植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

ぽつぽつと篆刻の依頼が来ます

2022年06月24日 | 篆刻
忙しい中暇を見つけては印を彫っております。

思えば1年半前に自分の「姓名印」を市内に住む篆刻家さんに依頼したのが事の起こりでした。彼は、篆刻家への難関を突破して賞を貰い、河野隆さんという関東の篆刻界では第一人者の先生に師事したことが自慢でした。神奈川県の若手のベスト何人かに数えられている、そうです。その頃は河野先生がいかなる人物かも知らず、とにかく、自分が書作品作りに励むために、ちゃんとした落款印が欲しい、と必要に迫られていたのです。

二月ばかり待たされて出来上がった印が、なにか釈然とせず、?こんなものかと思いつつ、3万円也を支払いました。堪ったものじゃない、この先、半紙から全紙まで様々な作品に挑戦すると、印は大きさだけで数種類は必要となります。加えて雅号印や関防印などセットにしていくと、数十万円も取られる、これは自刻しかないと心に決めたのでありました。

そこから、憑かれた様にほぼ毎日、今日までずっと篆刻に傾注しております。これまでに彫った印はそろそろ千に届こうかというところだと思われます。最初の頃は、自分の為の印を彫り、次に片端から近所や知人の名前を「陰刻(白文)」で彫り相手に押し付けるという事を始めました「押し売りならぬ押し彫り」でありますな。ざっと数えて4.~50人分となります。

知り合いが一巡したので、篆刻雑誌や印譜を取り寄せては過去の篆刻の名人の印を真似て彫る「摸刻」に挑戦、これが延々と最近まで続いているのです。その間、小朝さん・円楽さん・ぜん馬さんの印を彫って寄席に持参したりもしました。すでにその頃書道はさておき、「篆刻家になりたい」という気持ちが強くなっていました。

そうした中「篆刻」との関係の変遷は、
①書道を始めた頃先生に自刻を勧められたが、すぐにとん挫(細かい作業は年寄りには難しい)
②落款印が必要になり、金を払って人に彫って貰った
③自分で彫るしかないと決意
④練習のため、ただで、身内や知り合いの印を彫る(陰刻専門)
⑤篆刻家になりたいと思い、ヤフオクで篆刻道具・印材をしこたま集める
⑥篆刻を本格的に勉強し摸刻する←ここらから朱文(陽刻)が楽しくなる
⑦赤の他人、見知らぬ人に印のタダで彫る、とチャットで告知する
⑧書道チャットで20人近い人(素人・書道愛好家)から申し込みを受け、制作料は頂かないで彫る←今ココ

というのがここ最近までの流れでありました。
篆刻関連に投じた金銭(ヤフオクやネットでの買い物)はゆうに100万円をこえております。一日2時間平均を篆刻に費やしたとすると約千時間ほど彫ったり調べたり石を磨いたりしております。初期の頃彫った印は拙く、お粗末であり、手元にある印はほとんどすり潰して彫り直したりしています。それが、たぶんワタシの技術が少しずつ向上し、印の良し悪しに対する見識が高まったのだと独り合点しているのです。

そして、⑨金を貰って彫る、というステージに近づきつつあるのです。それは、近所のお寺のご住職(前職は高野山金剛峰寺の高僧)から「落款印を一つ彫ってくれ」と依頼があったのが転換点であります。それまで、制作料を払うから作ってくれ、という人は居ませんでした(笑)。印材や郵送料・箱代に見合った実費は頂戴していましたが。ご住職には以前既に一つただで差し上げていたのです。少し「認知」が入ったのかどうか存じませんが、ともかく依頼があって届けたら3万円のお代を頂戴しました(自宅のポストに封筒に入っていました)。お寺さんにはお金は納めるもの、頂くことなどあり得ないことです。

あわてて3万円相当の書筆3本をお返ししましたが。それでも、自分の篆刻の技量の価値を認めてもらっただけで十分でありました。そして、ここにきて書道チャットのある方(書道家さんと思われます)から、何度か写真を投稿したワタシの印が気に入ったから、二つ彫って欲しいと連絡がありました。今までは、落款印を持っていない「書作品作り初心者」さん中心に差し上げていたのです。基本タダなので、気持ちよく受け取っていただきましたが、それがその方たちそれぞれにとって、作品の落款印として本当に十分であるかは些か怪しいのであります。

それに引き換え、すでにして多くの書作品を書き、数十の篆刻印をお持ちの書道家さんから注文を受ける、というようなことはワタシにとって滅多にない事で大変名誉でもあります。日本画家さんにはいくつか印を彫りましたが。

早速、今朝から制作に掛かっております。大事なことは特別なことをしない、人に見られて評価されることを意識せず、肩に力を入れないことです。良く見せよう、上手く作ろう、などと考えるとかえっていいものは作れません。お金の為では無いので、普段通り時間をかけず、楽しく、勉強のつもりで彫る、それだけであります。

その先には⑩お金は幾らでも出すから是非印を彫ってくれ、と依頼が来る
ですが、その心配は当分なさそうであります。


コメント
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