植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

澪標(みおつくし)の思い

2022年06月09日 | 篆刻
 ワタシがまだ20代の頃、NHKの朝の連ドラにはまった時期がありました。連ドラと言えば、「おはなはん」あたりから記憶に残っており(古っ)、一世を風靡した「おしん」が秀逸でありました。新進の若手女優の登竜門でもあり数多くの名優さんがこれから生まれました。その一人が沢口靖子さん。おきれいな方ではありましたが、絵にかいたような素人の大根役者で、共演者があまりの演技下手に怒り出したと言います。今や彼女はテレビを中心に活躍する名女優であります。

 彼女の主演した処女作が「澪つくし」でありました。あの頃ワタシは早く家を出て会社のテレビでこのドラマを見るのが楽しみでした。澪標というのは川や湖に建てられた道標で、水先を間違わないための杭のことを指します。語感もよく船の行き先を導くという意味で美しい日本の言葉であります。「澪」という文字が気に入って娘が出来たら名前に使いたいと思っておりました。

 さて、ごく最近その「澪標」の言葉を思いがけず呼び起こされることになりました。lineで書道のチャットであります。170人ほどの老若男女問わず書道好きという一点で繋がる、自由なやり取りが出来るオープンチャットであります。名前も素性もわからぬ匿名での参加ですが、小学生から80歳越えの師範級の方までいる意義深いグループになっています。

 その会の名前を公募して「澪標」に内定し、その題字をみんなで書いて「いいね」がたくさんついたものを選ぼうという趣向なのです。ワタシは篆刻と臨書に明け暮れる書道修行の日々ですが、最近雑事・行事が増え、とみに多忙となりなかなかそこまでの余裕もありません。ようやく昨日手がすいたので2時間ほどで一気に彫りました。

 この一年の独学でそれなりに様になってきました。知っている人の姓名印を勝手に彫って押し付けるという暴挙をくりかえしたその数も4,50人(笑)。
4か月前には、篆刻家を目指すと決意し、「槐亭」として看板を掲げ、商売をする仲間に声をかけて美容院や飲食店、鍼灸院などに作品を置いて取次ぎ販売しようかとも画策しましたが、結局それは保留しております。「お金が取れる腕前か?」と自問自答した時、やはり時期尚早であろうと思ったのです。

 印を売るとしたらまず注文をうけつけます。これが厄介で、ワタシの個人情報をかなりオープンにせねばならないリスクが生じます。欲しい方もワタシを信用できる相手かを疑いますから、送付すべき先の名前や住所電話番号をおいそれとは教えて貰えないのです。目下可能なのはワタシの携帯電話番号を公表し、そこにショートメールか電話をしてもらうという手段です。そのうちこのブログでマルシエなる販売ツールがあると聞きましたがそれを利用するのも検討いたします。連絡が取れれば、どういう目的でどのくらいの大きさ(方寸)の印か、具体的に彫る文字と、どんな書体がいいかの希望を聞き、篆刻文字専門ので「集字」いたします。

 そこから彫るのはさほど問題はありません。ヤフオクを通じて、やまほど(売るほど)印材をストックしております。一個数万円するものから数十円まで様々、またその半数は使用済み(彫りがある)のものです。その多くは数十年以上前に販売されていた古材・旧印材であり、再利用するにも適した良質な印が多いのです。すでに数百個はランダムにワタシが摸刻して積み上げておりますが、これとていずれすり潰して再々利用します。ざっと計算してワタシの所有する印は、一般的に使う印材としては平均取得価格200円程度であろうと思います。人様に差し上げる時「せめて石の代金は払うよ」と言って頂きますが、200~300貰うくらいならタダでいいよとなるのですね。
 下の写真は割合上質(お高い)な印材で、持ち手の飾り彫り「紐」があるもの、高級石材、希少な模様の美しい自然石の形を生かしたもの様々であります。



 実際に彫って相手の方に届けるには基本「印箱」に入れます。勿論むき出しの印を緩衝材でくるんで郵送しても問題はありませんが、そのうち確実に紛失しますし、朱肉汚れが周りについたり、落下して欠損するリスクがあるので」保管するに適した印箱をつけます。
 これは、中古品の汚れた空箱から革や麻を張った高級印箱まであって高いものは千円以上致します。こればかりはワタシもネットで買うしかないので、最低1個500円位で定期的に購入しております。人によってはこれに手持ちの印泥をサービスします。ワタシは30個以上手持ちの印泥があり当然使うあても無いので同梱して送ったりしています。印泥も値段はピンキリ、印泥を入れる「印合」はほとんど大量生産の安物で、裏に「乾年製」と青文字がありますがこれは単なるロゴにすぎません。

 更に郵送すると「レターパックプラス」で500円以上かかるのです。つまり、人様に印を彫って郵送したら、自分の技術料・手間賃・時給(笑)すべて0円として原価(実費)1300円ほどになる計算になります。

 プロの篆刻家さんは、その彫り賃が高いのです。最低5千円、著名な方ならものによっては5万円以上とります。

 
 わずか千円ほどのために振込口座を知らせても仕方ないのです。
目下修行の身で、人様の印を彫るのも自分の篆刻技術向上の為の月謝と思っており、いまだ、どなたからもお金は頂いておりません。中にはお礼として「菓子折り」ジャム、チョコレート、ボディーシャンプーなどを忘れた頃頂戴することもありますが血糖値が上がりますな(笑)。そうそう、送料程度の切手を礼状に添えて送っていただいたことがありました。これが一番うれしい。自分の印を気に入って貰って、感想やら次回の希望やらを書いてもらえればワタシの糧になります。

 そのうち、ワタシの感性や技術・芸術性を認めて貰って「いくらでも金を払うから彫ってくれ」という人が現れないとも限りませんね。それはないか(爆笑)

matyu711kaemon@muse.ocn.ne.jp


コメント (1)
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