時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

パリ同時多発テロ事件の背景3(サウジの影)

2015-11-17 23:57:42 | 中東
前回、サウジアラビアとISIS(イスラム国)の関係について軽く触れた。
サウード家が支配するサウジアラビアは正真正銘のテロ支援国家だ。

支援するだけでなく、この国は現在、南方に位置するイエメンに侵攻している最中で、
サウジ軍のイエメン攻撃により死傷した人間の数は少なくとも2万3000人以上だ。

フランスのテロ事件の死傷者が300人を越えたとのことだが、それでもなおケタが違う。

また、サウジアラビアのイエメン各州への攻撃により、
105の水道施設、14の空港、108の発電所、340の橋や道路、
104の通信網、244の市場、472の食糧倉庫、1231の教育施設、
214の医療施設、564のモスクなど多くのインフラ設備が破壊された。


文字通りのジェノサイドを今、サウジアラビアは行っている。


元々、この国はイギリスの傀儡国家としてスタートした。

ナジュド地方の族長アブドルアズィ―ズ・イブン・サウードは、
イスラムの急進主義集団、ワッハーブ派の創始者・アブドルワッハーブと協力し、
イギリス政府の支援を受けながら、ナジュド地方とヒジャーズ地方を統一した。

その後、この地方に一族の名前をつけ、
サウード家のアラビア、即ちサウジアラビアと命名する。

イブン・サウードはワッハーブ派のイスラム教徒たちと、
勢力の分割をめぐり合意に達し、彼らを宗教上の番人として組織化させた。

以来、ワッハーブ派はサウジで宗教的権威として権勢を振るってきたが、
彼らこそがアルカイダやISISを輩出してきた組織だった。

アフガニスタンとパキスタンのアルカイダ、タリバン、イラクのISIS、
シリアのヌスラ戦線、アフリカのボコハラムはワッハーブ派思想を根幹としている。

なぜ、このような危険な宗派が放置されているかというと、
サウジアラビアが世界最大の石油の埋蔵国、生産国であり、
また武器の大市場であるとともに、アメリカの同盟国だからだ。


北朝鮮など、所詮は実験段階の核しか持たない貧乏国家だと私は書いたが、
サウジは正真正銘のテロ支援国家、侵略国家であり、それも
石油資源を人質のように利用して、この国が着手する暴力の輸出を免罪させている。

危険度で言えば、サウジアラビアのほうが遥かに上だ。
彼らは暴力の実行が可能であり、現にそうしているのだから。


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2013年、一部のイスラム諸国が流血の衝突や犯罪行為の舞台となってきました。

シリア、イラク、パキスタン、レバノン、
アフガニスタンのような国における過激主義や暴力は頂点に達しています。

イスラム教の名の下に暴力に訴える人々や、サウジアラビアの情報機関の傘下にある、
タクフィーリー派と呼ばれる過激派組織は、あらゆる犯罪行為に手を染めています。


サウジアラビアで拡大しているワッハーブ派に根源を持つ過激主義的な一連の犯罪は、
イスラム教徒でない人とも折り合おうという、
イスラム教の平和を求める穏健な教えに根源を持つものではありません。

~中略~

もしアメリカイギリスの情報・政治的な支援と、
サウジアラビアやアメリカの同盟国の一部による資金面、軍事面での援助がなければ、
テロ組織アルカイダやその他の一部のテログループは結成されなかったでしょう。

現在シリアやイラクで活動を拡大し、
どのような犯罪行為も惜しまないワッハーブ派のテログループは、
現在、西側諸国やサウジアラビアから直接的な軍事・資金面での支援を受けています。

これらの政府は、こうしたテロ集団の全ての犯罪行為を黙認しているのです。
彼らは、民主主義や自由の要求の名の下に、イスラム教徒と名のつく
多くの暴力的な人物やタクフィーリー主義者を、世界各地からシリアに集めています。

http://japanese.irib.ir/programs/%E4%B8%96%E7%95
%8C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%8B%A2/item/42492-%E8%A5%B
F%E5%81%B4%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%8
2%8B%E9%81%8E%E6%BF%80%E6%B4%BE%E3%81%AE%E6%82%AA%E7%94%A8

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何度目かの繰り返しになるが、この支援を行ってきた国の一つがフランスなのである。

テヘラン(イランの都市)の新聞レサーラトは、
サウジアラビアに対するフランスの兵器輸出が中東における多くの危機を生み出した
と報じている。


11月17日(つまり今日)のレサーラトには次のような記事がある。

「フランスの大規模な兵器売却政策や、
 同国によるサウジアラビアなどの中東アラブ諸国との大量の兵器の取引は、
 この地域にテロの危機が広がる上で大きな役割を果たし、
 その影響が西側で見られる」


同紙はフランスがサウジアラビアのサウード政権を支援していることは、
テロ組織ISISへの支援に等しいと評価し、同国に輸出されたフランスの兵器が
ISISやシリアの反体制テロ組織ヌスラ戦線の手に渡っていることを訴えた。

さらに、
「フランスは、中東におけるテロリズムや暴力の
 最大の支援国の1つとなっており、
 サウジのオイルマネーによってさらに多くの人々を殺害するために、
 自国製の兵器を地域に輸出しようとしている」
ことも指摘している。


イギリス、フランス、アメリカ、そしてサウジアラビア。
この4カ国の中東政策が路線変更されない限り、仮にISISを殲滅したとしても、
第二、第三のISISが生まれ、終わりのないゲームを演じることになるだろう。

パリ同時多発テロ事件の背景2

2015-11-17 00:12:50 | 中東
大体、どこの国も似たり寄ったりの中身のないコメントをする中で、
シーア派(イスラム教の一派。イランの国教でもある)の権威の一人、
マカーレム・シーラーズィー師のコメントは、他とは少し違う意見を言っている。

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イスナー通信によりますと、マカーレム・シーラーズィー師は、
15日日曜、テヘラン南方のゴムで行われたイスラム法学の講義の初めに、

一部の国がISISなどのテロ組織を支援していなかったら、
 その根絶は困難なことではなかった
」と語りました。


また、西側、特にアメリカの偽善的な対テロ政策を非難し、
「アメリカはテロリストを訓練するために要員を送り、
 サウジアラビアなど一部の中東諸国はテロリストに資金や武器を提供している」

としました。

さらに、残念ながら、一部のイスラム諸国はISISを全面的に支援しているとし、
「イスラム共同体は目覚め、手を取り合い、
 タクフィール主義とテロリストを根絶すべきだ」
としました。


13日金曜夜から14日土曜未明にかけて発生したパリでの同時多発テロで、
およそ130人が死亡、300人以上が負傷しました。

このテロに対し、ISISが犯行声明を発表しています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/59800
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ここでシーラーズィー師が言及しているタクフィール主義とは何なのだろうか?

簡単に説明すると、ある人物をタクフィール(教えに背いた信者)と宣言し、殺害する
イスラム過激派の一派のことで、犠牲者は主にシーア派だ。イランはシーア派の国なので、
彼らにとって、タクフィール主義者は脅威以外の何者でもない。

このタクフィール主義者たちを「シリアの反体制派」とみなして
協力・支援していたのが他ならぬフランスだったのである。


アサド大統領が「フランスの市民が受けた苦しみはシリアの市民が5年前から受けてきた苦しみ」
と語っているのにも納得がいくのではないだろうか?

