美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その23)

2019年09月16日 22時25分31秒 | 経済

この手のデマが撲滅される日を我慢強く待つことにします。

*今回で、Deadly Innocent Fraud #2 を終わります。

“中国に対する債務を清算すること”は、中国の定まったUSドルの富の変化をもたらしたりしないことにも注意してください。中国は、US財務省証券(すなわち普通預金口座)よりも当座預金口座にそれと同額のドルを持つことを単に選んだだけのことなのです。そうしてもしも中国がその代わりに財務省証券をもっと欲しがったならば——そうです、何の問題もありません——適切に数字を変えて、彼らのUSドルを彼らの当座預金口座から彼らの普通預金口座に移すだけです。

US国債の清算は、FRBに設けられた一つの口座から満期になった証券の額面分を差し引き、FRBに設けられたもう一つの口座にその額面分を付け加えること以外のなにものでもないのです。これらの移し変え(振り替え)は現実経済にとって些末な、取るに足りない事柄です。だから、国債の清算(償還)は、正統派経済学者や政治家や経済界の重鎮たちやメインストリームメディアが言い立てているような差し迫った経済的重圧ではないのです。

もう一度言います。国債を清算するために、政府は、それ自身の表計算ソフトに2つの記入をします。すなわち、どれだけの額の証券が個人部門によって保有されているのかを記録する数字が減り、どれだけの額のUSドルがFRBの準備金諸口座に保有されているのかを記録する数字が増える。それだけなのです。それで国債は清算されるのです。すべての国債債券者は、彼らのお金を取り戻すのです。これのどこが重大事なのでしょうか。

もしも中国が、彼らに支払われる現在の利回りが低すぎるのでわれわれの国債の購入を拒否したなら、なにが起こるでしょうか。利回りは、彼らが買いたくなるほどに上昇しなければならない。でしょうか?いいえ、違います!

中国は、彼らの当座預金口座にUSドルを置いたままにできます。それは、自身の通貨制度を理解している政府にとっては何でもないことです。重大事でもなんでもないのです。前に述べたように、それらの基金は、支出のために使われません。FRBに設けられた普通預金口座ではなくて当座預金口座に基金があることによってもたらされるマイナスの結果などまったくないのです。

もしも中国が「私たちは、FRBの当座預金口座にもはやお金を置いておきたくない。金かなにかほかのものに交換して支払ってほしい」と言ったら、何が起こるでしょうか。中国は、彼らが合衆国陸軍に制服を売り、代金をFRBの当座預金口座に預けたときにすでに知っていたように、わたしたちの現在の“法定通貨制度”下でこのような選択はしません。もしも彼らがドルよりもほかの何かを欲しいと思ったら、私たちが手持ちのドルを支出するときに私たちがするように、進んで売ろうとする人からそれを買うよりほかはありません。

いつの日にか、次世代の子どもたちが、事の真相をよく理解したうえで、彼らの表計算ソフト上の数字を適切に操作するようになってほしいものです。しかしいまのところ、次世代の子どもたちに残される国債についてのひどい無知による嘘っぱちに基づいて経済政策が立案・実施されているので、私たちは、最高に活用された(最適化された)産出と雇用が実現できずにいます。

緊縮財政によって失われた生産と下落した人的資本は、現に私たちと子どもたちが支払っている現実の代価にほかなりません。それは、現在および未来の可能性をより小さなものにします。私たちは、私たちが生産しうるよりも少なくしか生産できません。その結果失業率は高い水準のまま推移します(そこには、社会的犯罪や家族の諸問題や医療問題が伴います)。他方、次世代の子どもたちは、もし私たちが自分たちの人的資源を完全に雇用し、生産的たらしめ続ける方法を知っているならば彼らのためになされたであろう投資を奪われるのです。

*「次世代にツケを回すな」と叫ぶ財務省やそのエピゴーネンたちは、その「美しい」言葉面とは裏腹に、次世代に地獄のような未来をもたらそうとしていることがよく分かりましたね。心からそう思って叫んでいるとすれば単なるバカ者ですが、確信犯ならば万死に値する振る舞いです。

次回から、Deadly Innocent Fraud #3に入ります。その趣旨は「財政赤字は、貯蓄を減らすのではなくてかえって貯蓄を増やす」です。

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