

そして、離散したガスは惑星状星雲に、5万度を超える高温の中心核は白色矮星になるというわけです。
  惑星状星雲は中心核が放つ紫外線によって電離され、
  以前は恒星の外層だった水素やヘリウム、
  酸素や窒素などが元素特有の波長で光を放つ。


白色矮星は、地球ほどの大きさの領域に太陽ほどの質量が詰め込まれた非常に重力の強い天体です。
多くの場合、もう一つの星(伴星)と連星系を成していて、白色矮星には伴星から物質が流れ込んでいるそうです。
○○○
白色矮星(左)と赤色矮星の連星系(イメージ図)。
ちなみに、白色矮星は核融合反応を続けることができない天体なので、内部にエネルギー源を持っていません。
そう、余熱のみで輝いている冷めつつある天体なんですねー

余熱が無くなれば電磁波を放たなくなるので、まったく観測することが出来ない黒色矮星になってしまいます。

ただ、白色矮星が放熱によって黒色矮星に変化するのに必要な時間は数百億年ほど。

宇宙が誕生してから137億年なので、黒色矮星は観測できないというより、宇宙にはまだ存在していない天体だと考えられています。
  太陽系の未来かも… 地球も白色矮星に切り裂かれてしまう?
    


核融合反応を伴わない超軟X線の放射

2016年のこと、超新星など突然明るくなる天体を世界中のネットワークで観測しているASASSNチームが、地球から約20万光年彼方の小マゼラン雲で発生した突然現象“ASASSN-16oh”をとらえます。

この天体をNASAのX線天文衛星“チャンドラ”と、ガンマ線バースト監視衛星“スウィフト”で調べてみると、明るいX線バーストが検出され、そのX線特性から“ASASSN-16oh”が白色矮星の連星系であることが分かります。

さらに、“ASASSN-16oh”から検出されたのは、数十万度の温度のガスに由来する軟X線(低エネルギーのX線)。
とくに、そのX線放射が通常の恒星大気からの軟X線に比べてはるかに明るかったので、“ASASSN-16oh”は“超軟X線源”に分類されることになります。

白色矮星から超軟X線が放射されるメカニズムとしては、連星系の相手の星から白色矮星の表面に物質が降り積もって、そこで核融合反応が起こるというものがこれまで考えられてきました。

そう、これまでに知られているすべての超軟X線は、白色矮星の表面における核融合反応に伴うもので、X線は白色矮星全体から放射されていることになります。

でも、“チャンドラ”の観測によって示されたのは、“ASASSN-18oh”からの超軟X線が白色矮星の表面にある小さな領域から放射されていることでした。

また、可視光線での明るさは、表面で核融合反応が進んでいることが知られる他の白色矮星の1%しかないことも示され、核融合の場合のように急激に増光することもありませんでした。

こうした結果から考えられるのは、“ASASSN-16oh”は核融合ではない現象で超軟X線を放射していることでした。


原因は伴星からの物質降着だった

白色矮星が伴星である赤色巨星からガスを引き込むという点では同じですが、そのガスは白色矮星を囲む大きな円盤へと降り積もることになります。

ガスは渦を巻いて白色矮星へと落ちていきながら高温になり、円盤と星が接する帯状の領域に沿ってX線が放射されます。

円盤を通じて落ちていくガスの量は大幅に変化しているので、急速に増えるとX線の強度も強くなって、超軟X線になるそうです。

超軟X線放射は、核融合反応と伴星からの物質降着という2つの異なる方法で、それぞれ発生することが分かったんですねー

“ASASSN-16oh”では、過去の観測でとらえたどの連星系よりも多くの量の物質流入が起こっていて、最も速く太っていく白色矮星の可能性があります。

白色矮星の質量が増え続けて限界に達するとIa型超新星爆発を起こすはずなんですが、“ASASSN-16oh”の質量はすでに異常に大きいことが示唆されています。

天文学的な時間スケールですが、近い将来“ASASSN-16oh”は超新星爆発を起こすことになりそうですね。


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大質量楕円銀河はどのようにして大きくなったのか? 祖先は初期宇宙に存在する小さな大質量銀河かも

