植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

石の中から猫が出る 原石磨き

2023年02月14日 | 篆刻
篆刻を始めて3年、日々試行錯誤、そして只管独学独習の道を歩んでまいりました。最近になって、原点に戻り、いろはのい(石を削って磨く)から始めることにしたのです。

古今東西数多の篆刻家さんや、愛好家が居ても、印材となる原石を切り出して成形し、削り研ぎだし磨いて印材にすることまでやる人は少なかっただろうと思います。少なくとも篆刻家さんは、せいぜい印材として販売されているものの印面を磨き直す程度であります。
ワタシは、その印材を彫ったり磨いて愛玩するうち、その前がどういう姿であったのかに興味を持ち、石を知りたいと思って原石磨きにチャレンジしております。

雑事と多趣味、そして篆刻そのものにも時間を取られて石を削る作業に多くの時間をかけることが出来ないのです。手すきの時に30分くらい磨くことを心がけております。その途中経過であります。原石は2種で、一種が「芙蓉石」と説明書きにあった細かく裁断された石片8個であります。もう一つは、その種類がいまだに判然としない1.1㎏の丸石でありました。前者はさほど硬くもなく、最初から細かくなっているので角を落とし只管ガサガサした部分をツヤツヤに磨くだけでありました。
[before]


[after]


問題は丸石の原石でありました。いかにも手ごわそうで艶が見えるのは油をひいているせいです。

2日目 ざっと表面の皮の部分を落としました。1050g

これからが大変でありました。何しろ初めての経験で工具も揃っておりません。しかも硬くて簡単に丸く削ることも出来ません。頭に浮かぶやり方に合わせていくつか買いそろえ、試行錯誤で作業を進めてきたのです。


作業の過程で考えたのは、石を丸ごと磨くのは捗らず、その内部も不明なままで印材としてどうなるかが計り知れないということです。いくつかに切断して磨きやすくせねばと思いました。
これが切断第一段階です。既に石は653gまでに減っております。
さらに細かく割ったのがこれです。514gになりました。

だいぶ「らしく」はなりましたが、問題は、適度な印面をきちんと確保できるか、そして他の印材のように印刀で彫れるか、であります。もし、印刀の歯がたたないとか、石が亀裂やもろく崩れるようならすべての作業は無意味となります。そこで写真の左上(36g)の石を印面だけきちんと磨いて試しに彫ることにいたしましたを

この原石は、基本的にはヨウロウ石がベースで、薄い微透明の茶色が半分くらい、これに暗い飴色が混在しております。一部を除けば表面が固くざらざらした皮になっています。恐らく石洞の中でも、数万年以上露出して外気に触れていたため水分や酸素によって硬く変質したのだと思います。飴色の部分は硬度が高い反面ジャリジャリした感触で硬くてもろいという印象です。

そこまでは印刀で削れるれべるであります。これに灰白色の非常に硬い小石と、石英質のようにきらきら光る微細な粒子が含まれた硬い黄土色の小石がが点在し全体が融合しているのです。こちらはそこらの砂利石みたいなもので刻すには全く不向きで、理想は全部摘出でありますが、入り組んでいて実際はそこだけ取り出すことは不可能です。

なので、細かく分けた石もあちこち削ってなんとか彫れそうな部分だけを印材に使うという事になります。

さて、試しに彫るにしても、凹凸が多く深いため、印面全体を大きく確保できません。物は試しで磨いて残った部分は余白として生かしたら面白いか、と自然石のテイストそのままで彫りました。

「花下睡猫」です。これはこれでありでしょう。篆刻の一手法として一つ引き出しが増えました。なお印材としては、一部の凄く硬い所さえ避ければ十分でありましたので、原石磨きは継続することにいたしました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする