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俳優・勝地涼くんのこと。

『ピクトアップ』(3)

2008-01-06 00:49:53 | 雑誌など
掟ポルシェさんのインタビュー。
『ソウルトレイン』関係のポルシェさんのインタビューはどれも面白いんですが、内容が一番真面目だったのがこの『ピクトアップ』。

やや露悪的なまでにズバズバと自分を語る中でさらっと含蓄のある発言(『DVDでーた』での、「ビデオ屋の店員が、バイト仲間の彼女がカワイイって身もだえするだけのダメダメな作品を、こうして1枚のDVDにしてしまうということ自体、日本の文化レベルが高いということのひとつの証明だと思いますよ(笑)」というコメントとか)をし、なおかつ真顔(想像)でギャグを交えているのはいつも通りなんですが、全体のトーンが将来への不安や焦燥感を感じさせるものになっているのは勝地くんとの対談形式でなかったせいでしょうか。
それでも「三浦監督がもう(注・続編を)撮りたくないというならば山本晋也監督でも、村西とおる監督でもいいですよ。」とか笑いも入れてますが。エロ度合いが倍増しそうな人選だ(笑)。

しかし隣ページの勝地くんのインタビューと並べてみると、ポルシェさんの面白さがよくわかります。
今回に限らず勝地くんの発言は、若々しい純粋さやお芝居への静かな情熱に満ちていて、その清冽さに心を洗われることしばしばなのですが、ポルシェさんの発言内容はいい意味で「汚れた大人」な感じというか。
年齢もさることながら『TV Bros』の項で書いた非王道に生きる者の自負心と屈折が彼の話に奥行きを与えている。一言で言っちゃえば「人生経験豊富」というやつですかね。
インタビュー記事など読んでいて「うわこの人面白え!」と感じるのは大体ポルシェさんタイプが多いです。

なのですが、今回のインタビューで「面白い」というより感動を覚えた発言が一つ。 

「自分の中でやってはいけないラインって、ひとつだけしかないんです。それは、〈弱ってる者のために、何かを差し出す〉こと。
弱ってるヤツに手を差し伸べたら向こうが掴んでくるのは当たり前ですよね。それは男らしくない。」

最初読んだときは、「弱ってる人を助けるのは良い事じゃないのか?」と一瞬困惑しかけたんですが、すがってくるのがわかりきってる相手に優しくすることで手軽に自分の孤独や不安感をまぎらわすような真似をしたくない、弱い者同士傷を舐めあうような結びつきは格好悪い、という意味ですよね。
(甘やかすのは相手のためにならない、という意味かとも思ったんですが、「男らしくない」という締めからすれば上の解釈の方が妥当かと)

適当に生きてるような事を言いながらも、ぎりぎりのところで決して自分を甘やかさない。
そこに野木とは一味違うポルシェさんの「男気」を見て、以来私の中でポルシェさんは「カッコいい人」として認識されるようになりました。いかにアホなことをやってる時だろうと。 

翌月発売の『婦人公論』2007年1月22日号に勝地くんのロングインタビューが載ったのですが、

「オーディションや、監督との面接や、現場にいるとき、めっちゃめちゃ緊張していても、あえて胸を張って、自信があるように振舞います。
偉そうにするんじゃないです。ちゃんと落ち着いて、相手の方の目を見て話す。」

という箇所を読んで、このポルシェさんの言葉を思い出しました。
緊張でお腹が痛くなっても足が震えてても、決して逃げ出さずしっかり顔を上げて正面を見据える。その自分に負けない、自分を甘やかさない姿勢は、ポルシェさんにも通じるもの。
一見まるで接点のなさそうなこの二人がなぜ仲良くなれたのか、この時了解できたような気がしたのでした。


三浦大輔監督のインタビュー。
ページのアオリに「ポツドールという劇団は、何かとスキャンダラスな言葉で語られる。「リアルを徹底的に追及したセミドキュメント」「役者のプライベートをさらけ出す」云々。」とありますが、聞いたところでは普通に全裸シーンとかバンバン出てくるようで。
今回映像作品だけにそのへんはずいぶん抑え目にして下さってありがとうございます(笑)。それでも原作よりエロ度合いが増してるんですけどね。

とはいえどこかほのぼのしたポップな感じの仕上がり。
このインタビューを読むと、三浦監督としては本来もっと演出にも演技の付け方にも自分のカラーを出していく予定だったけれど、初めての映像作品で勝手がわからなかったのとスケジュールがきつきつだったために、結局原作の世界観寄りにしたそう。
監督のカラーと原作のカラーがいい具合でミックスされた結果がああなったわけですね。

各章のタイトルやエンディングのバックにまこちん先生のイラストをそのまま使ってるのも、パワーポイントっぽいタイトル文字の出し方も、その際のBGMを毎回違えてあるのも、FLOWのテーマ曲もDVDのパッケージ(こけしも含め、まこちん先生を除く全キャラが登場。こうしてみると本当にキャストの少ない作品だったんだなあ)も、すべてがツボでした。
「映像的にも、トッポいものとかカッコつけたものにはしないで、ポップで観やすいものにしようと」した監督の考えが上手くはまった感じです。

あとこれは想像なんですが、三浦監督絶対女性にモテそうですね。
原作の「白い女」は最終的に「童貞をもてあそんだ悪女」として描かれてる(終始須藤目線なのでそうなる)のですが、DVDでは最終章で須藤視点を離れた素の「川村くんの彼女」の顔を見せる場面(「また刺されちゃうよ」のシーン)があって、実際の彼女は須藤の思い描くような「白い女」でも「黒い女」でもない普通の女の子なんだな、というのがわかるようになっている。
『SOUL TRAIN』(2)で触れた「須藤が「白い女」に幻滅するきっかけ」の変更もそうですが、原作に比べ「白い女」の描写に悪意がない。
これは描き手が、モテない男のルサンチマンに縁薄いゆえなんじゃないかなと感じたのでした。
実際外見も二枚目だし、メイキングで見せる照れたような笑顔にも不思議な色気がありますしね。

 

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