2018年12月29日 | 銀河・銀河団
すばる望遠鏡による観測で、約120億年前の宇宙に存在する大質量楕円銀河の祖先の形態が明らかになってきました。

大質量楕円銀河の形成の謎を解き明かす上でカギになる重要な成果らしいですよ。


楕円銀河はどうやって大きく成長したのか

宇宙には渦巻銀河や楕円銀河など様々な種類の銀河が存在しています。

その中で重要なテーマの1つになっているのが、大質量楕円銀河がどのように誕生したのかということ。

大質量楕円銀河のほとんどの星は非常に年老いているのですが、いつどのように大量の星が作られたのか、星形成活動を止めたのはいつか、っといったことが調べられています。

その中で、特に着目されているのは大きさの進化になんですねー

ハッブル宇宙望遠鏡の観測から昔の大質量楕円銀河は非常に小さかったことが分かっています。
ただ、その小さな楕円銀河が大きくなる進化シナリオとしては、小質量銀河同士の合体などが提案されているのですが、まだ結論は得られていません。


初期宇宙に存在する成熟した大質量銀河

今回、国立天文台TMT推進室の研究チームは、すばる望遠鏡でこれまでに得られていた広域多波長深撮像データから、昔の宇宙に存在する大質量銀河の候補天体を選出しています。

昔(遠方)の銀河は暗くて小さいので高精度の観測が必要なのと、赤方偏移によって可視光線が赤外線の波長まで伸びるので、赤外線での観測が必要になります。

この観測対象に非常に適しているのが、すばる望遠鏡でした。

そして、研究チームが発見したのは、約120億年前の宇宙で星形成をやめている成熟した複数の銀河。
太陽1000億個分に相当するほどの質量を持っている大質量銀河の候補でした。

この質量は現在の宇宙に存在する大質量楕円銀河に匹敵するもの。
初期宇宙にこれほど大質量の成熟した銀河が存在することは大きな驚きでした。
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星形成を止めた成熟した大質量銀河の候補を選び出した領域(SXDS領域)カラー合成図。
各大豆は約120億年前の大質量楕円銀河の祖先を、
すばる望遠鏡で観測した高分解能近赤外線画像。


小さな大質量銀河からの進化

さらに、これらの銀河の近赤外線高分解能画像を新たにすばる望遠鏡で撮影してみると、約120億年前の大質量楕円銀河は有効半径(表面輝度の半分が入る半径)がわずか1600光年ほどしかないことが分かります。

この大きさは驚くほど小さいもので、現在の宇宙に存在する同程度の星質量(銀河内のすべての星の総質量)を持つ大質量楕円銀河の大きさの約20分1しかありませんでした。

では、120億年前の宇宙に存在する小さい大質量銀河は、どのようなサイズの進化をして現在の大質量楕円銀河になったのでしょうか。

研究チームは、今回見つかった銀河を含めた各時代のもっとも重い銀河が、現在の宇宙に存在する最も重い銀河に進化したと過程して、過去の研究成果も利用して銀河の星質量の進化を調査。

すると、最も重い銀河の大きさと星質量進化は、小質量銀河の合体シナリオでよく再現できることが分かりました。
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各時代における銀河の星質量(横軸)とサイズ(縦軸)の関係を示したグラフ。
灰色の実践カーブは、たくさんの小質量銀河の合体、
点線カーブは大質量銀河の合体で期待される星質量・サイズ進化。

今回の研究では、すばる望遠鏡の観測で銀河の大きさをはかることが出来ました。
これらの銀河のより詳細な形を調べることで、どのように形成されたかをさらに調べることも可能になり、まだまだ観測が必要になるんですねー