(ちなみにシリアはスンニ派が7割を占めるが、アサド自身はシーア派の生まれ)

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アサドはパリに向けたテロリストたちの攻撃は、他の地域で起きた事件と同様に、
最近ベイルート(※レバノンの首都)で起きた事件や、この5年間でシリアで起きた事件と
切り離すことは出来ないと強く主張した。テロリズムは世界的なものであるとアサドは付け足した。

アサドは
「西側国家によって、特にフランスによって行われた悪しき政策は目下、シリア一帯で進行中だ。
 テロリズムが急速に広がった原因はまさにそれであり、
 これは何人かのテロリスト集団の帰還に彼らが目を閉じていたことに触れるまでもない。」
と強く主張する。

(中略)

昨日、アサドは愛する人を失ったフランスの家族に対して哀悼の意を捧げた。アサドは
「過去5年間、テロに苦しんできた自分たちこそ最も彼らと近い存在であり、
 この状況を一番理解できるのだ」と主張した。

「我々は3年前から、将来ヨーロッパで起きるだろうことについて警告してきた。
 シリアを分断すべきではない、なぜならその結果は後々世界規模のものに発展するからと。
 不幸にも、ヨーロッパの政府は我々の言葉に全く関心を向けなかった。
 それどころか、このことを言うことで我らが彼らを脅していると言ったのである。」

「さらに彼らはシャルリーエブドの攻撃から何も学ばなかった。
 我々はテロリズムに反対するという声明を単に響かせるだけでは意味がない。
 彼らはテロリズムと戦わなくてはならないし、政策を正さなければならない。」

http://syriatimes.sy/index.php/presidential-activities/
20650-terrorist-organizations-acknowledge-no-borders-
underscored-h-e-president-al-assad

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アサドの言うように、タクフィール主義者の凶行がシリアだけでなく
自国にも跳ね返ってきている今、フランスは自国の軍事政策を変えるべきだ。
ところが、今回の事件を受けて、あろうことか現政権は更なる空爆を行うことを決定した。

「フランスはテロ組織「イスラム国(IS)」(ロシアでは禁止されている組織―インターファクス)
 に勝利するために、ISの全ての拠点を爆撃する。ジャン=イヴ・ル・ドリアン国防相が述べた。

 「この<疑似国家>の活動には、石油ターミナルからの利益が必要だ。
  そこに毎日貨物車が集まっている。イスラム過激派は武器を買い、それで行動を行っている。
  他にも色々な施設があり、我々はそれらに攻撃を行っていく」。
  ジュルナル・ドュ・ディマンシュのインタビューに対して語った。

 フランス空軍は今年9月シリアのIS拠点への空爆に踏み切った。未確認情報だが、
 パリのテロについて犯行声明を出しているISは、これを「シリアの復讐」だと述べている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151116/1171200.html#ixzz3rfSgLpkF」

このように全く反省していない。

皮肉なのは、これをサルコジ前大統領を初めとする保守派が台頭していた時期ではなく、
社会党という社会民主主義の政党が政権を握っている時代に発言されているということ。
サルコジだろうとオランドだろうとやってることは変わらないのかと愕然としてしまう。

とはいえ、このタクフィール主義者の正真正銘のボスはサウジアラビアだろう。
サウジは一貫してタクフィール主義者を支援しているし、彼らもまたサウジのために動く。

例えば彼らはパキスタンのペシャワルに、タリバーンやアルカイダのための神学校を作り、
そこから過激派を主に反サウジの中東国家に送り出し、同国の影響力を現地に広めようとしてきた。

個人的には、中東のテロリズムを食い止めるにはサウジアラビアを何とかしなければならないと思う。

北朝鮮がどんなに危険な国だと言われても、所詮は実験段階の核兵器を
所有しているだけの貧乏国家だが、サウジは正真正銘のテロ支援国家だ。
おまけにイエメンに軍事侵攻もしている。


サウード家という王族が支配する独裁国家でもある。
(サウード家のアラビアだからサウジアラビア。名前からして封建的)

実のところ、サウジアラビアとISIS(イスラム国)は深い関係にある。

サウジは以前からシリアのタクフィール主義者が結成するテロ組織を支援しているが、
この中の一つが「イラクとシャームのイスラム国」(つまりISIS)だったのだ。

9.11事件を起こしたアル・カイダが元々はソ連がアフガニスタンを侵攻していた時代に
アメリカによって支援されていた武装組織であったことは有名な話だが、
全く同じパターンで、ISISも元々は外国の支援を受けたタクフィール主義者のグループだった。

だからこそ、初めに紹介したシーラーズィー師もアサド大統領も
ISISではなく、タクフィール主義という言葉をもって非難の言葉を送っているのである。

米英仏等の西側国家は、タクフィール主義者のグループを利用してアサド政権を潰そうとしたが、
彼らが残酷な事件を起こすようになってくると、今度は彼らと敵対する道を選んだ。

この極めて身勝手な振る舞いについて、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、
昨年9月の国連総会の場において、次のように語っている。


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「我々は、昨年もここに集まり、あなた方はシリアのアサド政権は独裁政権であると主張した。
 当時、あなた方はシリアの反体制派を支援していた。

 あなた方は革命家を主張する反体制派を支援していたが、現在はどうしたことか。
 我々は再びここに集まっている。
 だが今度は、昨年まであなた方が支援していた革命家たちを弾圧するためである。

 ただし、今年、我々は、その革命家たちがテロリストであることを確信している。
 そのためあなた方は今、
 昨日まで革命家と呼ばれていたグループの多くが実際は活発なテログループであること、
 彼らが過激派から非常に過激的なグループに立場を変えたことを悟っているはずだ」

「ISISやアルカイダは、どこから武器を手に入れているのか?
 最近まで、自由を求める闘争家であった人々が、今はテロリストである」

http://japanese.irib.ir/component/k2/item/54169-%
E8%A5%BF%E5%81%B4%E3%81%8Cisis%E3%81%AE%E6%B6%88%E6%B
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ISISがムスリムにとって仇敵であるはずのイスラエルに対して全く攻撃しないのも、
元々同国を支持するアメリカやサウジの回し者だったことを思えば当然の反応である。

ISISが直接殺しているのはシリアやイラクの民衆および無関係の外国人であり、
アメリカやサウジ、イスラエルに飛んでテロを起こしたりはしない。

そういう意味では今回の事件はISISが直接、元スポンサーを狙った最初の事件でもある。
(本当にISISが関与していればの話だが)

フランスは過去の軍事政策を修正し、シリアに干渉するのを止めるべきだ。
(前の記事にも書いたがシリアは元々はフランスの植民地だった)

日本ばかり責められているが、大戦後、自分たちの植民地支配の歴史を認められず、
いつまで経っても旧宗主国として圧力をかけているのはフランスもまたしかりなのである。

パリ同時多発テロ事件の背景

2015-11-14 22:54:08 | 中東
いつか起きるなと危惧していた事件がついに発生してしまった。


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パリはすべての学校、大学、図書館、娯楽施設で作業が閉鎖された。
パリ市役所は市民らに対し、必要最低限、表には出ないよう呼びかけている。
観光エクスカーションは取りやめられ、地下鉄も数駅が閉鎖された。
これらはすべて11月13日金曜日夜に起きたテロ事件に関連し、市が安全対策として講じた措置。


テロによる犠牲者の数は仏マスコミの報道ではすでに150人を超えている。
パリのモレンス市長は死亡者の数が120人に達したことを明らかにした上で、
この数値は今後も増える恐れがあると語った。負傷者の数も200人を超えている。

死者が最も多かったのはバタクラン劇場でおよそ100人が死亡。
劇場内ではテロリストが人質を取って立てこもったため、
仏特務隊が突入をかけ、これによりテロリスト4人が殲滅された。

さらに3人がサッカーの独仏戦が行われていた「スタデ・デ・フランス」
スタジアム付近で死亡したが、このうち2人は自爆テロ犯だった。
特務隊員のなかにも犠牲がでており、バタクラン劇場での突入作戦の際に4人の警官が殉職している。

バタクラン劇場にいたテロリスト4人のうち3人が自爆犯だったことが判明した。
テロリストらは特務警察による突入作戦の開始を悟るとベルトに固定していた爆破物を作動させた。


