詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

くらげのスケッチ

2014年08月19日 | 
何かスケッチするのに良い題材はないか
部屋の中をウロウロして
雑誌を引っ張り出し
パラパラとめくる

描くのにちょうど良いのなんか、と
はなから一歩引き気味なのは
今日のスケッチは気晴らしのために
選ばれた手段だったから

聞くのも飽き飽きする夏バテ気味で
夫には、君が小さくなっていくと言われ
小さくなって
そのまま消え入りそうになっているのは実は
体ではなく心のほうなのだ

何があったと言うほどのことはないけれど
このところ少しずつ
解けない答えが積み重なって
どうしたらよいのかわからない
とりあえずいろんなおまじないを
こだまぜにして唱えている

建物を見るのが好きだから
ヨーロッパの美しいお城など
そう思って探すけど
何か違う

ふと目に留まったのが
ページの真ん中に
大きな楕円形に挿し入れられた
くらげの写真

あたりもつけず
すぐに輪郭を取り始める
最初のひとなぞりで
自分の顔がくらげのゼリーのように
柔らかくなるのがわかった

フニャ スイー フニャ スイー
と泳ぐくらげの
スイーの瞬間をとらえた写真

このなめらかな曲線
なんて気持ちいいのだろう
長く伸びる触手は
水の流れるにまかせて
どこにも力が入っていない
どこにも角ばったところがない
まっすぐさえ優しい

てっぺんにかっぱのような
丸い焦茶色の円があって
そこから幾筋も
とんぼ玉の模様のように
命のはしっこまで茶色が流れている
一本一本線をたどって
色の濃い部分、薄くなっていく部分
陰のところ、光のあたっているところ
描いていくこと、描き残していくことが
いっしょに海の中を泳ぐように楽しい

くらげは触れると痛いのよ
スケッチまでは許される距離
安全圏にとどまって
浮かんだり沈んだりを繰り返し
まるでお遊戯
やがて脳裏に浮かぶはいつか見た
岩場に打ち上げられた
破れた風船のようなくらげの死骸 
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お別れの後に

2014年08月19日 | 
告別式から帰ってくると
慣れない靴と暑さとで
ぐったり疲れてしまっていて
冷たい水を一気に飲んで
畳にごろりと横になる

窓から入ってくる風で
カーテンが揺れる
扇風機がぶーんと回る
小鳥がチュンチュンと鳴く

いつもと変わらぬのどかさに
うとうとしながら見る夢は淡く
目覚めると
クシャクシャになった髪とじっとりと汗ばんだ体とで
ぼんやりと余韻を手探りしている
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