植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

丁斎こと梅舒適さんの印めっけ 本物かな❓

2022年06月23日 | 篆刻
篆刻に関連する品物を見つけては入札し、骨董価値があるもの、希少価値のある石などは入札額がボンボン上がるので、ここ2週間は何も落札しておりません。わたしもだんだん目が肥えてきたので、「!!!、いいものだっ、欲しいな」、と思うものは他の方も同様にそう思うのでしょう。

このところ物入りでもあり、いささか仕事場も品物で溢れてきたのでいい潮時なのかもしれないなぁ、ヤフオクは当分手を引こうかと思っておりました。ところが先日ついに見つけてしまったのです。「梅舒適先生」の篆刻印であります。梅舒適(1916-2008)先生は近代を代表する篆刻家であり、中国書文化研究の第一人者でも知られる元日本篆刻家協会理事長です。その弟子や門下生も数多く輩出している、近代日本篆刻界の礎の一人であります。雅号は「丁斎」で、側款にはこの二文字を入れていたようです。

この稀代の篆刻家さんの印はヤフオクではほとんど見かけることが無い、つまりその印が芸術価値が高く、博物館レベルなのでそんじょそこらには流通したり出品されないのでしょう。ワタシがここ2年間でたしか1度だけ見かけた気がしますが、当然えらい高値で落札されたはずです。

それが確認できただけで6品出品されており昨晩がその入札期限であったのです。予想通り70人前後の「ウオッチ」が入っており、夕刻には数件~20件程の入札があり、早くも1万円以上になっておりました。これは、恐らく10万円コースであります。最終的には古美術商や篆刻家、筋金入りの篆刻印コレクターなどが挙って参戦することは容易に想像がつきました。一般的な印材を刻した一番安そうな物でもいいから10万円以内だったら落札しよう、と思ったのです。

その中で、まず先に落札刻限がくる篆刻印は「月尾紫」と言われる銘石で、なかなかこれに彫ったものは見かけません。最も典型的な石は小豆色に近い紫色一色ですが、この印材は黄土色の素地に紫が流れ、龍の紐が施された一対の印でした。絹箱には「梅舒適」、側款には「丁斎刻」とあります。うぅ、欲しいなぁ。

夜8時頃から案の定最高入札額がじわじわ上がり始めました。さて、そろそろその入札件数が少ない方のものを選んで入札するため、同じ出品者から出ている12件のウオッチを入れた品物の最終チェックをし品定めをしようと思いました。

梅舒適さんほか小林斗庵、石香、劉友石などの名の知れた篆刻家作品が同時に出品されていたのです。そこでふと気が付きました。
①ほとんどがやや細長い(4分あたり)紐付きの対章(2個セット)
②4,5人の作(側款)であるのにほとんど同じ縦長大きめの印箱で、表に〇〇〇作と墨書され同一筆跡に見える 
③梅舒適さんは得意としていた金石文の刻字だが、他の印も同じような体裁で、形や字体が酷似している 
④日本有数の篆刻家の作としては、彫が鈍い感じで、刀跡が曖昧で丸い。さほど芸術的には見えない=むしろ下手に見える(私見ですが💦)などです。

前に書いた様に、梅さんの印が出回ることは極めてまれなのです。遺族や遺品の管理者から放出されたか、梅先生の印コレクターや美術商がまとめて手放した、くらいしか思いつきません。しかし、5,6人の作家さんの作が混じっているのに、印箱がほぼ同じで、判で押したように紙で書かれた作家名のラベルが張られ、対章である、側款に十二支による作成年を残す、紐や印材なども共通点が多いというのは、いずれにしても不自然で、腑に落ちないのであります。印影も雑に捺されてかすれ、はっきりしません。プロはこんな印の捺し方は致しません。

ワタシはもしかしたら、「これは大掛かりに精巧に似せて作られた贋作」の可能性がある、と考えたのです。一人か二人で古い印箱・印材をまとめて調達し、それなりの古代文字を使った印を彫り、有名どころの篆刻家さんの雅号を彫ったのではなかろうかという疑念であります。共箱で騙すというのは大昔からある手口であります。

ニセモノの可能性があるなら、10万円もの大枚はたいて応札するリスクは犯せない、たとえ梅先生以外の側款で入札額がさほど高くなくても意味は同じです。結局どれにも入札しないまま一夜が明けました。

ワタシがチェックしていて終了した一連の出品は12件、2200円の最安値のものを除くと18千円~287千円で落札されていました。上に書いた「月尾紫」の印は165千円!!。「あぁやっぱり本物だったか」と臍を噛んではぎしりするか、いえいえ、巻き込まれないで見送って良かったと思います。

入札者・落札者を子細に見ると、その評価点が少ないのです。超高級品やレアな骨董品に群れて来る、評価点が何万点というレベルの猛者・美術商・専門蒐集家は入札者の中には少なかったのです。多分これはまがい物だと見破ったに相違ないのです。落札したのは皆、二ケタ台から三けたの方、つまり経験値の浅い素人が、説明書きや道具立てに騙されて「つかまされた」と確信いたしました。

かくいうワタシも「文彭」「徐三庚」さん「秋艸道人」さんなど の「もどき」の真贋不明の印を所蔵しております。そのうちのいくつかは真正の本物であろうと思っておりますが(笑)

いつの日か、心酔する「酒井子遠」さんや梅舒適先生の印を入手したいという願望を成就させようと日々ヤフオクのチェックは欠かしません。
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