オランド仏大統領は声明のなかでテロリストに対する作戦を安全に行うことを約束していた。

仏検察の声明によれば、テロはパリの6か所で同時に行われた。
現在、「テロ目的による殺人」および「犯罪的襲撃の組織を目的とした
犯罪グループの創設」事件として捜査が開始された。少なくとも7人のテロ犯が
事件に関与している疑いがあり、その捜索が行われている。

そのうちの数名はまだパリ市内に潜伏している危険性がある。


テロの犯行声明は「IS(イスラム国)」が出している。
伊TVの「スカイ24」の報道では、TV局が入手したISの声明には
「これはシリアに対する復讐だ。これは仏にとっての9・11だ」と書かれている。

オランド大統領によって仏全土に非常事態がしかれた。
秩序維持のため、パリには軍隊が発動され、1500人近くの兵士が警備にあたっている。
仏の国境は完全に封鎖。仏では同日13日のテロの発生よりも前に
1か月を期限とするビザなし通行が一時的に禁止されていた。

これは11月末にパリで開幕の国連の世界気候サミットに関連したテロ対策だった。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/incidents/20151114/1164156.html#ixzz3rT814sSK
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なぜ「いつか起きると思っていた」と書いたかと言うと、
フランスはアルジェリアやシリア(実は元フランス領)を初めとして歴史的に
アフリカや中東を植民地支配してきたのだが、その反省をするどころか、
近年では2011年にリビアをアルカイダと一緒になって空爆を仕掛け文字通り消滅させたり、
シリアに限って言えば、継続的に国内の反政府組織を軍事支援し、
今年の9月にはIS掃討を大義にアサド政権の許可を得ずに空爆していたからだ。

これだけ露骨な軍事干渉をしていれば恨まれるのは必然だろう。
事実、フランスの軍事介入がテロの動機だったと語る証言者もいる。

今のところ下手人だと自称しているISは今回の事件を「フランスにとっての9.11」だと語っているが、
フランス植民地支配の歴史を思えば、もっと事件の根は深いものであり、
仮にIS以外の人間の犯行だったとしても、それは特に驚くべきものではない。

この点に関して、イランラジオのミールターヘル解説員の記事が参考になると思う。


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ISISが今回のテロ攻撃の犯行を認めたことから、
なぜこのグループはフランスで再びテロ攻撃を行ったのかという疑問がわいてきます。

その答えは、ISISはフランスの対ISIS連合への参加、
とくにこのグループの拠点への空爆に報復し、このテロを行ったということです。

こうした中、フランスは現在中東、とくにシリアで
以前自分たちが行った行動の始末をしているということができるでしょう。

実際、イギリスやフランスといった国は、EUの重要な2つの加盟国として、
アメリカやそのアラブの同盟国とともに、ISISやその他のシリアのタクフィール主義の
グループの創設や強化に重要な役割を果たし、
現在、この行動の結果はヨーロッパに現れ、
テロリストのヨーロッパへの帰国により、ヨーロッパにテロが拡大しました。


ヨーロッパ、特にフランスは、シリアでのテログループの創設と
拡大における彼らの支援の結果がいつか自分たちに返ってくるとは思いもしませんでした。

現在、ISISの創設と強化の要因となったフランスといった国は、
いわゆる国際的な連帯の枠内で、ISISに対抗しようとしています。

ヨーロッパの政府は現在、ISISに対する消極的な対応の継続は
ヨーロッパの領土深くにその攻撃の裾野を拡大する原因になりうるという結論に達しています。

フランスと連帯を組むアメリカは現在、ISISに対する効果的な対策を妨げています。
これに関して、ロシアのプーチン大統領は、アメリカは
シリアのテログループの拠点に関する情報を一切ロシアに渡していないと強調しました。


実際、現在、西側は自らが中東でまいた
テロの種から生まれたものを、ヨーロッパで刈り取っているのです。


EUはフランスでの今回のテロ攻撃に対して、再度高レベルで会議を開き、
この破壊的な現象に対する新たな措置を講じることが予想されます。

しかしながら経験が示しているように、テロ攻撃のイニシアチブをとっているのは
テログループであり、彼らが攻撃を行う時間と方法を計画していることから、
この問題は、数多くの治安対策にもかかわらず、フランスをはじめとする
これらの国の治安機関や警察を消極的な対応に向かわせているのです。

http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/59767-%E3%8
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シリアのアサド大統領は今回のテロについて、強い憤りを示し、
「この残忍なテロによってフランス国民が受けた苦しみは
 我が国の民が5年間、じっと耐えてきたものだ」と述べた。


シリアの公式メディアは次のような文を載せている。


The source added that
  the Syrian people who have been suffering for five years
           from the crimes of the foreign-backed Takfiri terrorism,
  understand, more than any other,

  the ugliness of what has happened in Paris and
  the risks
posed by terrorism to the world security and peace.

当局は次のコメントを付け足した。
「シリアの人民は5年間、外国から支援を受けてきたタクフィール主義のテロによる
 犯罪に苦しんできた。我らは他の誰よりもパリで起きたことの酷さを、
 そして世界の安全と平和を脅かすテロの危険を理解している」
(http://sana.sy/en/?p=61248)

シリア当局はパリ事件の残酷さを同じテロの被害者として共感し、非難しているが、
この付け足された言葉の重みは凡百の平和主義者のそれを遥かに凌駕する。


今回のそれは完全な無差別テロであり、シリア当局の姿勢を見習い、激しく非難しながら、
かつ、事件の背景であるフランス植民地主義の歴史と現在の中東政策の検討を行うべきなのだろう。

小感想・佐藤優『「池田大作 大学講演」を読み解く』

2015-11-14 21:30:46 | 反共左翼
本屋で立ち読みした。いや、本当に立ち読みで良い本だと思う。
最近、よく池上彰氏とタッグを組んでいる佐藤優氏が書いた本。

私としてはゴールデンタイムにファミリーをターゲットに
右翼的言説を「中立的意見」と粉飾して偏見を助長させる池上彰のほうが性質が悪いと思うが、
この御仁も中々キレのある文章を書くなとちょっと感心した(嫌味です)

以下、出版元の潮出版社から。

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“知の巨人”が池田SGI会長の思想と言葉の力に迫る。

池田SGI会長によって世界諸大学・学術機関、
創価大学で行われた15の講演の解説集。

なぜ創価学会は世界宗教と成り得たのか――。

「池田氏にとって、真理は常に具体的だ。平和についても、抽象的な理論ではなく、
 いま、ここで平和を実現するために一人ひとりが自らが置かれた状況で
 何を行うかがたいせつなのである。

 そのことが、昨今のいわゆる集団的自衛権、安保関連法案をめぐる議論で問われた。
 創価学会と価値観を共有する公明党が頑張らなかったならば、
 日本が戦争に参加するハードルは著しく低くなってしまった。


 現実的に見た場合、公明党が平和を守ったのである。」(「あとがき」より)

http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=3973
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確か公明党って安保法案に賛成していたような・・・(汗)


【全文】公明党・山口代表が安全保障法制について会見



「公明党に失望」平和学の世界的権威ガルトゥング博士が批判
―公開書簡で池田大作氏に安保法制反対呼びかけ


安保法「反対署名」受け取り拒否 公明党の不思議

創価学会本部が安保法案を公式コメントで支持することの意味について

一応、フォロー(?)すると、創価学会の会員の中には安保法案に反対する人間もいる。
上から3番目の記事は反対書名を持参した会員を公明党が門前払いしたことが書かれている。


