観光客と鹿でにぎわう奈良公園を東大寺に方へ登っていくと、遥かに若草山、
三笠山、東大寺南大門の屋根を望むゆったりとした景色が目に入ってきます。
様々な種類の桜の咲く土塀沿いに、足元の奈良らしいマンホールの図柄
など見ながら、ほんの数百メートル行くと、
突き当りにあるのが名庭、衣水園です。
「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出し月かも」という阿倍仲麻呂
の有名な歌で知られる三笠山と東大寺南大門を借景にするという、なんとも
ぜいたくなお庭です。池泉式回遊庭園という形の日本庭園で、日本の名勝
の一つだとか。
茶室や東屋が六つ七つあります。そのうちの公開されている茶室。
床の間の微妙な角度、椿の生け花、戸棚の戸の市松模様などが
とても粋、そしてなんだかモダン。
桜の木はあまりありませんが、ミツバツツジが満開でした。
ひなびた風情の水車小屋までありました。
一番良いと思ったのは庭園や公園にありがちな無粋な立看板が一切ないこと。
立ち入り禁止の立札の代わりに、紐で括った丸石があちこちに置かれています。
小さな石がポンと置かれているだけなのですが、これって心理的にまたげな
いようで、その先へ行こうとする人は誰もいませんでした。ここはSNSのおか
げか海外でとても有名で、この時も大部分が外国人観光客だったのですが。