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俳優・勝地涼くんのこと。

『夢 追いかけて』(1)-1

2008-06-10 02:40:03 | 夢 追いかけて
2003年4月公開。『夢をつなぐ』(※1)『夢 追いかけて』(※2)『生徒たちの金メダル』(※3)の三冊を原作に、盲目のスイマーにして中学校教師の河合純一さん(映画公開時28歳)の半生を綴った映画。
先天性ブドウ膜欠損症のために中学三年生の時に完全失明しながらも、水泳への情熱とまわりの人々の応援に支えられてパラリンピックでの金メダルと教師になることと二つの夢を見事実現させた河合さんの生き方は多くの感動を呼び、公開終了後も全国で繰り返し上映会が開催されています。

関係者の尽力にもかかわらず長らくDVD化もテレビ放映もされてなかったため、上映会に応募するしか鑑賞手段がなかったのですが(今年7月4日ついにDVDが発売されます)、2006年5月7日に静岡第一テレビで初放映され、ようやく家庭で繰り返し見ることができるようになりました。

勝地くんは河合さん=純一の少年時代、中学から高校(盲学校)にかけての時期を演じています。
出演時間は河合さんご本人が演じる教師時代より多いくらいで、第二の主人公とも言うべきポジション。盲人に見えなくてはならないうえ完全失明する前後の苦悩をも表現できなくてはいけない、結構な難役と言えます。

私が最初に勝地くん演じる純一少年の姿を見たのは、映画雑誌『男優倶楽部』(現『Acteur』)vol.11(2003年4月発売号)の『夢 追いかけて』作品紹介+勝地くんインタビューに付された映画のワンシーンのカットでした。
失明一歩手前の純一が自分の目の前に手をかざしている。その表情に正直ぞくっとしました。
いつもの目力はかけらもない、ガラス玉のような目。焦点が合ってないというより焦点そのものが存在していないような。
このカット一つで「見えてないんだな」と納得させられてしまう。なぜこんな目が出来るのだろう、と呆然としてしまいました。
勝地くん自身もコンタクトなしだと視力0.01(17歳時点。2003年10月発売の『HERO VISION』vol.12の記載)なので、それも見えない感覚を掴むうえで多少参考になっているのでしょうか。

その後本編を見て驚いたのが勝地くん演じる純一がことのほか河合さんと似て見えること。
以前河合さんが勝地くんを評して「ぼくとキャラクターが似ている。プロデューサーはさすがである。ぼくとキャラがかぶる少年俳優を見つけてきたのだから。」(※4)と書いてらしたのを読んだときは、「似てるかなあ?」と思ってたのですが、(見えない設定なので)目を細めて微笑する少年純一は確かに意外なほど青年純一とよく似ていた。
顔立ち自体は全く違うのに、表情でこれだけ似るんだなあと感心したものでした。きっと河合さんとたくさん一緒に過ごして河合さんの表情を研究したんでしょうね。

この映画を通じて河合さんと出会ったことは勝地くんにとって学ぶところが多かったようです。
少し長くなりますが、前述の『男優倶楽部』のインタビュー記事から引用すると、

「実は自分にはマイナス思考の部分があって、結構悩んじゃう性格で、ちょっとしたことでウーッとなっちゃうタイプなんで。
でも河合さんを見ていたら、自分が悩んでいることがとてもちっぽけに思えてきて。河合さんの方がどれだけ悩んだんだろうなって。
いっぱい悩んで苦しい思いをしたからこそ、今人前で明るく振舞えると思うんです。どんな壁にぶつかっても、それをちゃんと乗り越えているのが凄いですね。
世の中には悩み事で簡単に死んでしまう人もいます。それはとてももったいないこと。もっともっと生きるのに必死で頑張っていらっしゃる方はいっぱいいるのに。」 

河合さんへの敬慕と、16歳の少年らしい生真面目な純粋さと聡明さを感じさせるこのインタビュー記事はなかなかに好評だったようで、次の号掲載の俳優人気投票(vol.11に添付のハガキによる)で勝地くんがいきなり10位に入ってました。
河合さんも「じつは、ぼくはすごく悩むタイプで、昔から、うじうじするようなことが月に数回ある。この一年にも何度となくあった。短期間だが、落ち込むし、悩む。でも、それがあるから、又、次に進める。」(※2)と書いているので、この二人表面的な雰囲気だけでなく内面的にも似通っているのかもしれません。

ちなみにこの作品を監督された花堂純次さんは勝地くんが13歳の時に出演したドラマ『永遠の仔』を演出してらしたので、勝地くんが少年純一役に選ばれたのはその縁もあったんじゃないかなあと想像してます。
花堂監督は今も勝地くんの活躍を見守ってくださってるようで、2006年4月の舞台『父帰る/屋上の狂人』を観劇されたさいに「嬉しかったのは涼がアイドル的な方向ではなく俳優として確実な成長を見せてくれたこと」(概要)との評を書いてらしたのが思い出されます。

(つづく)

 

※1・・・澤井希代治『夢をつなぐ 全盲の金メダリスト 河合純一物語』(ひくまの出版、1997年)

※2・・・河合純一『夢 追いかけて 全盲の普通中学教師・河合純一の教壇日記』(ひくまの出版、2000年) 

※3・・・河合純一『生徒たちの金メダル ―夢 輝かせて』(ひくまの出版、2001年)

※4・・・河合純一『ぼくが映画に出たあの夏の日のこと 映画「夢 追いかけて」撮影日記』(ひくまの出版、2003年)

 

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