なお、会員のブログを読むと、以前から
佐藤氏はこの手の本を書いていたようで、バッチリ批判されている。

佐藤優が創価をヨイショする訳


こんな記事も書いていたらしい。


 「潮」08年11月号 佐藤優寄稿論文「信教の自由を侵害する政治家の『不見識』」より

新自由主義が蔓延する現在にあって、以上のような「再分配」の観点から見ても、
公明党は新自由主義政策の行きすぎに対するブレーキ役を果たしてきたと思う。

また、イラク戦争やアフガニスタンの問題でも同様の役割を果たしてきたと思う。
自民単独であれば、もっと違うシナリオになっていたと思う。」


小泉構造改革を支えてきたのは公明党だったような・・・(汗


要するに、公明党がいなければ、もっと非道くなっていたと言いたいらしい。
だが、公明党が協力しなければどうなっていたかなど、誰にもわからない。
それこそ神のみぞ知るというものだ。

そもそも、新自由主義自体は十分、やりすぎだったわけで、
まるで丁度良い塩梅に調整されたかのような佐藤氏の言い方には違和感がある。


少なくとも公明党の反対というものは自民党にとって困らない程度の反対だったと思う。
上記記事が書かれた2008年の時点では、民主党のほうが頑張っていた。
ねじれ国会でことごとく自民党を妨害していたのは民主党であり、その逆ではない。


以上、ざっと見たが、公明党が平和の党ならとっくの昔に自民党とケンカ別れしているはずで、
百歩譲っても平和主義を掲げているのは一部の会員であって、
創価学会が組織として平和運動を展開したわけでもない。


よくもまぁ、こんな提灯記事が書けるなと感心するが、
ある意味、こういう人物だからこそ池上彰と意気投合できるのだろう。

そういう意味では非常に貴重な本だったのかもしれない。
(今の論壇のレベルを知る上でと言う意味で)

いつのまにか聞かれなくなったアベノミクス

2015-11-14 17:02:58 | 日本政治
アベノミクス新3本の過去最高記録
=非正規雇用初の4割・内部留保354兆円・ワーキングプア1,140万人、
日本は世界最悪の非正規差別大国


この記事より前に書いた中国経済の記事だが、ちょっと思う所があって削除した。

理由としては、自分はあくまで経済に関しては素人なので、
専門用語を用いて攻撃されても反撃できる自信がないからというものがある。

一応、専門家の意見をいくつか読んだ上で書いたものだが、
彼らの間でも賛成派と反対派に分かれている以上、首を突っ込むのはやめようかと感じた次第。

ただ、GDPの成長率のみを根拠に中国経済の減速を語るのは、
内部の賃金向上や消費の増加を無視した極論だという意見自体は正しいかと思う。

特に労働条件の改善に取り組みが本格化している点を無視するわけにはいかないだろう。


ついでに言えば、中国経済低迷論は国際的に見れば少数派であり、
世界のほとんどの予測機関はアメリカに代わって中国が世界一の経済体になると分析している。

(私が外国メディアの活用をやたらと重視するのも、こういう点が大きい)

まぁ、分析が外れるか否かは時間が経たないとわからないものだが。


さて、それはさておいて、アベノミクスという言葉、以前は何かと騒がれて、
やれ景気が回復した、雇用が増えたと提灯記事ばかりが載っていたが、
ここに来て、この経済政策が成功したという話をあまり聞かなくなってしまった。

(以下、記事というよりはボヤキのような文章)

アベノミクスは大震災以上に庶民の暮らしを破壊している
=民主党政権下かつ東日本大震災下の2011年より勤労者世帯実収入も
 家計消費支出も減少させているアベノミクス


まぁ、実質賃金が下がる一方で非正規社員が4割に達した今、
「景気はよくなってるでー」とは言いづらいのではないだろうか?

「民主党政権下かつ東日本大震災下の2011年よりも
 アベノミクスは勤労者世帯の実収入も家計消費支出も落ち込んでいるのです。
 勤労者庶民にとってアベノミクスで「実感できる」のは家計の苦しさだけです。」
 (上記記事より)

という言葉は全くもってそのとおりとしか言いようがない。



4~6月期の実質GDP、年率1.6%減 消費と輸出が低迷



ただし、アベノミクス支持派が消えたわけではない。

“反アベノミクス”に反論。「雇用の質は改善していない」のウソ
なぜアベノミクスで庶民の給料は上がらなかったのか?
「株価急落=アベノミクス失敗」は正しいか 金融緩和の効果を素直に認めない残念な人達


彼らの言い分をまとめると、
①景気は良くなっている。実感できないだけだ
②アベノミクスは失業者を救っているのだ
③成功は「そのうち」実感できる
の3点に絞られるかと思う。


そこで①に関して言えば、下関市立大学教授である関野秀明氏が
政府の公的統計をもとに作成した資料を見てみると、

2012年には1.8%であった実質GDP成長率が2014年には0%になっている。
この期間、実質賃金は連続して低下し、非正規社員も全体の4割に達した。

ちなみに浜田氏は雇用者報酬は増えたと言っているのだが、
彼の場合、名目賃金を指しており、実質賃金ではない。

つまり、野党をはじめアベノミクス批判者は実質賃金の下降を問題にしているのに、
浜田氏は名目賃金の上昇に触れて反論を行っている。この点、かなり巧妙だなと感じる。

②に関して言えば、
立命館大学のm尾匡教授は有効求人倍率の上昇をもって、
アベノミクス成功を主張していたが、そもそも有効求人倍率とは
求人数をハローワークに登録済みの求職者数(有効求人者数)で割った率なので、

例えば、100件の求人があったとしても求職者数が200人から100人に減れば、
それだけで倍率は0.5から1.0に増える。まさに数字のマジック。

実際に、HWに登録した人間の就職者数を見ると2013年の1-3月で約18.5万であるのに対して、
その2年後の2015年1-3月では約16.5万に減っている。それも徐々に減っている。
この数はリーマン・ショック時の水準と同じ値である。

ゴチャゴチャしてわかりずらいが、要するに求人倍率が上がっているのに
実際に就職できた人間が減り続けている
という現象が起きている。

この原因として挙げられるのが労働条件であり、要するに働く意思はあるが、
賃金などの問題で応募を控える人間が増えたということではないだろうか?
ちなみに正社員のみの求人倍率は1.0を越えたことがない

アベノミクス支持者の中には非正規雇用が増えた事態をもって
「失業よりはマシ」と答えるのだが、面白いことにこの意見を唱えるものは
 正規に雇用されている人間だったりする
(松尾氏しかり浜田氏しかり)。


1千5百万円の借金まみれで「高学歴ワーキングプア」の仕事さえ失う若手研究者、
世界一高い高額費・奨学金という名のローン地獄・高学歴ワーキングプアという
貧困三重苦の将来不安抱える日本の大学院生


彼らの職場である大学では、上のような事態になっているのだが、
あまり気にならないらしい。ちなみに大学の非常勤講師は凄まじい薄給で、
それだけでは食っていけないので兼業している人間がかなり多い。

理系が有名だが、10年以上も非常勤講師を務めるワーキングプア研究者も少なくない。
そんなに非正規が問題ないのなら、あんたら辞職して非常勤講師になってよと言いたくもなる。


ちなみに不本意非正規雇用の割合が低いことを理由にアベノミクスを支持する人間もいるが、
不本意非正規雇用の割合は女性や高齢者も含めた全体的評価であり、年齢別・男女別に見ると、
一家の稼ぎ手となる25-34歳、35-44歳、45-54歳の非正規雇用の男性において、
不本意非正雇用の割合はいずれも半数に達し、最も高い。

逆に女性は割合が低く、その大半は既婚者である。
(http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2014/04/075.pdf)


完全失業者を基準にすると、
2014年で正規雇用を探している各月の平均男性失業者は25-34歳で24万に対して、
非正規を探している同年代の男性は5万、つまり6人いるうち5人は正規職を求めている。

