旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

たまには 恋愛小説を

2017-07-05 00:11:36 | 読書
久しぶりの感動。ぼくはめったに、いやほとんど小説を読みません。

友人が読んだと聞いて刺激されて、2016年4月発刊の平野啓一郎『マチネの終わりに』を読みました。

結婚した相手は、人生最愛の人ですか?
ただ愛する人と一緒にいたかった。
なぜ別れなければならなかったのか。
恋の仕方を忘れた大人に贈る恋愛小説。

とPRにあります。

ひとつのテーマは「過去は変えられるか」でしょうか?

こんな一節も、なるほど、そういうものかなあと考えさせられました。

「恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇よりも、愛されるために自分に何か欠けているのかという、十代の頃ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悶を鈍化させてしまうからである。」

「大事なのは、お前たちを愛していたということだった。
理解しがたいだろうが、愛していたからこそ、関係を断ったんだ。」

うーん。ラストシーンの一つ手前のコンサートでは芸術家の魂、ほとばしるエネルギーの源泉で火傷をしそうでした。少し温度が下がって、静かに森有正のことばを思い起こしました。

・・・・・
人間の「仕事」という問題は、人間感情の感情の問題と実に密接な関係があることが、今になってぼくにははっきりと分る。仕事というものはいったい誰のためにするのだろう?
仕事自体のため、と答える人もいるし、自分自身のためと、という人もいる。どちらも決して本当ではない。
仕事は心を持って愛し尊敬する人に見せ、よろこんでもらうためだ。それ以外の理由は全部嘘だ。
                『バビロンの流れのほとりにて』