そんな中、日本が国際協力で進めている口径30メートルの次世代超大型光学赤外線望遠鏡“TMT”や、NASAの次世代宇宙望遠鏡“ジェームズ・ウェッブ”の今後の活躍が期待されています。

詳細な遠方銀河の形態研究や、120億光年を超える遠方宇宙の観測… どんな発見があるのか楽しみですね。


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若い段階にある原始惑星系円盤でも惑星は存在する? アルマ望遠鏡がとらえた惑星が誕生しつつある現場から分かったこと

2018年12月27日 | 宇宙 space
新しく生まれた恒星の周囲を取り巻くガスやチリが回転している“原始惑星系円盤”。

今回、20個の若い星を取り巻く“原始惑星系円盤”が、アルマ望遠鏡により高解像度で観測されました。

理由は、円盤の構造や作られ方が一般的なものかどうかを判断するには、複数の“原始惑星系円盤”を観測して類似点や相違点を知る必要があったから。

そして分かってきたのは、若い段階にある原始惑星系円盤でも惑星は存在するということでした。


一度に多くの原始惑星系円盤を観測するプロジェクト

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームがアルマ望遠鏡を使って、惑星系誕生現場の大規模な観測計画“DSHARP”を実施しました。
  DSHARP(Disk Substructures at High Angulaar Resolution Project)は、
  高解像度による原始惑星系円盤構造観測プロジェクト。


このプロジェクトの目的は、“原始惑星系円盤”の構造や、その中で惑星が誕生するのにかかる時間など、惑星系誕生にかかわる様々な情報を得ること。
今回、太陽系近傍の20個の若い星を取り巻くチリの円盤“原始惑星系円盤”が高解像度で観測されました。

これまでのアルマ望遠鏡での観測でも円盤が高精細にとらえられていたのですが、その構造や作られ方が一般的か例外的かは明らかにできていませんでした。
そう、明らかにするには多くの円盤の観測が必要なんですねー
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20の原始惑星系円盤。
多重構造を持つもの、環の一部が明るいもの、渦巻き模様のもの、
連星系それぞれに円盤が存在するもの(一番右上)など、非常に多様性がある。


原始惑星系円盤に見られる類似点と相違点

“DSHARP”が目指したのは、原始惑星系円盤に見られる構造上の類似点と相違点を探すこと。
観測では、20の円盤ほぼ全てに、同心円の隙間構造や細いリング構造が見られました。

隙間やリングの大きさは様々で、中心の星から数天文単位(1天文単位は約1.5億キロ)のところにあるものから、100天文単位(太陽から海王星の約3倍)以上遠い場所にあるものまで見つかっています。
  一部の円盤には渦巻構造や三日月状の構造が見られている。

今回の観測により様々な質量の若い星で、その周りの円盤の詳細な構造をはっきりと描き出すことが出来ました。

非常にバラエティに富んだ細かい構造は、直接姿を見ることができない惑星と円盤内の物質との相互作用によるものだと考えられます。

2014年にアルマ望遠鏡が“おうし座HL星”の原始惑星系円盤を高解像度でとらえたとき、この円盤は知られている中でも非常に明るく重いものだったので、これが平均的な惑星誕生現場の姿であるかどうかを判断できませんでした。

今回、“DSHARP”の観測を通して、“おうし座HL星”が特別変わった星ではないこと、むしろ一般的な惑星の誕生現場であるかもしれないということが分かってきたんですねー

  ずっと早い段階で惑星が作られ始めている証拠? を100万歳の若い星で発見
    


若い段階にある原始惑星系円盤でも惑星は存在する

標準的なシナリオでは、星を取り巻く原始惑星系円盤の中で、小さなチリやガスが次第に集まって惑星が形成されると考えられています。
マイクロメートルサイズのチリが合体して小石や岩… っと大きくなっていき、最終的に惑星になるというシナリオです。

