美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その24)

2019年09月18日 21時08分56秒 | 経済

オバマ大統領とローレンス・サマーズ

*著名人ローレンス・サマーズが、マクロ経済の初歩をまったく知らないという驚くべき事実が述べられています。

ひどい無知に基づく嘘っぱち#3:
連邦政府の財政赤字は、貯蓄を奪い去る

事実:
連邦政府の財政赤字は、貯蓄を増やす

ローレンス・サマーズ
数年前、私は、上院議員のトム・ダッシュル、そしてそのとき財務長官補佐だったローレンス・サマーズと話し合う機会がありました。私は、以前から当上院議員とこれらのinnocent fraud について議論を重ねていました。そうして、それらのinnocent fraud がいかに彼に投票した人々の幸福を損なっているのかを説明してきました。それでトムは、ローレンス・サマーズを伴って話し合いの機会を設定したのです。ローレンス・サマーズは、ハーバード大学の経済学教授を歴任し、彼のふたりのおじはノーベル経済学賞の受賞者です。彼から、私の主張に対する確かな手ごたえを得られるものと期待して、私はその話し合いに臨みました。

私は開口一番こう尋ねました。「ラリー、財政赤字のなにがいったい問題なんだね」。
彼は答えました。「財政赤字は、投資に振り向けられるべき貯蓄を奪い取るんだ」。
それを受けて私は反論しました。「そんなことはないよ。合衆国財務省証券がなしうるのは、FRBの諸勘定の振替をすることだけさ。貯蓄や投資とは何の関係もないよ」。
これに対して、彼は言い返しました。「えーと、僕は本当に準備金口座のことをよく分かんないんだよ。だから、それについてこれ以上議論できないな。」

ダッシュル上院議員は、ことの成り行きを「信じられない」という様子で見守っていました。このハーバード大学経済学教授で財務長官補佐のローレンス・サマーズが準備金口座を理解していなかったって?悲しいことですが事実です。

だから私は、20分かけて“節約のパラドックス”を懇切丁寧に説明しました(詳細については、#6で扱います)。

*“節約のパラドックス”とは、個人の貯蓄を増やすと、社会全体の貯蓄が減ってしまう現象のこと。個々の家計が消費を減らして節約すると、個人は貯蓄を増やせます。しかし、家計が消費を減らして節約すると、企業の売り上げは減ります。そのため、家計(労働者)の所得が減ってしまい、結局は貯蓄が目減りします。ミクロでは美徳とされることが、マクロでは社会全体の貯蓄を減らしてしまうのです。この、ケインズ経済学の初歩を、スーパーエリートにして経済学教授のサマーズが知らなかったとは驚きです。アメリカの正統派経済学が、ケインズ経済学をまったく無視していることを物語っているエピソードですね。

サマーズがある程度分かったかなと思われたのは、次のような反応を示したときです。「…じゃあ、貯蓄を増やすためには、もっと投資することが必要なんだね」。
私は、親愛の情をこめて「そのとおりだよ」と答えました。
それで、優れたハーバード大学教授に対する初級経済学講座を終え、散会しました。

翌日、私はサマーズがConcord Coalition という財政赤字撲滅団体といっしょに登壇しているのを見かけました。彼らは、財政赤字の重大なる危険性について語り合っていました。

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