ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ベスト・オブ・スリー・ドッグ・ナイト (The Best Of Three Dog Night)

2007年10月14日 | 名盤


  レコードの時代からコンパクト・ディスクの時代へ移っていった1980年代、その時点で400枚以上のLPレコードを持っていたぼくは、その大半を中古専門店に持ち込んで処分してしまいました。
 「もうCDに買い換えたから必要ない」と割り切ってしまったのですが(今考えると、もったいないことをした、という気持ちです)、「CDが出たらまた買えばいい」と判断して処分したものもたくさんありました。その中にはスリー・ドッグ・ナイトのオリジナル・アルバムも5、6枚含まれていたはずです。


     


 一時はとても大きな人気を誇ったバンドだったので、すぐCD化されると思ったのが大きな間違いでした。待っても待っても復刻される気配はなく、ようやく見つけたのがこのベスト・アルバムでした。その間、辛うじて所持していたベスト・アルバム2枚とライヴ・アルバムをレコードで聴いてしのいでいたわけです。


 スリー・ドッグ・ナイトはぼくが大好きなアメリカン・ロック・バンドのひとつです。リズム&ブルーズをベースに、高度なアレンジと演奏力で次々と名曲を発表、一時はヒット・パレードの常連でした。
 リリースしたシングル23枚、うちTop50以内が21枚、Top30以内が19枚、そして全米1位3曲を含む10枚がTop10にランクされています。ミリオン・セラーは7曲です。
 また、発表したオリジナル・アルバム14枚のうち、Top30以内が12枚、Top10以内が5枚と、アルバム・セールスでも抜群の好成績を誇っています。


     


 このバンドの特徴は、何といっても3人のヴォーカリストを擁していたことでしょう。それぞれがリード・ヴォーカルを取れる力の持ち主で、黒人音楽に傾倒していました。とくにチャック・ネグロンはその芸名からわかる通り、ニグロ、つまり黒人への憧れをオープンにしていたようです。実際、彼のヴォーカル・スタイルは、まるで黒人シンガーが歌っているのかと思わせられるほど黒っぽいものです。


 このベスト・アルバムには20曲が収録されていますが、いずれもシングル・カットされたもの。とくに日本で人気の高かった「喜びの世界」「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」をはじめ、「ワン」「イーライズ・カミング」「ママ・トールド・ミー」など、数々のヒット曲が収められています。
 中でもぼくが好きなのは、オーティス・レディングのアレンジを踏襲した「トライ・ア・リトル・テンダーネス」です。この曲でリード・ヴォーカルを取るコリー・ウェルズの異様な黒っぽさと演奏は、オーティス版に勝るとも劣らないエモーショナルかつスリリングな出来栄えだと思います。
 また、コリーの黒っぽいヴォーカルの中では、ブルーズの「ネヴァー・ビーン・トゥ・スペイン」などもとても気に入ってます。
 奇異なのは、これらのヒット曲はすべてカヴァーであることです。でも、逆に言うと、無名でも大いなる可能性を秘めた曲を掘り起こす眼力があった、ということでしょうね。


     


 これだけヒット曲を持つバンドのアルバムがなかなか再発されなかったのは不思議です。版権の関係か何かでしょうか。現在では何タイトルか復刻されているみたいですね。


 「スリー・ドッグ・ナイト」という一風変わったバンド名ですが、これは「寒い夜は三匹の犬と寝るとよい」というオーストラリアの原住民の言い伝えに由来したものだそうですね。


     


 スリー・ドッグ・ナイトはいったん1977年にいったん解散しましたが、1983年に再結成。現在はダニー・ハットンとコリー・ウェルズを中心に、おもにライヴで活動しているようです。