こうした段階的な成長には数百万年かかると考えられています。

もし、惑星の誕生に長い時間がかかるとすれば、今回観測されたような構造は、より進化した原始惑星系円盤の中で見つかるはずです。

でも、今回観測された天体の年齢は、およそ20万歳から1300万歳の範囲にある若い段階のもの。

そう、今回の観測結果が示唆しているのは、若い段階にある原始惑星系円盤でも惑星が存在するということでした。

“DSHARP”が実施されたことにより映し出された円盤内の隙間やリング構造は、地球のような岩石質の惑星がどのようにして作られ、成長していくのかという謎に迫るヒントにもなります。

惑星形成の理論によれば、チリが合体して直径1センチ程度の大きさになると、周囲のガスとの摩擦で公転の勢いが失われて中心の星に落下してしまうので、火星や金星、地球のような惑星形成に必要な物質の獲得が起こらないという問題が指摘されてきました。

今回のアルマ望遠鏡による観測で見えてきた高密度のチリのリングは、チリが長期間安定して成長できる場所なのかもしれませんね。


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41年間飛行を続けた“ボイジャー2号”が太陽圏を脱出! 太陽風の影響を受けない恒星間空間へ

2018年12月25日 | 宇宙 space
1977年に打ち上げられた“ボイジャー2号”がやっと太陽圏の外に脱出しました!

このことは“ボイジャー2号”から送られたデータから分かったこと。
姉妹機“ボイジャー1号”に続き、“ボイジャー2号”も太陽圏の外に脱出して恒星間空間へ旅立って行ったんですねー


人類史上2番目に太陽圏を出た人工物

1977年に打ち上げられた“ボイジャー2号”は、16日後に地球を出発した“ボイジャー1号”と同じく、その設計寿命5年のうちに木星と土星への接近探査を行います。

その後の遠隔アップデートにより“ボイジャー2号”はさらに高性能化され、天王星や海王星への接近通過も実施。
4つの惑星探査“グランドツアー”を終えた“ボイジャー2号”は、寿命をはるかに超えて41年間も飛行し続けているんですねー

NASA史上最長の稼働期間記録を持つ探査機になった“ボイジャー2号”が飛行しているのは、地球から180億キロ以上も離れた場所。
“ボイジャー2号”が送信したデータが地球に届くまでには約16.5時間もかかってしまいます。

今年の11月5日のこと、“ボイジャー2号”に搭載されているプラズマ観測装置が、機体周囲の太陽風粒子の急激な減速を観測し、以降太陽風が観測されなくなります。

このことは、“ボイジャー2号”が太陽圏の境界を越えたことを示していて、宇宙線サブシステム、低エネルギー荷電粒子観測器、磁力計のデータも、同じことをを示していました。
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“ボイジャー2号”が検出した銀河宇宙線の増加(上)と、
太陽系内粒子の減少(下)を示したグラフ。
探査機が太陽圏を出て恒星間空間に入ったことが分かる。
太陽圏(ヘリオスフィア)とは、太陽風の粒子と太陽の磁場から形成されている大きな泡のような構造のことで、2012年に人類の探査史上初めて“ボイジャー1号”が太陽圏の外へ飛び出していったことが確認されています。
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太陽圏の外に出た“ボイジャー1号”と“ボイジャー2号”(イメージ図)。
太陽圏と恒星間空間との境界は“ヘリオポーズ”と呼ばれ、高温の太陽風と、冷たく高密度の星間物質とが出会う場所になります。

“ボイジャー2号”には、このヘリオポーズの性質を観測できる装置が搭載されているので、今後その領域に関する初のデータが得られることが期待されています。

今後、“ボイジャー1号”と“ボイジャー2号”が送ってくるデータは、NASAの星間境界観測器“IBEX”のデータと合わせて、恒星間風と太陽圏との相互作用を調べるうえで非常に役立つものになるはずです。