この比率は年齢の上昇と共に、4対1(35-44歳)、3対1(45-55歳)と下降するが、
働き盛りの年代の男性が総じて正規雇用を求めていることはよくわかるはずだ。
(逆に女性は子育て等の影響か、比率が早い時期で逆転している)

http://www.stat.go.jp/info/today/097.htm#k7

こうしてみると、いかに「失業よりはマシだ!最も弱い立場の意見を考えろ!」論は
そいつ自身が全く現実を見ようとしていないことを如実に示していると思われる。

(ちなみに、アベノミクス支持者はアベノミクスが失業者を救ったと豪語するが、
いわゆる完全失業者と半失業者(現在求職中の就業者)の率は逆に増えている。)


安倍首相「雇用100万人増、2年連続賃上げ」→政府統計で
「正規雇用74万人減、実質賃金2年2カ月連続マイナス、
GDP2年連続マイナス(年率換算)、貧困激増させ戦後最大の大企業・富裕層だけ豊かさ享受」


総じて言える事だが、アベノミクス支持者は賃金が減っても「問題ない」、
ワーキングプアが増えても「問題ない」、実質GDPが減っても「問題ない」とし、
そのうち効果は実感できるから、その時を待てと言っている。

「そのうち」とは「どのうち」なのか、いつその日が来るのかを聞いてみたい。


今冬の「ボーナス過去最高」報道にみんな困惑している

そもそも、一般市民が景気向上を「実感」できないのは
彼らの実生活において恩恵が全くと言っていいほどないからである。
それどころか物価の上昇でかえって消費支出が減っている。

アベノミクス支持者は全体では「効果がある」と評価するが、
ほとんどの人間が感じない効果とは要するに富裕者にのみ恩恵のある効果である。

大企業や富裕者には実感できるが、一般人には実感できない状況。それを人は格差と呼ぶ。

結局、連中がやっているのは名目賃金のそれにせよ不本意非正規雇用率にせよ、
データや用語を巧妙に利用して実態を歪めているだけにすぎない。

だから、決してウソはついていないが、限りなく事実とかけ離れたものになってしまう。


この手の「そのうちわかる」論者を見ると、中国経済崩壊論者を彷彿させる。
 
彼らもまた15年近く前から中国経済の崩壊を予言しているが、
この間、中国経済が発達してもなお、「そのうち崩壊する」と言い続け、
今年に入り中国経済不調論が闊歩し始めると「な?ワイの言った通りやろ?」と語っている。

そりゃ中国だって永久に成長するわけじゃないんだからという話なのだが、
連中に言わせると「俺の分析は当たった(ニヤリ)」らしい。

こういう梅雨の時期に「そのうち雪が降るで(ニヤリ)」と語るような論法、どうなんだろう?
(12月に雪が降ると「ほら!俺の言ったとおりや!」と騒ぐ。そりゃ冬になれば降るだろう)


アベノミクス信者は今後も日本経済が本当に回復するまで
アベノミクス効果は実感できないだけと言い続けるのではないだろうか?

とすると、安倍が最後まで首相を務めるとすると2018年、
その結果がわかるのは2019~2020年とすると、アベノミクス信者が総括するのは
少なくとも後、4年は待たなくてはいけない。それまで目に見えて経済が悪化するとは
ちょっと考えられないので、結局、たいして効果がなかったとわかった後も、
「良い点もあった」と述べて当時、同政策を支持していた自己の責任を
 回避しようと努めるのではないだろうか?連中のこれまでの言動を見る限り確実にそうすると思う。

アメリカ、イランへの経済制裁を続行

2015-11-13 00:52:08 | 中東
やはりと言うべきか、オバマ政権はイランに対する制裁を維持することを決定した。

「オバマ米大統領は、対イラン制裁を1年間延長した。米ホワイトハウスが発表した。

 オバマ大統領は、次のように語ったー

 「我々とイランの関係はまだ正常な状態に戻っていない…そのため私は、イランに対する
  令第12170によって宣言されている国家非常事態を延長する必要があると判断した」

 イランと国際社会のしかるべき合意の履行に応じて、
 イランの核プログラムに関するものだけでなく、他の制裁も解除されなければならないはずだが、

 米国は、いわゆる「テロリズムの支援」やイランのミサイルプログラムを含む
 その他の一連の理由による対イラン制裁も維持し続けている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151111/1150143.html#ixzz3rIEGAYMz」

キューバもこうなるのではないかと心配でならない。
キューバもイランも北朝鮮も経済制裁の解除を条件として求めている。

それこそが彼らが交渉に応じる最大の理由なのだが、
どうもアメリカは真摯に向き合うつもりが無いらしい。カストロの言うとおりだ。

イランも国である以上、汚職もあるし腐敗もあるだろうが、
少なくとも私はオバマよりもハーメネイー氏のほうの言葉のほうが信用できる。

-----------------------------------------------------
ハーメネイー師は、1日日曜、イランの外務大臣、及び、各国に駐在する大使、代理大使と会談し、
西アジアにおけるアメリカの政策が、この重要な地域の情勢不安の元凶であるとし、

「アメリカを地域問題の解決の道と見なす一部の人々の見解に反し、
 この国は中東のさまざまな問題の大部分を占めている」と語りました。


また、
情勢不安の元凶は、アメリカによるシオニスト政権イスラエルやテロ組織への支援であり、
 このような政策は、イランの政策とは180度異なっている
」と述べました。

さらに、地域問題に関するアメリカとの協議を否定し、
「アメリカは、問題の解決ではなく、自分たちの利益を押し付けようとしている。
 彼らは自分たちの要求の60%から70%を協議で押し付け、残りの目的を非合法な形で実施し、
 強要しようとしている。それならば、協議に何の意味があるだろうか?
」と語りました。


ハーメネイー師は、イランの外交政策は、憲法にある体制の外交政策であるとし、
「イランの外交政策は、イスラムから採用され、革命の理想と目的に基づいている。
 外務省の関係者や大使・代理大使は、実際、これらの原則や理想のために奉仕する人々、
 戦士、代表である」と語りました。

ハーメネイー師は、地域問題におけるイランの論理は世界に支持された確かなものであるとし、
この問題のためのイランの解決法を説明する中で、
「イランはパレスチナ問題において、シオニストの偽りの強奪政権を否定し、
 この政権の日々の犯罪や悲劇を強く非難すると共に、
 すべてのパレスチナ人が参加する選挙の実施を提案している。
 それは現代の世界のバランスにも完全に合致したものだ」と語りました。

また、シリア問題についても、他国が共に集まり、
一つの統治体制とそのトップについて決定することには意味がないと強調し、
「これは危険な陰謀であり、世界のいかなる政府も、
 それが自分に対して実施されることを受け入れない」としました。

ハーメネイー師は、
シリア問題の解決法は選挙である。そのためには、
 まず、反体制派への資金や武器の援助を停止して戦争と情勢不安を終結させ、
 シリアの人々が安全かつ平穏な環境の中で、誰でも望む人物を選出できるようにすべきだ

と述べました。

http://japanese.irib.ir/news/leader/item/59417
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-----------------------------------------------------

最近のニュースを見て思うのだが、香港にせよ台湾にせよウクライナにせよ、
シリアにせよ何にせよ、彼らは選挙というものを重視しているのに、
なぜか左翼を含めて大多数の人間は彼らを非民主的な組織として語ろうとしている。

アサド政権がどれだけ強権的であろうと、
同政権は選挙によって法的に合理的に支えられている。

(なお、シリア情勢については中東専門家の青山弘之氏の評論を推したい。
 例えば、ロシアの空爆については以下のようなものがある。
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/aoyamahiroyuki/20151104-00051092/)

それに対して、反体制派は東ウクライナの「親ロシア派」と異なり、
アル・カイダを含む正真正銘の武装組織、テロリストが多くを占める。

中国や台湾で講堂を占拠し、建物を破壊し、暴力をふるっても「革命」と評され、
選挙によって正当性を得た政権は否定的に論じられる。理不尽極まりない。

問題は、それを右翼ではなく左翼が言っているということ。
選挙を否定してデモや暴動、占拠に依存していては真の改革は望めないだろう。

民主党・分裂の動き

2015-11-13 00:17:43 | 日本政治
気が早い右翼は「解党だ」とはしゃいでいるが、まだ党内右派が造反を企んでいる段階。


「民主党・維新の党:岡田氏、新党の動きに「軽々に」不快感

 毎日新聞 2015年11月12日 20時10分(最終更新 11月12日 21時59分)

