マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

お知らせ

ながく、牧野紀之の仕事に関心を持っていただき、ありがとうございます。 牧野紀之の近況と仕事の引継ぎ、鶏鳴双書の注文受付方法の変更、ブログの整理についてお知らせします。 本ブログの記事トップにある「マキペディアの読者の皆様へ」をご覧ください。   2024年8月2日 中井浩一、東谷啓吾

出所者の自立支援施設

2015年10月16日 | ハ行

 罪をつぐない、新しい人生を踏み出そうとする人たちの支援に、農業が一役かっている。就農につなげて自立させ、再犯を防ぐのが狙いだが、心の面でも良い効果があるという。

 茨城県郊外の畑で、雑草むしりに汗を流す男性たちがいた。刑務所を仮釈放され、保護観察中の人たちだ。茨城県ひたちなか市の「茨城就業支援センター」で共同生活を送り、農業訓練生として作業する。

 「地道にやれば返ってくる仕事。達成感がある」。30代の男性は、強盗罪で4年近く刑務所に収容された。「飽き性だったけど、我慢強くなった」という。

 同センターは国の事業で2009年に、水戸保護観察所ひたちなか駐在官事務所内に設けられた。仮釈放された成人男性の社会復帰を支援し、再犯防止につなげるのが狙いだ。「犯罪白書」(2012年)によると、保護観察中の再犯率は、職に就いていた人が7・4%だったのに対し、無職は36・3%だった。

 センターで6ヵ月間受け入れ、野菜の栽培や収穫方法、出荷などについて教える。宿泊費や食費、訓練費は不要。12人の定員に対し、年間約80人が入所を希望するため、自立意欲の高い人たちを優先する。約90人が訓練を受け、6割近くが就農したという。

 大日向秀文統括保護観察官は「自然に触れながら日々の仕事をやり遂げるうちに自信がつき、態度に落ち着きが出てくる」と、「農業効果」を説明する。Tシャツ姿で作業していた20代の男性は「社会に迷惑をかけた分、今度は自分の力を役立てたい」と話す。約3年刑に服した。訓練を終えたら、地元で農業関係の仕事に就きたいという。「腰の高さだったトマトが背丈を越すまで成長し、収穫してお金になる。目に見えて形になることにやりがいを感じる」

「いかに素直になれるか」

 野菜農家の近沢行拝さんは、これまでに約90人の農業訓練生を指導してきた。就農しても1週間でやめてしまう人もいれば、独立した人もいる。「違いは、いかに素直になれるかどうか」という。他人に対して心を閉ざしがちな訓練生が多いという。

 近沢さんは「農業は自分で考え、動き、初めて成果が出る仕事。気付いた人はガラッと変わる。自分の生き方ができる人が、少しでも増えて欲しい」と話す。

 駒沢大学の桐原宏行教授(社会福祉学)は2014年から、各地で農業訓練を受けた出所者から聞き取り、効果を調べている。まだ調査数は少ないが、訓練後は、自分から社会との関わりを持とうとし、人間関係への不満感も軽減されている傾向があるという。桐原教授は「少なくとも出所後の不安定な時期において、農業は社会復帰の契機としての有効性がある」と話している。(岡田昇)
 
 「人の心安足させる力ある」

 NPO法人「農スクール」(横浜市)は、神奈川県藤沢市でホームレス向けの体験農園を運営する。週1回、畑でジャガイモやニンジンなどを育てる。最初は人付き合いが苦手でうまく話せない人が多いという。小島希世子代表は「野菜を育てた達成感で自信を取り戻し、積極的に人と関われるようになる人が増えた」と話す。参加者の3割が農業法人や土木関係の仕事に就いたという。

 石川県加賀市の一般社団法人「百笑(ひゃくしょう)の郷」は3年ほど前から、農作業を通じて引きこもりに悩む若者の社会復帰を支える。林昌則代表は「心が疲れている時には土に触れて体を動かすと元気が出やすい」と話す。

 農林水産省の担当者は「農業には人の心を安定させる力かある。こうした取り組みを通じて農業の担い手不足解消にも期待したい」と話す。(渡辺洋介)

  (朝日、2015年10月10日、夕刊)

  感想

なぜこういう施設や取り組みが全ての都道府県に無いのでしょうか。その方が異常だと思います。農業だけでなく、牧畜も有意義だと思います。所内で「高度な工芸品」を作って、通販とかで売り出している所もあるとか、先日の新聞に出ていました。とにかく、出所者を世の中に放り出して「自分で職を探せ」は酷すぎると思います。だから、折角立ち直ろうと思って出所した人が、生活に困って、「又刑務所に入りたい」と思って犯罪を犯すという悲しい例が絶えないのだと思います。

 予防は治療の10倍の価値を持つ。これは全ての分野で言えるでしょう。老人の施設や診療所でも、インフル対策に乾布摩擦とか交代浴(温冷浴)を励行するようにしたら、大いに効果があると思います。ワクチンより費用対効果で上だと思います。

 この記事のような施設でも、お金は掛かるでしょうが、これで再犯率が下がれば経費が少なくなると思います。