◆ベスト・オブ・スリー・ドッグ・ナイト/The Best Of Three Dog Night
  ■歌・演奏
    スリー・ドッグ・ナイト/Three Dog Night
  ■リリース
    1982年
  ■プロデュース
    リチャード・ポドラー、ガブリエル・メクラー、ジミー・イエナー/Richard Podolor, Gabriel Mekler, Jimmy Ienner
  ■収録曲
    ① 喜びの世界/Joy to the World (Hoyt Axton)
    ② イージー・トゥ・ビー・ハード/Easy to Be Hard (Galt MacDermot, James Rado, Gerome Ragni)
    ③ ファミリー・オブ・マン/The Family of Man (Jack Cnrad, Paul Williams)
    ④ 人生なんてそんなものさ/Sure As I'm Sittin' Here (John Hiatt)
    ⑤ オールド・ファッションド・ラヴ・ソング/An Old Fashioned Love Song (Paul Williams)
    ⑥ ママ・トールド・ミー/Mama Told Me(Not to Come) (Randy Newman)
    ⑦ トライ・ア・リトル・テンダネス/Try a Little Tenderness (Jimmy Campbell, Reginald Connelly, Harry Woods)
    ⑧ シャンバラ/Shambala (Daniel Moore)
    ⑨ レット・ミー・セレナーデ・ユー/Let Me Serenade You (John Finely)
    ⑩ ネヴァー・ビーン・トゥ・スペイン/Never Been to Spain (Hoyt Axton)
    ⑪ ブラック & ホワイト/Black and White (David l. Arkin, Earl Robinson)
    ⑫ ピース・オブ・エイプリル/Pieces of April (Dave Loggins)
    ⑬ ライアー/Liar (Russ Ballard)
    ⑭ アウト・イン・ザ・カントリー/Out in the Country (Roger Nichols, Paul Williams)
    ⑮ ショウ・マスト・ゴー・オン/The Show Must Go On (David Courtney, Leo Sayer)
    ⑯ イーライズ・カミング/Eli's Coming (Laura Nyro)
    ⑰ ワン・マン・バンド/One Man Band (Billy Fox, January Tyme, Tommy Kaye)
    ⑱ ワン/One (Harry Nilsson)
    ⑲ ブリックヤード・ブルース/Play Something Sweet (Brickyard Blues) (Allen Toussaint)
    ⑳ セレブレイト/Celebrate (Gary Bonner, Alan Gordon)
  ■録音メンバー
    ダニー・ハットン/Danny Hutton (vocals)
    チャック・ネグロン/Chuck Negron (vocals)
    コリー・ウェルズ/Cory Wells (vocals)
    マイク・オールサップ/Mike Allsup (guitar)
    ジミー・グリーンスプーン/Jimmy Greenspoon (keyboards ①~③,⑤~⑱,⑳)
    スキップ・コンテ/Skip Konte (keyboards ④⑲)
    ジョー・シャーミー/Joe Schermie  (bass ①~③,⑤~⑦,⑩~⑭,⑯~⑱,⑳)
    ジャック・ライランド/Jack Ryland (bass ④⑧⑨⑮⑲)
    フロイド・スニード/Floyd Sneed (drums, percussions)