 民主党の細野豪志政調会長と前原誠司元代表、維新の党の江田憲司前代表が11日夜、
 東京都内のホテルで会談し、自民党に対抗するため、年内にも両党が解党した上で
 新党を作るべきだとの認識で一致した。

 これに対し、民主党の岡田克也代表は12日の記者会見で
 「今、何か決めているわけではない」と明言を避けつつも、細野氏に不快感を示した。
 今後、「解党」の是非をめぐる党内の路線対立が深まる可能性がある。」
(http://mainichi.jp/select/news/20151113k0000m010059000c.html)

与党になる直前の民主党は中道左派が党を率いていて、
山口二郎氏のような左派系のブレーンがいたこともあって、
実際には左右混合型の政党なのに、左派政党であるかのように受け止められていた。
(今でも若干、そのように評価されているような気がするが)

与党になった民主党は早速、党内の左派勢力の駆逐にかかり、
鳩山、菅が下ろされた後、野田を初めとする党内右派が権勢をふるった。

この時期に尖閣諸島が国有化され、消費税増税が決定された。


そして今、党内右派が解党を目論んでいるわけだ。実際には解党ではなく、分裂になるだろう。
民主党は民主党のまま、前原達は維新の党に合流するか、新党を結成すると思われる。


忘れてはならないのは、民主党には極右政治家も多く在籍しているということ。
そのことをスルーして有田芳生氏は必死にヘイト・スピーチに反対していたということ。
(※有田氏は民主党の議員。元々彼は北朝鮮のバッシングに執心している人間だった)

薬害エイズの被害者として自分を売った川田龍平が民主党、みんなの党、
そして現在、維新の党へと籍を移し、極右政党の一員として頑張っているということ。


民主党を見ていると、「右と左の境を越えて」とか「中道」とか
「リベラル」とかいう言葉が如何に胡散臭いかがよくわかる。


実際には左派の右傾化現象に過ぎない。

あるいは左翼が妥協したり転向したりして右翼とじゃれあっていると言ったところか。

民主党ばかり非難しているが、私としては日本政治を非難するくせに
新党の結成をしようとせずにデモばっかりやっている主流左翼のほうが問題があると思う。

一昔前、みどりの党とか緑の風といった塵芥のような新党が結成され、一瞬で消えていったが、
その気になれば、新党などいつでも結成できるし、地方選挙から活動を開始しても良いのだ。
(訂正。みどりの党→緑の党。緑の風→みどりの風が正しい。本当に紛らわしい)


新左翼の系統を辿る連中に全般的に言えることだが、政党政治を何だと思っているのだろう?
現実として、左派政党の議席が増えないと簡単に強行採決されてしまう以上、
既存の政党(共産・社民)か新規の左派政党の議席を増やさなければならないのに。



ミャンマー総選挙、視点を変えると?

2015-11-11 00:18:17 | 国際政治
思えば物心が着いたころからテレビでは、アウンサン・スーチー女史は
平和と民主主義のために軍事政権に抗っている偉い人なのだという報道がされていた。

まぁ、その報道は半分は事実なのだろうが、
次の記事を読んでからはスーチー氏に対するイメージが少しずつ変わってきた。

本文は大変長いので、一部抜粋するが、出来れば全文を閲覧してほしい。

------------------------------------------------------
ミャンマーのイスラム教徒の惨状


ミャンマーのロヒンギャ族のイスラム教徒に対する人種差別と殺害に関する最新の報告で、
国境なき医師団は、この国のイスラム教徒に対する攻撃は体系化され、拡大しているとしています。

ミャンマー政府は、イスラム教徒に対する人種差別や暴力行為を隠蔽しようとしています。

(中略)

ミャンマーのイスラム教徒はロヒンギャ族と呼ばれており、ラカイン州北部に集中して住んでいます。
ミャンマー政府は、この少数派の部族を正式に認めておらず、
彼らを非合法な移民であると見なしていますが、一方で国連は、
このロヒンギャ族が最大の少数派の一つであり、これまでに例を見ない抑圧を受けているとしています。

(中略)

ミャンマーのイスラム教徒に対する攻撃の映像は、
21世紀になっても彼らが想像し難い苦しみを味わっている惨状を十分に物語っています。

ミャンマーの5000万人の仏教徒は、300万人の少数派イスラム教徒を消滅させようと
この国の軍事政権と歩調を合わせています。

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャ族は、
憂うべき状態に巻き込まれており、彼らはミャンマーから追い出されています。

しかし、どの近隣諸国も彼らを歓迎していません。バングラデシュ政府によると、
現在30万人以上のロヒンギャ族が同国南東部沿岸の難民キャンプで生活しているということです。

この難民キャンプの状況や、イスラム教徒の難民が直面している問題は、
ミャンマーに住む彼らの友人や親戚が直面している状況と、それほど変わりありません。

難民キャンプに住む大部分の難民は女性や子供、高齢者や病人、身体障害者です。
これらの難民キャンプでは四六時中、生き残り、食物を手に入れるための争いが絶えません。

バングラデシュの人々によると、この難民キャンプは社会的に
最下層の人々が生活する場所であり、敬意を払うに値しないとされています。

この難民キャンプには国際的な支援が届かず、難民は耐えがたい重労働の対価として、
1回分の粗末な食事代にしかならない僅かな賃金を与えられるだけです。


これらの難民の惨状は、国境を越えて他国にも広がっており、彼らにとって安全な場所は、
ミャンマーにも、タイにも、バングラデシュにも存在せず、その他の国でも見つかりません。

ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャ族は、ミャンマー政府と過激派仏教徒からは
外国人と見なされており、ミャンマー政府から市民権を与えられていません。


また、ミャンマー政府は彼らに対し、移動の許可を与えておらず、
もしある村から別の村に行こうとする場合、税金として一定の額を納めなければなりません。

もしミャンマーのイスラム教徒が商店を経営しようとする場合、仏教徒の共同経営者が必要になります。
仏教徒は、この共同経営において何の資本や資金も提供せずに利益を得ることが出来ます。

このように、ミャンマーではイスラム教徒に対して最悪の人種差別が行われているのです。


ミャンマーのある優れた経営者は、ミャンマーにおけるイスラム教徒の虐殺と
彼らの基本的人権の侵害に関するニューヨークタイムズの記者によるインタビューの中で、
「イスラム教徒に人権は適応されない」と語っています。

(中略)

ミャンマーにおいて、イスラム教徒ではなく
キリスト教徒が人種差別や民族浄化の被害に
あっていたなら、西側政府は沈黙していないでしょう。



また、ミャンマーで西側政府の利益が脅かされた場合、
彼らはこのような虐殺を口実に干渉的な措置や制裁を実施せずにいたでしょうか?

また、表面上人権擁護を装う西側政府は、
ミャンマーのイスラム教徒の虐殺に沈黙を守る対応を行なっていたでしょうか?

