先日、賃借人による故意の破損・汚損の一部を火災保険で対応することができました。
この賃貸物件は自主管理ではなく管理会社を介して管理していたため、管理会社に翌月末までに退去する旨の連絡がありました。
ただ、その期日が近づいてきても、具体的な退去日の連絡がなく、またこれまでも家賃の件などで連絡を取ろうとしても一向に電話に出てもらえず、信頼関係の構築が難しい賃借人でした。
結局、月末の直前になって、ようやく解約通知書が届きました。その賃借人の現住所欄には東京の住所が書かれていて、退去の立ち合いもせずに、すでに東京へ引っ越してしまったとのことでした。鍵の返却もされていないため、管理会社が弁護士に相談した結果、賃貸借契約の解約とみなしてよいか、残置物はこちらで処分してよいか、その処分費用は負担することでよいか、という覚書を東京の住所宛に郵送しました。
文書案は管理会社にて作成いただいたのですが、もし返信が無く、その後の処理が滞ることを懸念して、私から「もしⅹ月x日までに回答がない場合には、上記内容を承諾したものとする」といった文言も加えておいたほうが安心ではないか、という意見を出しました。しかし、書類の無効性の観点からその文言はないほうがよい、という弁護士のアドバイスがあったそうです。ただ、返送期限としては2週間とした内容となっています。
なるほど。そういう考えもあるのですね。
案の定、賃借人からは2週間たっても覚書が返送されませんでした。
一応先ほどの覚書は送付済みであり、万が一裁判になっても問題ないという弁護士のアドバイスから、まずは室内に立ち入り管理会社に状況を確認してもらいました。
結構ちらかした状態で退去されてしまったんですね。ゴミもそのまま。リフォームしたてのきれいな部屋だったんですが、残念です。
今後、かかる費用としては
鍵交換、畳表替え、残置物撤去、ハウスクリーニング、破損・汚損
このうち、鍵交換、畳表替えは無条件で家賃保証会社負担です。残置物撤去・ハウスクリーニング・破損および汚損については、家賃保証会社に請求できるのは最大家賃3か月分という契約です。しかも、破損・汚損は賃借人自らがそのことを認めることが条件です。すでに、残置物撤去とハウスクリーニングで合計20万円となり、家賃3か月分を超えてしまってしまうため、いずれにしても破損・汚損は大家にて負担しなくてはなりません。
原則では、借家人賠償責任特約にて、日常生活で生じるレベルを超えた破損・汚損については賃借人に請求できるのですが、すでに賃借人は東京に引越し、携帯へも連絡つかず。また、緊急連絡先へも同様に連絡がつかないという状況であるため、現時点では、大家負担とならざるを得ません。
そこで、ふと思いついたのは、火災保険での破損・汚損に対する補償。
この破損等リスクについて、火災保険の契約をするときに保険代理店にもう少し詳しくその内容を聞いたことがあります。
= 保険代理店からの説明 =
「破損の補償内容は 「偶然なかつ外来の事故による破損」です。この補償はあくまで建物のみにかかる補償となっております。例えば、門や外壁や玄関のガラスなどが破損や汚損していた場合に補償されます。
借家人賠償は賃貸借人が借りている部屋に対して補償されるものであって部屋の造作も含め事故により損害を与えてしまった場合に補償されるものなので保険も目的が違うことから重複することはありません。万一、入居者の方が建物に損害を与えてしまった場合は個人賠償の域となります。」
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部屋に対しては借家人賠償、建物は個人賠償との説明ですが、これは物件のイメージとしてはアパートやマンションなどの共有部分がある物件を想定している感じです。今回は、戸建なので、賃借人は建物自体も借りている、と解釈するのが自然だと思うので、借家人賠償ですべて対応することになりそうです。
そのため、管理会社に、賃借人が契約している借家人賠償責任保険で今回の破損・汚損について対応できないか聞いたところ、これは賃借人と保証会社との間で契約された保険なので賃借人が保証会社に連絡するなどして動いてもらわないと難しい、とのこと。確かにそうですね。。。(しかし、こういった状況でりようできないと、何のために借家人賠償責任保険に加入してもらっていたのか、という気もしてしまいます。。。)
