マキペディア(発行人・牧野紀之)

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ベーシック・インカム(その3、提唱者の意見)

2017年06月04日 | ハ行

1、朝日新聞の記事、2017年05月30日

全国民に生活に必要なお金を支給する制度「ベーシックインカム(BI)」に世界的な注目が集まっています。BI導入を提唱する著書が母国オランダでベストセラーとなり、世界20ヵ国以上で出版される歴史家兼ジャーナリストのルトガー・プレグマン氏(29)に話を聞きました。

犯罪率が低下-医療費も抑制

 裕福な国に住んでいるにもかかわらず貧困にあえいでいる人が多くいます。ただお金が無いだけで様々な機会を失っている。これは人材が無駄にされているということです。

 現行の社会福祉では生活扶助の支給の対象は貧困層に絞られています。多くの場合、働けないことを証明する必要があり、受給者の自尊心を傷つけることにつながります。一方で、BIは富裕層や貧困層、老若男女などの区別なく支給され、使い道も自由。人間に対する投資なのです。BIは、自分自身の力で何かを成し遂げる糧になります。

 BIには主に二つの反対意見があります。一つは「そんなお金はない」という財源の問題。もう一つは「誰も働かなくなる」という意見です。

 世界各地で実施されているBIの社会実験で反論できる結果が出ています。例えば1974年から4年間、カナダのドープィンという町で1000世帯を対象にした導入実験では、犯罪率が下がったほか、メンタルヘルスの悩みも減り、医療費も抑制されました。政府のコスト削減につながったのです。

 BIは基本的な生活費を保障する制度です。人々は食べるためだけに働く状況から抜け出し、より成長できる仕事や、価値がある仕事につけます。それは起業やボランティア、画家といった職業かもしれないし、子どもの保育かもしれない。

 世界でBIに関心が寄せられるようになった背景には、今の資本主義の先にあるビジョンが見えないという行き詰まりがある。我々は進むべき方向性を求めています。

 また、労働市場が流動化し、人間の仕事の多くが人工知能に置き換わると予測される今、人々は将来に不安を感じています。今はとっぴな意見に聞こえるかもしれませんが、BIがその一つの答えになると思っています。
  (聞き手・鈴木友里子)

2、朝日から。参考・スイスは国民投票で否決

 フィンランドでは今年1月から、BIの社会実験が始まった。失業者という条件がついているものの、2000人に月額560ユーロ(約6万9千円)を支給。働いて収入を得ても支給額を減額しないことになっており、就労状況や行政の簡素化の効果を検証する。カナダ・オンタリオ州でも今春、社会実験が始まった。一方、スイスでは昨年6月、導入の是非をめぐり国民投票が行われたが、財政支出が膨らむことへの懸念が強く、賛成は約23%にとどまり否決された。

3、同上。即時導入は困難(Bl制度に詳しい同志社大学の山森亮教授の話)

 日本でBIを即時導入することは財政制度の大きな変更を伴うので難しいが、現行の生活保護のように審査や選別を伴う制度に頼らなくても生活できる方向に持って行くべきだ。

 例えば、基礎年金は現在、原則的に保険料を払う必要があるが、財源を全て税でまかない、一定の年齢から全ての人が受け取れる仕組みにすれば、高齢者向けではあるが、BI的な制度となる。こうした制度の導入を検討することが必要だ。

4、同上。解説・ベーシックインカム(Bl)とは

 雇用の状況や収入、資産にかかわらず、政府が全ての国民に生帯に必要な最低限のお金を支給する制度。収入などを調べる必要がなく、年金や生活保護などを一本化して行政コストを減らせるという利点を挙げ、「小さな政府」を主張する立場から導入を求める声もある。

一方、生活できるだけの費用の支給は財政支出が膨らみすぎて実現不可能だとの反論のほか、「ばらまき」との批判もある。社会実験している例はあるが、導入した国はない。

5、牧野の感想

 社会主義の必然性の証明が欠陥だらけだと分かった今、向かうべき社会は社会民主主義しかないでしょう。それの一層進んだ案だと思います。

6、関連項目

① 新党日本の提案、2009年9月16日

② 関連図書、2012年5月29日
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