大変残念なことは、ミャンマーの自由や解放のシンボルとして
世界的に有名なアウンサン・スーチー氏も、
ロヒンギャ族に対する明らかな人権侵害に対して沈黙を守り

「どちら側の損害や利益に対しても、立場を示すことは出来ない」
と表明したことです。


西側の自由主義において、人権は単に政治目的の追求のための道具となってしまっています。


つまり、西側政府はある時期にはミャンマー政府への圧力行使のために
この手段を利用しスーチー氏を自由化要求のシンボルとして宣伝しています。


また彼女も、自身の政治的な立場を守るためには、
ただ宗教的な観点から、多くの同国人の殺害や虐殺を無視してもよいと見なしているのです。


http://japanese.irib.ir/programs/%E4%B8%96%E7%9
5%8C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%8B%A2/item/39757-%E3%8
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上の記事はイランのメディアによるミャンマー政府のムスリム弾圧を告発した文だが、
ここにおいて、スーチー氏は虚像を剥がされ、純粋な政治家として描かれている。

(一応、フォローするとスーチー氏が政治家である限り、
 世論や社会情勢をある程度考慮した振る舞いをする必要がある。
 その点では、ムスリム弾圧の容認のみを理由に同氏だけを非難するわけにもいかない。
 問題はムスリムへの人権侵害が民主化を希望する国民の間でさえも共有されている現実である)




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残念なことに、ミャンマー自由化のシンボルとして知られるアウンサン・スーチー氏も、
ロヒンギャ族の人権侵害に関しては完全に沈黙し、
「いずれの側の利益のためにも、不利益のためにも、立場をとることはできない」と語りました。

スーチー氏は、西側ではミャンマーの
反体制闘争のシンボルとみなされておりノーベル平和賞も受賞しています。


間違いなく、もし、スーチー氏がミャンマーのイスラム教徒の
基本的人権の侵害という事実を一人の人間として認めていたら、
世界の人々の注目をミャンマーのイスラム教徒の危機的状況に対して向けさせられたはずです。


おそらく、そのような場合、西側政府は世論の圧力を受け、
ミャンマーとの国交正常化を急務としなかったと思われます。

アメリカ主導のミャンマーに対する西側政府の戦略は、
中国との競争の影響のもとで、ミャンマーを東アジアの西側の同盟国に引き込むことです。


彼らは少数派の権利の支持や博愛主義を
単に目的追求の道具としている
ことを、多くの事柄の中で示してきました。

この問題が彼らの利益に沿っていれば
人類史上最も人道的な政府になりますが、
もし抑圧された多くの人々への支援が彼らの利益に反すれば、
罪のない多くの人々に対する人種差別を気兼ねなく無視するのです。


このことは、西側がチベット仏教の指導者ダライ・ラマを支援する中で明らかです。

西側は中国政府によるチベット仏教の信者に対する
権利侵害を理由として、ダライ・ラマを支援しています。
しかし、過激派仏教徒によるミャンマーのイスラム教徒の虐殺には目をつぶっています。

世界では仏教の教えは穏健・中庸の教えだとされています。残念ながら、
ダライ・ラマも仏教徒に深遠な影響を与える存在でありながら、これまで
ミャンマーのイスラム教徒の虐殺や難民化について真剣な反応も影響力の行使も見せていません。

ダライ・ラマも実際、
西側の道具に変わり果てており、西側の政策や利益に沿って、
多くの人道的悲劇や少数派の権利侵害に対して見解を表明しています。


ミャンマーのイスラム教徒の虐殺と難民化、差別に対する真剣な批判は
西側政府の人道支援政策の範疇にはなく、
ダライ・ラマもこの問題に立場を示す必要性を感じていないのです。


http://japanese.irib.ir/programs/%E4%B8
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----------------------------------------------

大体の構図として軍事政権と民主化勢力が戦っているのは事実だが、
その説明のされ方、伝え方は極めて政治的だということである。



こうしてみると、ミャンマーの民主化勢力の圧勝は喜ぶべきことではあるが、
称えるべきことであるかどうかはちょっと保留しなくてはいけないような気もしてくる。


ここで9日のグローバル・タイムズ紙の記事をもとに、
今回の選挙を慎重に受け止めるスプートニク紙のオピニオン記事を読んでみよう。



-----------------------------------------------------------
ミャンマーが完全に米国に向き直ることは、戦略的空間およびミャンマーが
中国の友好的政策から得ることのできるリソースを破壊しかねない愚かな選択。


9日、グローバル・タイムズ紙は、ノーベル平和賞受賞者で
西側が「民主主義のニコン」と仰ぐアウン・サン・スー・チー女史率いる野党、
NLD=国民民主連盟が25年ぶりに自由に行われた全国選挙で勝利を収めたあと、
こうした記事を掲載した。

野党NLD=国民民主連盟の勝利は誰にとっても、中国にとっても意表をついた結果ではなかった。

中国ではミャンマーで勝利したのが親米的政治勢力であり、
選挙後、米国、西側、日本、豪州との連合関係の強化路線が強化される
ことは理解されている。

だが中国がミャンマーで急進的な変化が起こるとは思っていないことは明白だ。
それはテイン・セイン大統領がポストにとどまっていることだけが理由ではない。
アウン・サン・スー・チー女史の子どもたちは外国市民であるため、
アウン・サン・スー・チー女史には大統領になるチャンスがないからだ。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151110/1149069.html#ixzz3r6PDhYBm

-----------------------------------------------------------

ここで政敵にあたるであろう与党のテイン・セイン大統領の経歴を見てみる。


「貧しい家庭の出身であり、18歳で軍士官学校に入った。
 他の軍高官とは違い、利権や汚職などのスキャンダルに見舞われず、
 国民にはクリーンなイメージを持たれているとされる。

 また野心がなく、上官の命令に逆らうことはない官吏タイプとも評されている。
 このためタン・シュエの信頼が厚く、「忠実な部下」「典型的なイエスマン」とも評される。
 他、タン・シュエの後に大統領として指名されたのは、
 タン・シュエ自身が引退後に、「自らの安全」も考慮した結果ともされる。

 軍出身ではあるが基盤がなく、このため大統領就任前には
 タン・シュエの意向に沿った政権運営がなされるとの指摘もあった。

 しかし、就任後はアウンサンスーチーの政治活動を容認するなど、
 民主化に一定の寄与をしていることも事実であり、タン・シュエが保守派と言われるのに対し、
 テイン・セインは改革派と称されることもある。

 アウンサンスーチー以外の政治犯も釈放しており、
 メディアの自由化の促進、国民の人権を脅かす法律の廃止なども実施している。


 特にミャンマー最大の反政府武装組織カレン民族同盟と停戦合意にこぎつけるなど、
 様々な改革を実行している。これらの改革は諸外国にも歓迎されており、
 これまで敵対的だった西側諸国との関係が改善している」
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%B3)

ソ連のゴルバチョフを連想する人物である。セイン氏が大統領に就任したのは2011年、
これ以降はタン・シュエも口出しをせず、国内の改革に着手できたものと思われる。

そもそも今回の自由選挙自体が25年ぶりに認められたもので、少なくとも
現政権には自主的に国内を改善する意志が多少なりともあるということは言える。

無論、こういう改革派ですらムスリムへの人権弾圧は気楽にしてしまうわけで、
この点は徹底的に非難すべきだと思われるが、他方でムスリム弾圧に関しては
スーチー氏も大差ない態度(少なくとも無視・軽視)であり、例えミャンマーが
「民主化」されても、この問題は解決されない
であろうことは容易に想像できる。


私が言いたいのは、テレビは無論、左翼の間ですら
スーチー=絶対善、現政権=絶対悪という単純な理解をしてはいないか?