そこで、先ほどの火災保険の代理店に今回の件について、火災保険の破損・汚損の補償対象とならないか、可能性はかなり低いものの相談してみました。
「この破損・汚損に対する補償は「偶然なかつ外来の事故」であり、その原因が賃借人という場合はグレーなので、保険会社と話し合います。そのため、状況を知りたいので、破損・汚損箇所の写真、修繕見積書を送付してほしい」とのこと。全く、ダメということでもないらしい。
そこで破損・汚損箇所の写真を代理店に送りました。以下は、送付した写真の一部です。
後で説明しますが、⇒ の内容は最終的な保険会社の判断結果、さらに➡は実際の対処です。
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キッチンドアの油性ペン落書き ⇒機能の損失はないため否認 ➡洗剤などで除去 |
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1階の天井クロスの剥がれ(2-3cm) ⇒クロスが破れていて事故性が疑われるため容認 ➡天井全体のクロス張替 |
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2階壁クロスの液体跡 ⇒単なる汚損の程度を逸脱しているので容認 ➡クロス張替 |
これらは全体の一部。最初の写真は階段の蹴込板が割れてしまっています。また、建具・設備・クロス・CFなどに落書きや汚れがあります。特に、トイレのCFはひどくべたついた状態で、和室壁のクロスには液体が垂れた跡が広い範囲にわたってついてしまっています。
こうやって改めてよく見ると、経年劣化や過失というレベルではなく、重過失、故意の破損・汚損というレベルだと感じます。
【リフォーム会社の修繕見積】
まず、管理会社(リフォーム会社)に修繕費用を見積もってもらったところ、クロス張替え、CF張替え、建具修繕等でおよそ15万円となりました。
【保険会社の認定結果】
先ほどの修繕費用見積書を保険代理店を経由して保険会社に提出しました。
最初の認定結果としては、階段蹴込部分はOKだが、それ以外は対象外という結果となりました。
判断のポイントとしては、日常生活上の汚れや機能上問題が無い場合は否認、保険の事故性(偶発かつ外来)があれば容認ということらしいです。
しかし、クロスの汚損やトイレCFの激しいべたつき等の状況を説明し、単なる日常生活の汚れの域を超えていることを保険代理店を通してアピールした結果、全部ではないものの、クロスやCFの一部については認定をもらうことができました。
この最終的な結果に対する理由を上記写真にコメントとして付けておきました。
結果として、認定金額は全体で6.5万円となりました。
しかし、この破損・汚損では免責金額として5千円を設定しています。それぞれの破損・汚損の認定箇所(合計4か所)は、同日に起こったわけではないと想像されるため、それぞれを1事故としてカウントするとのこと。1事故それぞれに対して免責5千円なので、結局、支払われる保険金の額としては
認定金額(6.5万円) -免責金 +臨時費用(10%) = 5万円 となりました。
15万円に対して5万円は保険から支払われることになっため、残る10万円は大家負担となります。ただ、その後、建具の落書きは私自身でなんとか落とすことができたため、負担額はもう少し減らすことができそうですが、それでも7-8万円はかかるでしょうね。
結構いろいろと交渉した割には支払金額は少なかったかなという印象ですが、そもそも保険で支払われるかどうかも怪しかったため、5万円でももえらえることになったのはありがたいです。
今回のケースは、今後の賃借人の退去時の参考にしたいと思います。
【まとめ】
借家人賠償責任特約にて対応することが原則ではあるものの、入居者による事故の場合(通常の汚損をこえた事故性のある破損・汚損)は、火災保険の破損・汚損でも対応可能。
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