その意味で、“ボイジャー”は太陽系の物理を調べる探査機の中で非常に特別な位置にいるといえるんですねー

太陽系の物理研究は太陽から始まり、太陽風の届くあらゆるところにまで及ぶので、“ボイジャー”から太陽の影響が及ぶ領域の端に関する情報が送られてくれば、全く未知の領域を垣間見ることができますね。


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運用を終えた系外惑星探査衛星“ケプラー”が珍しい超新星爆発の初期段階を観測

2018年12月24日 | 宇宙 space
太陽系の外にある惑星を探査しているのが、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”です。

その“ケプラー”が今回観測していたのは惑星ではなく、遠くの銀河で発生した超新星爆発。

でも、この超新星爆発は他の同タイプとは異なっていたんですねー
“ケプラー”がとらえていたのは、爆発直後から急増光するという変わった性質でした。


爆発後急速に明るくなったIa型超新星

今年の2月のこと、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”が、かに座の方向約1億7000万光年彼方の渦巻銀河“UGC 4780”に出現した超新星“SN 2018oh”の光を検出しました。

この現象をとらえたのは、地上の望遠鏡と連携して天球上の同じ方向を同時観測している時のこと。
観測は約半年間続けられたそうです。
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上段は超新星“SN 2018oh”が出現する前、下段が出現した後。
右端の2つが“ケプラー”による観測画像。
分光観測の結果分かったのは、この天体が分類されたのはIa型超新星だということ。

ただ、典型的なIa型超新星は3週間ほどかけて明るくなり、その後徐々に暗くなっていくのですが、“SN 2018oh”の場合は違っていたんですねー
爆発後急速に明るさを増し、明るさのピークに達したのは数日後のことでした。

地上観測によるデータから、“SN 2018oh”の明るさが極大だった頃の光が明るく青かったことが分かり、高温の天体だったことが分かっています。


Ia型超新星発生のシナリオ

Ia型超新星発生のシナリオは長年の議論の的になっています。

これまでの観測から得られた証拠のほとんどが示しているのは、2つの白色矮星同士の合体によって発生したということ(Double Degenerate:DD説)。

一方、理論モデルから示されているのは、単独の白色矮星が伴星から多くの物質を引き込んで自身の重さを維持できなくなり、爆発を起こして衝撃波が発生するという別のシナリオの可能性でした(Single Degenerate:SD説)。

今回、一部の研究者が考えているのは、“SN 2018oh”がSD説通りの現象の一例だということ。

“SN 2018oh”で観測された明るさと熱は、白色矮星の爆発の衝撃波が伴星に衝突することで作り出された、非常に高温で明るいガス状の物質によるものだと考えています。

ただ、他の研究者は、その類まれな明るさと温度は、別のメカニズムによるものだと考えます。

Ia型超新星は爆発の間に放射性ニッケルを生成し、超新星爆発で生じる光の大部分は、この種の物質が放射性崩壊を起こす際に放射されます。
もし、大量のニッケルが爆発する物質の外層部に存在していれば、今回観測されたような急増光が生じると考えたからです。

Ia型超新星はどれも真の明るさが同じと考えられていて、見掛けの明るさと比較することで、その超新星が出現した銀河までの距離を測定することができます。

宇宙の加速膨張は、こうした観測研究から分かったことですが、宇宙の膨張をより正確に理解するためにも、Ia型超新星の性質や爆発メカニズムを詳細に調べる必要があるんですねー

“ケプラー”が見つけてくれた“SN 2018oh”は、最も近距離に出現した最も明るい超新星になります。
そう、系外惑星探査を主目的とした衛星“ケプラー”が見せてくれたのは、超新星の発見という一面でした。

残念ながら燃料切れのため、“ケプラー”の運用は今年の10月で終了しています。

でも“ケプラー”は、これまでの観測で膨大なデータを取得しているんですねー
このデータの解析を進めていけば、まだまだ新しい発見が出てくるのかもしれませんね。


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