ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

People Get Ready

2012年08月13日 | 名曲

【Live Information】 


ぼくの信仰心なんて、薄いというか、軽いというか、無いに等しいのですが、それでも「こういうふうに生きてゆきたい」とか「こんな人間になりたい」という気持ちはいつでも持っています。
ぼくの周りにも「宗教」という名の「慾」にがんじがらめになって、本来感じられるはずの愛からも平和からも結果的には遠ざかっている方々がおられます。
そういう方は往々にして「幸せ=なにか(お金、健康、地位etc)が手に入ること」と思っていたり、「自分の信仰している宗教が絶対」という信念のもとに他の宗教・宗派を(攻撃的に)否定したりしているので、むしろその独善的な考え方によって辟易させられていることが多いです。


逆に、ぼくの知人の何人かは真摯に宗教に身をゆだねておられます。
その方々に共通しているのは、「幸せ」が来るかどうかが問題なのでなく、ただ自分を磨くこと・深めることで悔いのない人生を歩もうとしているところです。
その結果、心の中に平和がもたらされ、愛をもって生きてゆけるのでしょう。


たいして自慢できるもののないぼくですが、残された人生の量について考えざるを得ない年代にさしかかった今、やれるだけのことはやり尽すこと、そして自分の中のよけいなものを削ぎ落とすこと、ひとまずこのふたつをテーマにしてゆこうと思っています。
ただしぼくはどう取り繕っても聖人君子にはなれませんし、たくさんの過ちを犯してきた、どこにでもいる俗物でしかありません。
でも、ひとつでもこの世への借りを返し、最後の時は心残りのないようにして迎えたい、という思いは日ごとに増しています。
言葉にするとおおげさですが、ただ当り前のことをきちんとやっていきたい、ってことなのです。


「People Get Ready」は、カーティス・メイフィールドのペンによるR&Bの名曲です。
カーティスが当時所属していたソウル・ヴォーカル・グループのインプレッションズが1965年に発表、全米14位のヒットを記録しました。
この曲はインプレッションズを代表する曲というだけでなく、R&Bの名曲として知られています。
カーティス・メイフィールドが1970年にソロとなったのちには、彼のライヴでの重要なレパートリーのひとつになりました。
まさにゴスペルそのものといった曲で、実際に教会で歌われることも往々にしてあるそうです。





ゴスペルとは「God Spell」、つまり「神の言葉」です。
一般的にはプロテスタントのアフリカ系アメリカ人が歌う、神への賛辞と信仰を込めた賛美歌のことだと言っていいでしょう。
苦難に満ちた人生を送らざるを得なかった彼らにとって、暗闇の中に射しこんでくる一条の光、それがゴスペルだと教わりました。文字通り、彼らにとっての救い、あるいは希望の光だったわけです。


インプレッションズのヴァージョンと並んでぼくが好きなのは、ジェフ・ベックとロッド・スチュワートが1985年に共演したカヴァー・ヴァージョンです。





ジェフにしてもロッドにしても、ロック史上、いや20世紀の音楽史上に残る偉大なミュージシャンです。
シンプルだけれど侵し難い存在感を持ったジェフのギターには息を呑むばかり。テーマをとるロッドのヴォーカルは相変わらずハスキーでソウルフル。そして長年のキャリアを濃縮したような、安らぎとエネルギーがあります。歌に絡むジェフのギターの温かさもこのうえなしです。
間奏のジェフのソロも、思いのたけを吐き出すかのようなエモーショナルな響きに満ちています。
心の穏やかさ、喜び、静かな勇気、生きる力。導かれるものの多い曲ではないでしょうか。


もともとジェフは、この曲はギター・インストゥルメンタルにしたかったらしいのですが、レコード会社のOKが出ませんでした。そんな時にでヴォーカリストとして名乗りを上げたのが、かつての盟友ロッド・スチュアートだったのです。
1960年代後半には「ジェフ・ベック・グループ」の両輪として活躍していたジェフとロッドですが、個性の強いこのふたりが並び立つはずもなく、数年後にはいわばケンカ別れ。しかし17年の時を経て行われた再会セッションでは、さすがは実力者のふたりだけあって、感動的な作品が生み出されました。ただし紆余曲折あって、この後にふたりはまたもそれぞれの道を歩むことになるのですが・・・
ともかくもこの共演は、ジェフの1985年のアルバム「フラッシュ」にも、ロッドのベスト・アルバムにも収録されています。相容れないふたりではあるものの、それぞれがアルバムに収めているということはどういうことか思いを馳せてみると、少々感慨深いものがありますね。





「People Get Ready」は、多くのミュージシャンがカヴァーしていることでも知られています。アレサ・フランクリンをはじめ、ボブ・マーリ、バニラ・ファッジ、ドアーズ、ボブ・ディラン、U2、アル・グリーン、プリンス、メイシオ・パーカーなどなど、錚々たる面子がこの曲を取り上げています。
ジェフとロッドの共演で話題になったこのヴァージョンは、2004年のローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング」で第24位に選ばれました。





[歌 詞]

[大 意]
みんな、準備は良いかい、列車が来るよ
荷造りはしなくていい、ただ乗るだけさ
信じさえすれば列車の音が聞こえるはず
切符なんて要らない、神様に感謝しよう

準備は良いかい、ヨルダン(注:約束の地イスラエルのこと)行きの列車だ
津々浦々で乗客を拾い走っている列車だ
信じる心がその扉を開き、乗車できるよ
愛を信じる人たちの希望に溢れてるんだ

座る席が無い場合もあるから気をつけて
自分だけ救われようとする人は入れない
可哀想に、こんなチャンスを逃すなんて
玉座の前では隠し事をしてもムダなこと

みんな、準備は良いかい、列車が来るよ
荷造りはしなくていい、ただ乗るだけさ
信じさえすれば列車の音は聞こえるはず
切符なんて要らない、神様、ありがとう



愛を信じ、感謝の気持ちがあれば、荷物どころか、チケットさえもいらない列車。
この列車に乗ることができれば、平和な未来がわれわれを迎えてくれるのです。
でも、この「ヨルダン行き列車」、いまの自分には乗るのはかなりムツカシイかも(^^;)



◆ピープル・ゲット・レディ/People Get Ready
  ■歌・演奏
    ジェフ・ベック&ロッド・スチュワート/Jeff Beck feat. Rod Stewart
  ■シングル・リリース
    1985年、1992年
  ■収録アルバム
    フラッシュ/Flash (1985年)
  ■作詞・作曲
    カーティス・メイフィールド/Curtis Mayfield (1965年)
  ■プロデュース
    ジェフ・ベック/Jeff Beck
  ■録音メンバー
    ジェフ・ベック/Jeff Beck (guitar)
    ロッド・スチュワート/Rod Stewart (lead-vocal)
    デュアン・ヒッチングス/Duan Hitchings (keyboard)
    ロバート・サビノ/Robert Sabino (keyboard)
    カーマイン・アピス/Carmine Appice (drum machine-programing)
    ダグ・ウィンビッシュ/Doug Wimbish (bass)
  ■チャート最高位
    1985年週間チャート  アメリカ48位、イギリス81位
    1992年週間チャート  イギリス49位
  









コメント (6)
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