6月4日付 読売新聞編集手帳
米国の第20代大統領ガーフィールドが暗殺されたとき、
全米200紙を超す新聞に広告が載った。
〈私は、合衆国政府が作成した故大統領の肖像版画を入手した。
熟練の彫版工が彫った原版からカラー印刷したものを、
1枚1ドルでお分けしよう〉。
1ドルを支払った数千人が受け取ったものは、
大統領の肖像が描かれた5セント切手であった――と、
青土社刊『詐欺とペテンの大百科』にある。
広告文に嘘はないにしても、
しかし…である。
「震災対応に一定のメドがついた段階で、若い世代に責任を引き継ぎたい」。
菅首相も“退陣”を口にしたわけではないが、
これが続投の意思表明とは不埒(ふらち)な切手屋と異なるところがない。
早期退陣を確信して造反のホコを収めた鳩山由紀夫氏からは
「ペテン師」と酷評された。
めずらしく、鳩山氏の言い分に理がある。
言葉の詐術を弄する首相の国会答弁などはおよそ無意味であろうし、
どこの国もまともに外交の相手をしてくれまい。
歌人、小池光さんの一首を。
〈毎日毎日四月一日 つくづくと「娯楽としての政治」を見しむ〉。
菅さんひとりシメシメ、ニヤニヤの娯楽である。