6月11日 NHK海外ネットワーク
福島第一原発の事故を受け、ドイツは“脱原発”を閣議決定した。
ドイツには現在17基の原子炉があり、
そのうち8基が福島第一原発の事故後運転を停止中でそのまま廃止される。
残りの9基も2022年までに段階的に廃止される。
世界有数の工業国に波紋が広がっている。
ドイツを代表する経済団体が開いた記者会見で“脱原発”の方針に強い懸念を示したのは、
ドイツ産業連盟 エネルギー担当グリューネバルト氏。
「しっかりした態勢をとらずに脱原発を実行すれば産業界は大損害をこうむりかねない。」
グリューネバルト氏の経営するは製紙会社は、
包装紙の製紙から印刷までを行ない24時間態勢で大型機械が稼動している。
1秒足らずの停電でも工場の機械は全て停止し、生産ライン上にあった大量の紙がだめになる。
グリューネバルト氏
「ごく短時間の停電であっても私たちのような企業に影響は甚大。
私たちには安定的な電力供給が毎日24時間必要。」
ドイツを代表するルール工業地帯では、
鉄鋼や機会などの分野で国際競争力が衰えるという懸念の声が広がっている。
世界トップクラスのシェアを確保している製鉄に欠かせない機械部品メーカー。
製鉄上の炉の高温に耐える特殊な合金を鋳造し
ミクロン単位で削り上げるのに電力は欠かせない。
会社は今、30%以上も安いノズルを作る韓国メーカーの追い上げを受けている。
品質を維持しながらコストも徹底的に抑える必要に迫られている。
脱原発によって電気料金が引き上げられると大きな影響が出るという。
機械部品メーカー シュレルカンプ社長
「エネルギーをたくさん使う企業なので価格上昇は大きなダメージになる。
韓国など海外勢との国際競争には電気料金の安定が欠かせない。」
こうした産業界からの不安に対して政府は問題はないと強調している。
ドイツ レスラー経済相
「電力供給が安定し価格も上がらないことが重要だと十分考慮して決定した。
脱原発政策は実現できる。」
総発電量の22パーセントを原発が占めている。
不足する分の電力供給は最新型の火力発電所の建設によって補う。
あわせて、太陽光や風力など自然エネルギー発電を行なう企業に補助金を出して参入を増やす。
こうして総発電量に占める自然エネルギーの割合を2020年までに35パーセントに引き上げる。
さらに老朽化した火力発電所を段階的に閉鎖。
エネルギー効率を高めて原発に代わる電力の供給体制を確立する。
万が一電力が足りなくなった場合にはヨーロッパ全土に伸びる送電網を利用して、
他の国から電力を購入することも可能である。
ドイツ メルケル首相
「脱原発はドイツにとって大いなる挑戦。
われわれは再生可能エネルギーの新時代を切り開く先駆者になる。」
原発の全廃は1990年代に前の政権が掲げていた方針である。
産業界も電力の安定供給や価格が維持されることを条件に、
政府の脱原発方針そのものには賛成するという立場。
脱原発に対する国民の理解を得る取り組みが長い時間をかけて行なわれてきた。
このためドイツでは脱原発は社会全体で取り組むべきだという考えが浸透している。
日本とは状況が異なる点といえる。
産業界が掲げる安定供給と価格の維持について将来の見通しは楽観視出来ない。
ドイツでは電力需要のピークは冬場に訪れるが、
風力や太陽光発電は天候次第で出力が大きく落ち込む可能性がある。
ヨーロッパは送電網で結ばれているが、
需要がいっせいに高まれば電力の融通が利かなくなってしまうおそれもある。
また電気料金についての課題がある。
新たな火力発電所や自然エネルギーの送電網の建設には多額の費用が必要である。
このコストがかさめば電気料金に上乗せされる可能性もある。
消費者や企業に過度の負担がかかれば反発を招きかねない。
