植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

ついに巡り合えた「丁斎」さん 後編

2023年02月11日 | 篆刻
連日のブログのお題は、「梅舒適 」先生の印などまとめて41本を具に調べてみての研究発表であります。

今回は作款よりも、石印材に焦点を当てようと思うのです。一流の篆刻家さんが一流の書道家さんに頼まれて制作した印なので、そこらのホームセンターで売っている印材などの駄石はまず使わない、と考えて良さそうなのです。これらの石を見て、最初の感想は、名作家の作款があるわりには「汚い」という印象を持ちました。没後15年の歳月がその原因になっているのだろうと思えます。

ワタシの想像は、この印の所有者・使用者であった山下「荻舟」さんが66歳の若さで他界し、最近までその家族が所持していた。そして、その保管をしていた奥様(かどうかはわかりませんが)が施設に入るとか病気になるとかの理由で、手放すことになったのでは、というのがありがちな話であります。
また、生前も、この荻舟先生が、石印材の素材や状態には無頓着であった可能性も高いのです。

多くの石が、細かな擦過傷やスレ・アタリといった傷があちこちについているのがその結果だろうと思います。また、本来、依頼印はそれなりの布箱に入れられて手元に届くのですが、二つしか印箱はついていませんでした。これは、先生ご本人が落款用に別の箱にまとめて入れてあって、共箱・布箱を処分したのかもしれません。また、ご遺族がまとめるのに箱を邪魔にしたのかもしれません。

そこで計3個になった「喜田谷苑」さんの印であります。

「谷苑道人刻・谷苑・谷苑山人」とバラバラであります。また、どれも傷が多く最初から磨いて無かったように無数の筋がついていました。真ん中の石は、汚れを落として磨いて初めて側款が見つかったのです。博物館に展示されるような印人である谷苑さんあたりになると、おおらかでそんな細かなことには拘らない方だったと想像するしかありません。

石の種類は左二つが昌化石、右が広東緑です。左端の半透明の石は、自然石形できちんとした紐彫が施され、牛角凍や烏地高山凍などの可能性もあるとみて、もう少し調べる価値がありそうです。少なくとも、両側の石は、なかなかの優材を使っているのですが、何しろ磨いていない(笑)

次はこの三本。
これらの黄色味を帯びた石は、田黄石を頂点に、ピンキリで紛らわしいのです。黄色い系統で高級な石と言えば、順番に書けば田黄・黄芙蓉・杜陵坑・高山凍あたりが思い浮かびます。割合区別できるのは中央の石が「連江黄」で、右の石は「桐油凍」と言われる珍しい石であります。連江は、田黄等に比べるとひびが入りやすくやや透明感に欠けるので、等級は低いのですがワタシは個人的にはかっちりとした感触が好きです。桐油凍の特徴は透明感が高く、黒銀点がちりばめた様に入っていることです。洒落た紐が彫られ、石全体が透き通って水晶凍に近い美石であります。

そして最後はこの3個
左の石は、先日触れましたが、非常に古い印であることは疑いも無いのですが、傷つきやすくひびも入っている半透明の石です。ぱっと見は田黄石か。と思えますが石質は滑石に近いもので種類の特定が出来ません。中央の石は「黄芙蓉」と言われる銘石にみえます。小さな石なので、せいぜい数千円の価値であろうと思いますが、ちゃんと紐が施されて淡い薄雲のような模様も美しいのです。

肝心の梅先生の石がなんであるかが判明しません。どこにでもある寿山石の赤い石かもしれないし、紫色を帯びているので「月尾紫」あるいは馬肉紅・猪肝色とされる河幽石か?


これらの他にも、5.6本の珍しい石が入っております。ぼちぼち研究しその種類を特定したいと思います。

41本の石の中に確認できただけで、梅先生、中島先生はじめ8名の篆刻家の名前の作款がありました。ワタシのささやかな篆刻印のコレクションが、一気に充実してしまいました。全体の価値を算定する術も必要もありませんが、プライスレスで、ワタシにとってはお金に換えられない価値があるとしか言えません。

コメント
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