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10 コメント

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惜しいことを~ (カルロス)
2007-10-15 02:32:28
スリードッグナイトのオリジナルLPを処分しちゃったんですか?
なんてことを!もったいな~い。
それはそうと、当時はやたらとラジオでこのバンドの曲がヒットチャートに入ってて、いっつも流れてましたね。なんだかいい時代だったなぁ~と思ってます。
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400枚は・・・スゴいですね(*_*) (ひろ)
2007-10-15 08:00:58
ボクもスリードッグナイトは好きなバンドでしたから、数枚のシングルは持っております(^_^;)何より嬉しかったのは、グラスルーツ(13ズフロアー)と同じダンヒルだった事でした(ToT)、つい最近にCDになったベスト盤を買いました( ̄ー ̄)
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カルロスさん (MINAGI)
2007-10-15 08:32:57
そうなんですよ~。今考えると本当にモッタイナイことをしたと後悔しております。(´△`;)
スリー・ドッグ・ナイトは、ぼくは後追いで聴いて大好きになったんですが、当時は出す曲出す曲がみなヒットしていたみたいですね。ミュージック・ライフ誌の人気投票を見ても、70年代前半は毎年のように上位に入ってました。
60年代後半から70年代前半はロックが輝いていた時代だったのではないでしょうか~
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ひろさん (MINAGI)
2007-10-15 08:41:20
あ、未だにシングルはお持ちなんですね。今となってはお宝モノですよね。
LP400枚、結構中古レコード店も利用してましたから、安くたくさん集めることができました。でも2000枚とか3000枚とか持っているコレクターに比べると微々たるモノですよ~(^^;)
そうそう、スリー・ドッグ・ナイトもグラスルーツもダンヒル・レーベルだったんですよね。グラスルーツのベスト盤、手に入って良かったですね。ぼくもスリー・ドッグ・ナイトのベストを見つけた時は内心ガッツポーズをしたほどでした。(^^)
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私も~ (Nob)
2007-10-15 11:20:42
「オールドファッション・ド・ラブソング」と「ジョイ・トゥー・ザ・ワールド」のオンボロシングルを持ってます~
この時代の洋楽は一番好きなんですが、子供だったので(強調)LPを買えなかったのが悔やまれます。
なので、このグループもベストCDが欲しいんですよ。
もう、キリがないです・・・
LPの処分はもったいなかったですね。
店よりも私の方が高価で買い取ったのに(笑)
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Nobさん (MINAGI)
2007-10-15 12:32:43
そういえばNobさんも少し以前に記事にしてましたね。
おっ、奇遇ですね~、ぼくもこの頃子供だったんですよ(^^)。そうそう、子供の身にはLP買うなんて大冒険でしたからね。
今アマゾンを覗いてみると、このベストアルバムが新品で約2500円、中古で約1400円ほどでした~。
LPは、取っておけばよかった・・・(後悔)かさばるのと、全部CDに買い替える決心をつけたことで処分してしまったんですよ。。。

>店よりも私の方が高価で
 ゑ~、そういうことは早く言ってくださひ~。Nobさんだったら優しいから定価で引き取ってくれたかもしれませんね(^^)。
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なるほど☆ (ひろ)
2007-10-15 12:50:17
昼休みを利用して聴いております\(~o~)/ 確かにミナギさんのおっしゃる通りですね(●^o^●) 奥行きのあるヴォーカルでした(ToT) 因みにボクの好きなバンドも、45曲をリリースして40曲がチャートインしております\(~o~)/
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ひろさん (MINAGI)
2007-10-15 14:24:05
お昼休みにミュージック・タイムですか~。昼食の消化が良くなりそうですね。
45曲中40曲がチャート・インとは、いったいどのバンドでしょうか。曲数からみて活動歴は10年以上のベテラン・バンドだと思うんですが・・・。見当がつきません~残念!(;^ω^)
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なぜか? (オンデン1970)
2007-10-15 14:32:15
こんにこんにこんにちは。(←さてnキーを何回押したでしょう?)
私もスリー・ドッグ・ナイトといえば、「喜びの世界」か「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」だと思っていましたが、なんと例の押入れから出てきたのは「シャンバラ」のシングル。B面(死語?)は「僕たちのB面」(Our“B”Side)
…近日公開予定。にしました。
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オンデン1970さん (MINAGI)
2007-10-15 16:55:27
ここここんにちは~ HIPHOP系の挨拶かと思いました(^^)。nキーは9回ですー。
しかしオンデンさんちの押し入れからは何が飛び出してくるか分かりませんね。ドラえもんのポケット並み!?
「シャンバラ」、もちろんこのベストアルバムにも入っています。ライナーによると73年4月発表、全米3位、とありますね。
「A面B面」、レコード世代にしか通用しないと思っていたら、「ウッドストック」のDVDがA面B面になってました(!)。
記事の公開、楽しみに待ってます(^^)。
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