マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

募金という言葉を巡る攻防

2018年06月30日 | ハ行
お断り・近いうちに「国語辞典はこれでいいのか」という題の論文を発表する予定です。
   その準備として、ブログ「教育の広場」(第二マキペディア)の2006年9月15日号に載せた
   本論文をここに移します。

 募金という語の意味は、元は、(1)寄付金を集めることだけだった
と思います。文学博士の監修した辞書にはこの意味しか載っていま
せん。

 しかし、「募金を集める」という間違った用法が広く使われるよ
うになった今では、事実上、(2)寄付金そのものという意味も認め
ざるを得なくなっていると思います。

 しかし、数年前から私が気づいているところでは、更に、いまや、
(3)醵金、すなわち寄付金を出すことという意味でも使われるように
なってきているのです。

 9月13日の朝日新聞の天声人語はその例を出してくれました。以下
にその全文を引きます。(2)の意味で使っている所は無いと思います。
(3)と思われる所は(醵金)と入れました。

        記

 自動販売機に120円を入れて、缶コーヒーを買う。自販機の前面に、
「収益金の一部は、『緑の募金』に寄付されます」とある。隣の普
通の自販機と値段は変わらない。どういう仕組みで、いくら寄付さ
れるのか。

 寄付金は「緑の羽根」の活動をしている団体に入る。担当者によ
ると、飲料メーカー側の提案で4年前に始めた。今では全国に約2300
台ある、売り上げの約2%、飲料1本あたり約2~3円が寄付金に回る。
負担するのは、飲料メーカーと自販機設置者だ。平均1台あたり年
約1万2千円になるという。

 透明性を図るために半年ごとに、「この自販機から××円募金
(醵金)しました」という表示を掲示しているそうだ。ほかに、福
祉や医療関係の団体に寄付金が回る自販機もある。

 自販執は電気を消費し、環境に悪影響を与えるイメージが強い。
緑への貢献をうたうことは、業者にとって環境に優しい印象づくり
になる。街頭やビル内の自販機は飽和状態で、新たに設置してもら
うのはなかなか難しいが、募金自販機は売り込みやすい利点もある。

 何台も並んでいるところに、募金自販機を1台置くと、その売り
上げが一番になることが多いそうだ。買う側としても値段が同じな
ら、募金(醵金)になる方が気分がいいのかもしれない。

 米国には4兆円以上も慈善団体に寄付する大金持ちがいるが、自
販機はあまりない。日本は「寄付文化」がないとよくいわれるが、
自販機の普及は世界一だ。1回の寄付金はごくわずかとはいえ、日
本的な新しい芽が育っでいるようにも感じられる。(引用終わり)

 私は少し前からフリー国語辞典のウィクショナリに協力していま
す。手始めに「募金」について思っていることを書き込みました。

 上の(3)の用法があること、それは間違いだと書きました。ほかの
人がそこだけ全部削除してくれました。

 私は又書き込みました。又、削除されました。又、書き込みまし
た。こうして攻防が続いています。

 それにしても天人さんまでこういう用語法を使うとは。昨年は、
大学での第2外国語教育についての天人さんの浅薄な考えを批判し、
朝日新聞社に送りました。

 編集部から「筆者に回します」との返事が来ました。筆者からは
何も来ませんでした。

 天人さんは朝日新聞を代表する文章家のはずです。その天人さん
のモラルも学力も地に落ちたということは、朝日新聞のそれが地に
落ちたということでしょう。(ブログ『教育の広場』2006年9月15日)

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