政府は難しい舵取りが必要となる。
福島第一原発の事故を受け、ドイツは“脱原発”を閣議決定した。
ドイツには現在17基の原子炉があり、
そのうち8基が福島第一原発の事故後運転を停止中でそのまま廃止される。
残りの9基も2022年までに段階的に廃止される。
世界有数の工業国に波紋が広がっている。
ドイツを代表する経済団体が開いた記者会見で“脱原発”の方針に強い懸念を示したのは、
ドイツ産業連盟 エネルギー担当グリューネバルト氏。
「しっかりした態勢をとらずに脱原発を実行すれば産業界は大損害をこうむりかねない。」
グリューネバルト氏の経営するは製紙会社は、
包装紙の製紙から印刷までを行ない24時間態勢で大型機械が稼動している。
1秒足らずの停電でも工場の機械は全て停止し、生産ライン上にあった大量の紙がだめになる。
グリューネバルト氏
「ごく短時間の停電であっても私たちのような企業に影響は甚大。
私たちには安定的な電力供給が毎日24時間必要。」
ドイツを代表するルール工業地帯では、
鉄鋼や機会などの分野で国際競争力が衰えるという懸念の声が広がっている。
世界トップクラスのシェアを確保している製鉄に欠かせない機械部品メーカー。
製鉄上の炉の高温に耐える特殊な合金を鋳造し
ミクロン単位で削り上げるのに電力は欠かせない。
会社は今、30%以上も安いノズルを作る韓国メーカーの追い上げを受けている。
品質を維持しながらコストも徹底的に抑える必要に迫られている。
脱原発によって電気料金が引き上げられると大きな影響が出るという。
機械部品メーカー シュレルカンプ社長
「エネルギーをたくさん使う企業なので価格上昇は大きなダメージになる。
韓国など海外勢との国際競争には電気料金の安定が欠かせない。」
こうした産業界からの不安に対して政府は問題はないと強調している。
ドイツ レスラー経済相
「電力供給が安定し価格も上がらないことが重要だと十分考慮して決定した。
脱原発政策は実現できる。」
総発電量の22パーセントを原発が占めている。
不足する分の電力供給は最新型の火力発電所の建設によって補う。
あわせて、太陽光や風力など自然エネルギー発電を行なう企業に補助金を出して参入を増やす。
こうして総発電量に占める自然エネルギーの割合を2020年までに35パーセントに引き上げる。
さらに老朽化した火力発電所を段階的に閉鎖。
エネルギー効率を高めて原発に代わる電力の供給体制を確立する。
万が一電力が足りなくなった場合にはヨーロッパ全土に伸びる送電網を利用して、
他の国から電力を購入することも可能である。
ドイツ メルケル首相
「脱原発はドイツにとって大いなる挑戦。
われわれは再生可能エネルギーの新時代を切り開く先駆者になる。」
原発の全廃は1990年代に前の政権が掲げていた方針である。
産業界も電力の安定供給や価格が維持されることを条件に、
政府の脱原発方針そのものには賛成するという立場。
脱原発に対する国民の理解を得る取り組みが長い時間をかけて行なわれてきた。
このためドイツでは脱原発は社会全体で取り組むべきだという考えが浸透している。
日本とは状況が異なる点といえる。
産業界が掲げる安定供給と価格の維持について将来の見通しは楽観視出来ない。
ドイツでは電力需要のピークは冬場に訪れるが、
風力や太陽光発電は天候次第で出力が大きく落ち込む可能性がある。
ヨーロッパは送電網で結ばれているが、
需要がいっせいに高まれば電力の融通が利かなくなってしまうおそれもある。
また電気料金についての課題がある。
新たな火力発電所や自然エネルギーの送電網の建設には多額の費用が必要である。
このコストがかさめば電気料金に上乗せされる可能性もある。
消費者や企業に過度の負担がかかれば反発を招きかねない。
政府は難しい舵取りが必要となる。