時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

シリア内戦、一歩停戦に近づく

2015-11-03 00:05:20 | 中東

先月(10月)29日、ウィーンにロシア・アメリカ・サウジアラビア・トルコの外相らが集まり、
シリア正常化について話し合った。翌日、追加でエジプト・イラン・イラク・レバノンが加わり、
その結果、数週間以内に停戦が達成されることが目標にされた。これで一歩停戦に近づいた。


シリア情勢については、朝鮮新報の解説記事が大いに参考になる。


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〈ニュースの窓〉
シリアを巡るパワーゲームに激変 浮かび上がる反テロ戦争の真実


数百万人に及ぶシリア難民の悲劇、泥沼化する内戦(奇怪な反テロ戦争の構図)のさなか、
崩壊寸前と思われたアサド政権が起死回生した。その最大の契機はロシア空軍の空爆にあった。


露、ISISの拠点空爆

シリア内戦の実態は複雑だが、アサド政権打倒を目指す武装勢力は
米、イスラエル、サウジ、トルコ、カタールなどの武器財政支援を受けている


そこへ「参入」してきたのが悪名高いイスラム国(ISIS)。

すでにイラク、シリアの広大な地域を影響下に置き
益々勢いを増しているISISはアサド政権を苦境に追いやっていた。

ところが、ここで大事件が起きた。
プーチン大統領率いるロシアがISISの拠点に照準を定めて
精密誘導弾などによる集中的空爆で大打撃を与えたのである。

「ISIS撲滅」を叫んできた米国が傀儡国を動員して
挙げた1年の成果以上のものをわずか4日で達成したのである。


とくに重要な戦果は、ロシア空軍、アサド政権の政府軍、イラン系のシーア派の軍隊が合同して
シリア第二の都市アレッポを攻略、ISIS、アルカイダらテロリストから奪還しつつあることだ。

ここを奪還すれば、シリア西部の人口密集地を統治できる。形勢は完全に逆転した。


この戦闘で国際社会の前に一つの真実がはっきりと浮かび上がった。

それは、米、英、イスラエル、サウジ、カタール、トルコなどが
ISISを相手に戦ってきたのではなく、
逆に軍事訓練、武器供与、財政支援など
全面的にバックアップしてきた
という事実だ。


米国はロシアを表立って批判できない。なぜなら、ISISの拠点を破壊することは
米国への「支援」になりこそすれ、「妨害」にはならないからだ。

そのため、ロシア軍は自分たちが支援している部隊を攻撃しているなど
非難することで牽制しようとしているが、詭弁に過ぎないことは誰の目にも明らか。

中東における地政学的激変

もう一つくっきりと浮かび上がったのは、

「ロシア・イラン・イラク・シリア」vs「米・サウジ・カタール・トルコ・ISIS」
という対立の構図である。


というのは、もはやイランもイラクも、子飼いのテロ組織を支援することで
シリアを破綻させようとしている敵対国連合の思惑と手法を完全に見透かしており、
ロシアとの協力関係をさらに強化することで
米国の悪魔的な中東政策・戦略を突き崩すために動き始めたからだ。

ネオコンに乗っ取られたブッシュ政権が、
ほとんど実体のない「国際テロ組織」アルカイダと関係があり、
国内で化学兵器を製造しているという疑惑をでっち上げ、それを口実に一方的に戦争をしかけて
フセイン政権を崩壊させた手口を踏襲するオバマ政権の中東政策は破綻を迎えた。

本当の対テロ戦争で決定的戦果を挙げたアサド大統領は早速、モスクワに飛び
プーチン大統領に感謝の意を述べ、今後も緊密な協力関係を維持、発展させることで合意した。

また、イラクのアバディ首相はいまだにイラクに居座り続ける米軍司令官の反対を押し切って
イラク領土内のISISの拠点も空爆してくれるよう要請しようとしている



こうなってくると、財政的にも、軍事戦略的にも
行き詰った駐イラク米軍も追い出される可能性も出てきた。


反米イスラム圏とロシアが緊密に連携することで、米国の対中東覇権戦略は音を立てて崩れ始めた。
ロシアの軍事行動は国際法的にも完全に合法である。(益)
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こうもあっさり流れが変わると、それまで半信半疑でいた
「アメリカとISISは同盟関係にある」という言説も俄然説得力を持ち出してきた気がする。


これまでイランを初めとして、攻撃するフリをして実は物資を渡しているとか、
ISISのアジトがない場所を攻撃しているといった話がよくされていた。


トルコがISIS打倒と称してクルド人の住居地区を爆撃した時は
さすがにISISを理由にしたジェノサイドだろうと思っていたが、
まぁ大半の話は、さすがに陰謀論だろうと思っていた。


この点については、モスクワ国立国際関係大学国際研究所の主任研究員、
アンドレイ・イワノフ氏が言及しているので、以下に一部を抜粋する。


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ロシアのメディア、又はロシアの一部専門家に人気の説は、

IS(イスラム国)は中東に『管理可能なカオス』を創り、その一環として
バシャール・アサドを失墜させるために、米国の支援によって創設されたというものがある。

ISは米国自身によって、またはその中東における
同盟国・サウジアラビア、カタール、トルコによって資金の大半を得ている
、との説である。


この説は本当に説得力がある。

第一に、西側資本主義と東側共産主義、二つの陣営が敵対し合ったあの冷戦時代、米ソは
世界各地に活発に共産主義の、または資本主義の闘士たちを創り出し、かれらに資金を与えていた。

