詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

響きの森

2014年08月30日 | 
五線譜を辿り
ピアノに向かって指を動かすと
ヘッドフォンの中から鳥の声がする
隣家の庭の木立を通る風が
カーテンをふくらませて部屋に入り
ヘッドフォンの森の奥へと
音符を連れて吹きぬけていく
目をつむって 月の光
踏み出した地面は
落葉が積もって柔らかい

恐れのない静かな道を歩いていくと
誰かが踏みしだいた跡
私の道と交差して
別の方へと向かっている
残り香のような気配はあなた
あなたの道では
書かれていないソットボーチェ
小声でささやくように
何かが私を惑わす
木々の影が揺れ
独楽を回すようにさっと
風が渦を巻く
追いかけようと
銀色の林を
ゾートロープを覗くように
駈けていく

息がきれて
立ちどまると
かすかに水のはねる音
耳を澄まして歩いていけば
枝葉の間から
きらきら瞬きこぼれる
胸高鳴らせ近付けば湖
ひとりほとりに立って
水面に映っていたのは
私の心
こんなにも静かな
それを確かめるため
この森深く入ってきたのだと
気付き
風はやみ
湖はますます澄み渡り
そしてモレンドジュスカラファン
終わりまで次第にゆっくり
そして弱く
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