何日も雨の降り続いた次の日
駅を行き交う女性たちは
ほとんどブーツを履いていないのだった
それに気付いてみると
確かにそうだこの膝下まで
包んでくれているものは
もう温かい安心感よりも
ぬるい空気を滞留させ
まとわりつかせている筒なのだった
ぐるりと見回せば
ブーツを履いている足はいまや
馬を蹴りあげる軍靴のように重たい
つい昨日、つい先ほどまで
しっくりしていたものが
姿を変えずに
がらりと姿を変えてしまって
はみだしものになっている
毎朝天気予報を見て
気温もチェックしているはず
昨日という断片を取り上げて
カタコトの数字に頼って
そう変わらないな
昨日は、その前の昨日、その前の昨日
向かい合わせの鏡の中のように
無限に波乗りしながらつながっていることを忘れて
そう思うけれど
いつのまにか
体の中にはもう温かい潮流がある
そうだ
日々すれ違う木々にも
いつのまにか
柔らかい産毛を生やした
子やぎの角のような芽や
小さな王冠や
かわいいひづめのような芽が
育っていた
空気の中で体の中で
もう春の風がとっくに
外へ出ようと渦を巻いていた
そうだ、春はもうそこ
個々の兆候を結び合わせて
それはつまりこういうことだと
ぴったりするのはいつもあとからで
(ぴったりさせるのはいつも風で)
毎年のことなのに
毎年、春に出し抜かれて
うっかりウサギのように驚いてしまう
この木のつぼみはもうまもなく
くすんだ中から
花嫁のドレスの色をのぞかせて
恥じらいながらゆっくり開いていくのだろう
私の中にも毎年
朽ちて落ち
また新しく、柔らかい皮に包まれて生まれ
開いていくものがあるだろうか
駅を行き交う女性たちは
ほとんどブーツを履いていないのだった
それに気付いてみると
確かにそうだこの膝下まで
包んでくれているものは
もう温かい安心感よりも
ぬるい空気を滞留させ
まとわりつかせている筒なのだった
ぐるりと見回せば
ブーツを履いている足はいまや
馬を蹴りあげる軍靴のように重たい
つい昨日、つい先ほどまで
しっくりしていたものが
姿を変えずに
がらりと姿を変えてしまって
はみだしものになっている
毎朝天気予報を見て
気温もチェックしているはず
昨日という断片を取り上げて
カタコトの数字に頼って
そう変わらないな
昨日は、その前の昨日、その前の昨日
向かい合わせの鏡の中のように
無限に波乗りしながらつながっていることを忘れて
そう思うけれど
いつのまにか
体の中にはもう温かい潮流がある
そうだ
日々すれ違う木々にも
いつのまにか
柔らかい産毛を生やした
子やぎの角のような芽や
小さな王冠や
かわいいひづめのような芽が
育っていた
空気の中で体の中で
もう春の風がとっくに
外へ出ようと渦を巻いていた
そうだ、春はもうそこ
個々の兆候を結び合わせて
それはつまりこういうことだと
ぴったりするのはいつもあとからで
(ぴったりさせるのはいつも風で)
毎年のことなのに
毎年、春に出し抜かれて
うっかりウサギのように驚いてしまう
この木のつぼみはもうまもなく
くすんだ中から
花嫁のドレスの色をのぞかせて
恥じらいながらゆっくり開いていくのだろう
私の中にも毎年
朽ちて落ち
また新しく、柔らかい皮に包まれて生まれ
開いていくものがあるだろうか
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