ソ連崩壊間際、ソ連最初にして最後の大統領、ミハイル・ゴルバチョフと
その側近たるペレストロイカ推進派らは、左派および革命運動体への支援を中止した。
西側と社会主義陣営がもはや対立するものではなくなるということを心から信じていたからだ。

しかしソ連崩壊後すぐに、米国が依然としてロシアを敵視し、
米国の影響力拡大および強化に役立つ勢力への支援を停止する構えにないことが明らかになる。

一方のロシアは、軽率な経済改革の果てに深刻な財政危機に陥り、
もはや同盟国を支援できるような状態ではなくなっていた。

その間も米国は活発に、たとえばコソヴォの分離主義者を支援し、
ユーゴスラヴィアを分裂させ、ムスリム同胞団を支援し、
エジプトに大迷惑をかけ他にも色々な悪事を働いた。


ISを支援しているのは米国およびその同盟国だ、とする説を信ずべきものとする第二の理由は、
この1年米国を筆頭とする有志連合が行ってきたIS対策に見られる奇妙さだ。

有志連合はたび重なる空爆を行いながら、ISにこれっぽっちのダメージも与えなかった。

さらに驚くべきは、2000年代初頭には香港・マカオにある金正日のもの
と見られる口座を凍結できた米国が、ISの口座凍結に取り組まないことだ。


ISの支配領域からの石油の供給も寸断しない。若い戦闘員がトルコを通過するのを妨げもしない。
ロシアの専門家らの評価では、米国はこれら全てを特段の苦労もなくしおおせるはずだ。
なぜしないのか。したくないからだ。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151101/1108128.html#ixzz3qLdCnsIk

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少なくともISを完全に滅ぼす気など毛頭なく、その気になれば叩き潰せる組織を
いつまでも放置することで、自国の介入(特にイラクに対して)を正当化していた。

・・・ということは言えそうな気がする。

2011年にイラクから自軍を撤退させたアメリカに
再び軍事介入のチャンスを与えてくれたのは他ならぬISISだった。


また、ヒラリー・クリントンなどの話からも、
アメリカが支援した反政府組織の中にISISも含まれていたことが判明している。

アメリカにとって、それなりの金をかけた組織を、それも利用価値がまだある組織を
全力で叩き潰すことに意味はあるのだろうか?・・・ないと思う。

イランの最高指導者であるハーメネイー氏は、
アメリカこそ中東に問題をもたらす元凶だと厳しく非難している。


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イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が、
アメリカは、中東問題の大部分を占めている」と強調しました。



ハーメネイー師は、1日日曜、イランの外務大臣、及び、各国に駐在する大使、代理大使と会談し、
西アジアにおけるアメリカの政策が、この重要な地域の情勢不安の元凶であるとし

「アメリカを地域問題の解決の道と見なす一部の人々の見解に反し、
 この国は中東のさまざまな問題の大部分を占めている」と語りました。

また、
情勢不安の元凶は、アメリカによるシオニスト政権イスラエルやテロ組織への支援であり、
 このような政策は、イランの政策とは180度異なっている
」と述べました。

さらに、地域問題に関するアメリカとの協議を否定し、
アメリカは、問題の解決ではなく、自分たちの利益を押し付けようとしている。
 彼らは自分たちの要求の60%から70%を協議で押し付け、残りの目的を非合法な形で実施し、
 強要しようとしている。それならば、協議に何の意味があるだろうか?
」と語りました。

ハーメネイー師は、イランの外交政策は、憲法にある体制の外交政策であるとし、
「イランの外交政策は、イスラムから採用され、革命の理想と目的に基づいている。
 外務省の関係者や大使・代理大使は、実際、これらの原則や理想のために
 奉仕する人々、戦士、代表である」と語りました。

ハーメネイー師は、地域問題におけるイランの論理は
世界に支持された確かなものであるとし、この問題のためのイランの解決法を説明する中で、
イランはパレスチナ問題において、シオニストの偽りの強奪政権を否定し、
 この政権の日々の犯罪や悲劇を強く非難すると共に、すべてのパレスチナ人が参加する
 選挙の実施を提案している。それは現代の世界のバランスにも完全に合致したものだ

と語りました。

また、シリア問題についても、他国が共に集まり、
一つの統治体制とそのトップについて決定することには意味がないと強調し、
これは危険な陰謀であり、世界のいかなる政府も、
 それが自分に対して実施されることを受け入れない
」としました。

ハーメネイー師は、
シリア問題の解決法は選挙である。
 そのためには、まず、反体制派への資金や武器の援助を停止して戦争と情勢不安を終結させ、
 シリアの人々が安全かつ平穏な環境の中で、誰でも望む人物を選出できるようにすべきだ

と述べました。

http://japanese.irib.ir/news/leader/item/59417
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悪の枢軸国と呼ばれたイランや北朝鮮のメディアのほうが問題をよく理解している皮肉。
自由国家であるはずの日本のメディアの何たることよ。
(朝鮮新報は正確には総連の傘下メディア)


イランもロシアもシリアの問題については選挙で解決せよと述べている。
当のアサド自身、選挙による元首の決定には乗り気でいる。

アメリカ、イギリス、それらの同盟国の了解さえあれば、
すぐにでもシリアの内戦は終結できるのではないだろうか?

今回の会談は、それを説得力のある形で示したものだったと思えてならない。