ということだ。


その二元論がカラー革命やアラブの春が起きたときのように、
民主化と言う名の再植民地化(NATOと現地の民族主義者が結託し、新自由主義を受け入れる)や
民主化勢力とNATO諸国のつながりを無視し、支持するならば、それは大いに警戒すべきだ。


少なくとも私たちはアウンサン・スーチー氏をも政治家として冷静に接しなければならないのであり、
間違っても英雄や平和活動家として、羨望の眼差しで見てはならないのである。

なぜ、無人戦闘機は誤爆をするのか

2015-11-08 23:20:10 | 国際政治
若者を戦場に送るのか!という台詞は今でこそ有効だが、
無人の戦闘機で戦争をする時代が来た時、私たちはどうすれば良いのだろうか。

アメリカはパキスタンを始め、無人戦闘機を飛ばし、
現地の「テロリスト」を殺しまわっているが、実のところ、
この無人機は誤爆もよくしており、民間の施設や住宅地を攻撃している。

だいぶ前だがパキスタンの被害を受けた一般市民が国連に訴えたこともあった。

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米英軍などの無人飛行機(ドローン)によるイスラム過激派への「暗殺攻撃」で2004年以降、
パキスタン、アフガニスタン、イエメンの3カ国で少なくとも民間人479人が巻き添えになって
死亡していることが国連人権理事会の依頼を受けた専門家チームの調査でわかった。

パキスタンでは死者は全体で2200人にのぼり、民間人は少なくとも400人にのぼっていた。
さらに200人が非戦闘員の可能性があるという。

今月11日にはノーベル平和賞の有力候補だったパキスタン人少女、
マララ・ユスフザイさん(16)が米ホワイトハウスでオバマ大統領と面会した際、
「ドローン攻撃がテロをあおっていることが心配だ。無実の犠牲者が
 こうした攻撃で殺害され、パキスタン国民の憤りを招いている」と訴えていた。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20131020-00029056/
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性能が悪いからと言えばそれまでだが、なぜこうも無人戦闘機は誤爆をするのだろう?
その問いに対して、亡命アメリカ人であるエドワード・スノーデン氏が鮮やかな解を見せてくれた。



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スウェーデン紙ダーゲンス・ニュヘテルの記者・写真家がモスクワを訪れ、
元米特務機関職員エドワード・スノーデン氏と面会した。


スノーデン氏は米国が外国における作戦で無人機を使用していることに言及した。

10月、インターセプト誌は、
米国の無人機による攻撃で死亡した人の9割がターゲット外の市民である
と報じた。

これが米国の公式発表では「殲滅された敵戦闘員」に変じてしまうという。
無人機は具体的個人でなく、携帯電話をもとにターゲッティングする。
その電話を今テロリスト本人が携帯しているか、その母親が携帯しているかなど区別しない。
無人機による攻撃が失敗に終わり、時には披露宴までが攻撃されてしまうのは、こうした理由による」
とスノーデン氏。

「米国が利用している情報は危険で、信憑性が薄いものだ」とスノーデン氏。

スノーデン氏によれば、
米国とその同盟国の行う空爆は問題解決に結びつかず、むしろ新たな問題を作りだす。
米国がシリアやイラクを空爆し出す以前には、「イスラム国(IS)」などなかった」。
無人機は「テロリストを殺害するよりも、むしろテロリストを生み出している」とスノーデン氏。

「米国が中東で直面している最大の問題は、米国自身が創り出したものなのだ」とスノーデン氏。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/life/20151107/1136056.html#ixzz3quRmLV9r
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素人の考えでも足のつく携帯電話をいつまでもテロリストが持っているとは思えない。
あるいは名義人は別の人間で、それを借りる形で使用しているのかもしれない。

いずれにせよ、かなり適当な基準で爆弾を落としていることは何となくわかる。
この無人機はブッシュ政権よりもオバマ政権のほうが好んで使われている。


平和賞を受賞したオバマ大統領だが、振り返れば
オバマ政権のほうが軍事政策はより過激で、非人道的なのかもしれない。

シャルリエブド紙のルソフォビア(ロシア嫌悪)

2015-11-07 00:21:14 | 国際政治
今年のはじめにあったシャルリエブド紙へのテロ事件。テロ事件は非難すべきものだが、
継続してムスリム嫌悪を煽っていたあの醜悪な雑誌をあたかも自由の殉教者のようにみなすこと、
つまり、「私はシャルリー」と書かれたカードを持ち佇む行為には以前から辟易していた。

そのシャルリエブド紙が今度は、ロシア旅客機事故をネタにまた同じことを繰り返している。


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フランスの諷刺誌シャルリ・エブドが、ロシアのA321型機がシナイ半島に墜落し、
224人が死亡した事故を諷刺した絵を発表した。リア・ノーヴォスチが伝えた。

一枚目の絵には事故機の乗客と同機の残骸がテロリストの頭上に落ちてくる様子が描かれ、
「ロシア軍、空爆を強化」と添え書きされている。


二枚目の絵には事故機の残骸を背景に頭蓋骨が描かれている。
その吹き出しには、「ロシアの格安航空会社は危険がいっぱい」とある。

ロシアのRen-TVはこれを取り上げたなかで、
「これは犠牲者に対する不敬であり冒涜である」と語る
ロシア議会上院国際問題委員会委員イーゴリ・モロゾフ氏のコメントを紹介している。


「これはこの事故の犠牲者に対する不敬であり冒涜である、と考える。
 どのような形態の、何を専門とするいかなる雑誌、またいかなるメディアといえども、
 このようなことをしてはならない。シナイで起こった事故をあざ笑うことは許容できない。
 シャルリ・エブドのオリジナリティ志向にはショックを受ける。
 今年1月、同誌で起こった悲劇を思い出さずにはいられない。
 記者たち自らが暴力行為を誘発したのではないか、という感じがする

モロゾフ議員は以上のように述べた。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151106/1128020.html#ixzz3qiu0phkk

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1枚目の風刺については、特にきつく言うつもりはない。
シャルリエブド紙がフランスのシリアへの軍事干渉を風刺している限りならば。

もっとも、シリアの要請を受けて出動したロシア軍を非難する一方で、
アサド政権の崩壊を目論み、反体制派に武器を与えたり軍事教練を施したり、
空爆をしかける欧米の軍にはこれといって非難されない全体の現状を思えば、
単に社会に蔓延するルソフォビア(ロシア嫌悪症)を煽っているだけにも見える。


2枚目の絵に関しては、呆れるほかない。
仮にロシアの空爆に反感を抱いたとしても、ロシアの民間会社を非難するのは間違いだ。
事件とは無関係の航空会社にまで「危険がいっぱい」とレッテルを貼る権利はシャルリエブドにはない。

今回の事件は、セウォル号のような事件とは違って、搭乗員が乗客を置き去りにしていない。
それどころか、現時点でも原因がわからず調査中なのである。

たった一件の事故をもって「ロシアの飛行機は事故を起こしてばかりだ」
というメッセージを送るシャルリエブドは風刺というより、
セウォル号の事故を韓国をあざ笑うネタとして利用するネトウヨのまとめサイトと
同じ単なるゼノフォビア(外国人嫌悪)ではないだろうか?


つまり、嫌韓流ならぬ嫌露流とでも言うべき侮蔑行為を
この週刊誌は行っているように見えるし、そのようなヘイト行為は
モロゾフ議員が言うように、徒に両者の偏見や暴力を助長させるだけに終わるだろう。


・追記

本文にも書いたが、ヨーロッパには歴史的に露西亜に対する偏見がある。
これはそれこそナポレオンの時代からあるもので、ルソフォビアと呼ばれている。


ナチス・ドイツやイタリア・ファシスト党が好き放題に暴れ回ることが出来たのも
ソ連に対する当て馬として米英仏が利用したことが原因として挙げられる。


第二次世界大戦時の束の間の雪解けを経て、両者は互いに鉄のカーテンを下ろした。
「鉄のカーテン」とは共産社会の閉鎖性をチャーチルが比ゆしたものだが、
 イギリスもまたロシアに向けて再び鉄よりも重く堅い壁を築いていた。
「雪解け」という表現はあくまで西ヨーロッパ中心の言葉だと私は思う。
 実際にはロシアの雪は解ける一方で、西洋の雪が止むことはなかった。
 その雪は未だにシリアやウクライナで降り続けていて、解ける気配が一向にない。

なるほど、あの悲劇的事件を経て、シャルリエブドはヒーローになった。
しかし、それは非西洋世界においては悪漢以外の何者でもなかろう。