まずはひかる役の藤原ひとみさん。白い肌とふっくらしたほんのりピンク色の頬といい目鼻立ちといい戦前の旧家の令嬢にふさわしく、拗ねた顔はのびのび育ったお嬢さんらしい怖い者知らずの驕慢さを、猛や両親を責める(叱る)顔と声は生まれながらの気位の高さと潔癖さを感じさせました。
勝地くん同様、技術的にはまだまだ未完成ではありますが、猛とからむ場面、特に第15回の「私を行かせたお前が悪いのよ!」の前後などは、互いの演技に触発されたかのように二人とも真に迫ったお芝居をしていて瞠目させられました。
失礼ながら、昼ドラそれも子役のパートでこれだけの演技合戦を見られるとは思いもかけなかった。相性も良いんでしょうね。
藤原さんは現在松永裕子さんと改名されて活動されてるそうですが、どんな女優さんになってるんだろうな。
ついで文彦役の藤間宇宙くん。文彦というのは性根の座らない、姑息かつ陰険なお坊ちゃんですが、完全な悪人ではなくむしろ心の弱い人間。
だからこそ雑草のような猛の強さに嫉妬もするし、両親に認められたい、愛されたいという気持ちを強く持っている。
憎憎しいながらも憐れさをも漂わせる役柄であり、その意味では一番難易度は高いかもしれない。それを藤間くんは見事に演じ切っていました。
猛に感情移入する視聴者からはどうしても嫌われるポジションなのに、気後れせず思いきりよく振り切れたお芝居を見せてくれました。
プロフィールを見ると藤間くんは当時まだ17歳だったはず。いやすごいです。
他にも伝衛門役の渡辺裕之さんは佇まいだけで伝衛門という人間の度量の大きさと渋い男の魅力を醸し出していたし、絹役のかとうかずこさんも猛に対する厳しさと文彦に対する甘さのうちに母の慈愛と愚かさを見事に表現していた。
一話30分のドラマに毎回ショッキングな引きを用意した今作品は相当な急展開の連続で、ストーリー的には無理が生じまくってるのですが(しかし存外テーマ性にはブレがなく、心理的な伏線がちゃんと張られている)、ツッコミどころありありながらもこれだけ見応えのあるドラマになりえたのは、ひとえにキャスト陣の演技力と、彼らの細やかな表情をしっかり捉えた演出にあったように思います。
次回、第二部に限定して作品のレビューを書いていこうと思います。