J.Jトムソン
イギリスのJ.Jトムソンなどの研究により、陰極線の次の3つの性質が明らかになりました。
1) 電場や磁場によって曲がる。
2) ガラス管に当たって蛍光を発する。
3) 物体によってさえぎられ影を作る。
以上より、陰極線の正体は「負電荷を持つ粒子の流れ」であるとされ、その「負電荷を持つ粒子」は「電子」(エレクトロン)と名づけられました。
以下、それぞれについて若干の説明を加えましょう。
1) について。
上図のようにC(+極)とD(-極)に電場を加えると、陰極線は+極側すなわち上方に曲がります。この現象から、陰極線は負電荷であることがうかがえます。
*「C(+極)とD(-極)に電場を加える」とは、要するにCからD方向に電流を流すことです。「電場」にはきちっとした定義があるのですが、それに深入りすると話が見えにくくなるのでやめておきましょう。
上の図のように、陰極線に磁場を加えると下方にローレンツ力が生じ、陰極線は下に曲がります。
ローレンツ力とは、「動く荷電粒子が磁場から受ける力」です。中学生のころに教わった「フレミングの左手の法則」の親指の方向がローレンツ力の方向です。ひとつ前の図に戻ると、「電流の向き」が右から左の方向(電流の向きと電子の向きは逆です!)、「磁界の向き(磁力線の向き)」が手前から奥への方向とすると、ローレンツ力は下向きになります。ちなみに、薬指と小指は折り曲げないほうがやりやすいですよ。
次に、3)について。
上の図のように、陰極線の進路をさえぎるように金属製の障害物を置くと、陰極線は、その形と同じ影を作ります。これは、陰極線に直進性があることを示しています。またこのとき、陰極と陽極を逆にすると影は現れません。これは、陰極線は陰極から陽極に流れていることを示しています。
以上のような考察から、J.Jトムソンは、陰極線は、負電荷を持つ電子の流れであると結論づけました。
次回は、電子の比電荷の測定に話が移ります。物理学特有の数式が登場します。できるだけ話の筋道を明らかにしながら進みますので、おつきあいくださいね。
*今回は、ほとんどの図とその解説の多くを「わかりやすい高校物理の部屋」http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/#atom に負いました。この場を借りて、お礼を申し上げます。
高校物理解説講義:「電子の発見」講義2