ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

レディ・ヴァイオレッタ

2021年05月01日 | 名曲

【Live Information】


 「四人囃子」を聴くようになったのは、高校3年くらいだったか、とにかく1970年代の終わり~80年代の初めでした。
 高校時代の音楽仲間だった中島くんの影響です。
 彼がリーダーだったバンドは、四人囃子の初期の大曲「一触即発」をレパートリーにしていました。
 四人囃子をコピーできるくらいでしたから、中島くんのギターの腕前は地元の高校生のなかではそれなりに目立つものでした。
 彼の影響で聴き始めた四人囃子の「一触即発」は、当時から今に至るまでの大好きなロック・アルバムのひとつです。


 1970年初頭からこの頃にかけての日本のロック・シーンは、新鮮で勢いのあるバンドがたくさん出てきていたように記憶しています。
 いわば、日本におけるロックの曙とでもいう時期でしょうか。
 クリエイション、はっぴいえんど、カルメン・マキ&OZ、サディスティック・ミカ・バンド、金子マリ&バックス・バニー、フラワー・トラヴェリン・バンドなど、列記すると錚々たる名前がズラリと並びます。
 その中で四人囃子は、独特のセンスとユニークな存在感を持つギタリスト森園勝敏の音楽性を支柱に、ビートルズ、ピンク・フロイド、フォーク、ハード・ロックなどの要素を包括したような、オリジナリティ豊かなサウンドを展開していました。



四人囃子


 「レディ・ヴァイオレッタ」は、四人囃子のセカンド・アルバム「ゴールデン・ピクニックス」に収録されているインストゥルメンタル・ナンバーです。
 作曲は森園勝敏。
 彼の持つロマンチシズム、歌心がきらめいています。
 大曲が目立つ四人囃子のレパートリーの中での一服の清涼剤、あるいは愛すべき小品とでも言うべき佳曲です。
 

 アコースティック・ギターが奏でるテーマの、メロウでメロディアスなこと。
 「ヴァイオレッタ」は、憂いを含む、しっとりした雰囲気の大人の女性なのでしょうか。
 このメロディを、エレクトリック・ギターが引き継ぎます。
 伸びやかで明るく、透明感のある音色が、曲をよりロマンチックになものにしています。
 テーマのあとはフルートのアドリブ・ソロ。
 フルートって、ちょっと上品な印象があったりするのですが、アドリブが展開するにしたがって、明るく笑ったり陽射しの中を駆けたりする、いわば「ヴァイオレッタ」の「動」の部分がイメージされてゆくのが楽しかったりします。
 フルート・ソロのあとはエレクトリック・ギターのドラマチックなソロによるクライマックス、そして静かな終焉。
 舞台の左右から幕が引かれ、閉じられるような、そんなイメージが浮かんできます。
 シングル・ヴァージョンはフルート・ソロのパートはなく、森園氏のギター・ソロが聴かれます。
 森園氏本人によると、「アルバム・バージョンがパリッシュの絵の雰囲気を一番よく表現できていると思う」そうです。



森園勝敏


 この曲は、20世紀前半のアメリカの画家マックスフィールド・パリッシュの絵「Lady Violetta」を森園氏が観たことがきっかけとなって生まれたのだそうです。
 1976年から8年の間オン・エアされていたFM東京の番組「グンゼニューミュージック共和国」のオープニングとしても使われていました。
 日本のギター・インストゥルメンタル、あるいはフュージョンの草分け的な曲にして、発表後40年以上経った今でも多くのリスナーやミュージシャンに愛されている名曲です。
 2020年3月には、この曲の様々なテイクを収録したアルバム、その名も「レィディ・ヴィオレッタ」(近年森園氏本人や四人囃子のメンバーも『レィディ・ヴィオレッタ』と発音していることから、このアルバムの片仮名表記も同様にしている、ということです)がリリースされています。



森園勝敏『レィディ・ヴィオレッタ』



◆レディ・ヴァイオレッタ
  ■発表
    アルバム、シングル・ヴァージョンとも1976年
  ■オリジナル・ヴァージョン収録アルバム
    「ゴールデン・ピクニックス」(1976年)
  ■作曲
    森園勝敏
  ■演奏
    四人囃子
  ■レコーディング・メンバー
   <アルバム・ヴァージョン>
    森園勝敏(guitars)
    佐久間正英(bass)
    坂下秀美(keyboards)
    岡井大二(drums)
    浜口茂外也(flute, psecussion : guest)
   <シングル・ヴァージョン>
    森園勝敏(guitars)
    佐久間正英(bass)
    坂下秀美(keyboards)
    岡井大二(drums)



Maxfield Parrish 『Lady Violetta』


 


コメント
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