すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー戦術論】ストーミングとポジショナルプレーは融合する

2020-12-06 05:47:54 | サッカー戦術論
興味深いリバプールとシティの相似化

 最近のプレミアリーグでのリバプールの戦い方を見ていると、当初は対立概念であるはずだった「ストーミング」と「ポジショナルプレー」が融合していく未来像が見えてきた。

 以前のリバプールは、以下の2つをゲームモデルにしていた。

(1)前線でボールを失えば、ゲーゲンプレッシングでボールを即時奪回して前からショートカウンターをかける。

(2)敵のビルドアップに対してはハイプレスをかけ、前線から相手ボールを追い込み、高い位置でボールを奪ってショートカウンターをかける。

 つまり相手ボールに「嵐のように襲いかかって」(すなわちストーミングだ)、敵陣でボールを奪い取りカウンターをかけるサッカーだった。

 だが最近のリバプールの試合ぶりを見ると、クロップはかなり柔軟になってきたようだ。

 前でボールを失っても即、襲いかからず、リトリートし自陣でのミドルプレスで組織的守備をする機会が増えたのだ。

 これはリバプールを研究してくるチームが増え、彼らが前からゲーゲンプレッシングしたときにできる後ろのスペースを突かれることが多くなったからだ。

ハイプレスの率も下がってきた

 またリバプールはハイプレスに関しても柔軟になってきている。

 いまや彼らはしじゅうハイプレスしているわけではない。敵のビルドアップに対し、これまたリトリートしてミドルプレスで待ち受ける守備をするケースが増えた。

 これらの変化に伴い、ポジティブ・トランジションも変化してきている。

 つまり以前はゲーゲンプレッシング、またはハイプレスによるボール奪取から縦に速いバーティカルなショートカウンターをかける率が高かったのだが、いまではボール奪取するといったんポゼッションしてボールを安定させることも多くなったのだ。

 実はボール奪取後にいったんポゼッションを確立させるのは、グアルディオラのマンチェスターシティのプレー原則とまったく同じだ。

 ほかにもリバプールには、シティとの共通点が増えた。

 前線でボール奪取するケースが減るにつれ、自陣で組織的守備をするケースが増え、ボールの奪取ポイントが低い位置に下がっているのだ。

 ならば必然的に自陣からビルドアップする必要があるが、今のリバプールはシティ(ほど顕著ではないが)ポジショナルなビルドアップも取り入れるようになってきている。

ポジショナルになる両チーム

 他方、マンチェスターシティも、前線でボールを失えばゲーゲンプレッシングで即時奪回するのはリバプールのゲームモデルと同じだ。

 リバプールと異なっているのはポジティブ・トランジションであり、リバプールのように縦に速いカウンターをかけるのではなく、シティの場合はいったんボールをつないでポゼッションを確立させようとする点だ。

 そして比較的手数をかけたポジショナルな攻撃をする。

 おもしろいのは、この点でも最近のリバプールはシティと似通ってきていることだ。

 おそらくこれはリバプール、シティとも、ボールの奪取地点が以前のように前線から、より自陣寄りへと変わってきているからだろう。

 つまり自陣での組織的守備からボールを奪うケースが両チームともふえているのだ。

 となれば必然的に自陣からポジショナルにビルドアップし、ポジショナルに攻める必要がある。おもしろいことに、この点で両者のゲームモデルは似通ってきている。

ストーミングとポジショナルプレイの融合は歴史の必然だ

 リバプールの変化は、必然だ。そうそうゲーゲンプレッシングやらハイプレスやらで、敵陣でボールを追い回してばかりはいられない。

 相手チームはそんなプレイスタイルを研究してきており、しかもゲーゲンプレッシングやハイプレスは後方にできるスペースが致命傷になることが多いからだ。

 つまり歩留まりは高いが、ギャンブル性も高い戦い方である。

 おそらく「老成」したクロップはそこを考慮に入れ、柔軟になってきている。

 いったんリトリートしてミドルプレスによる組織的守備からボールを奪い、あとはポジショナルな攻撃をかけるふるまい方に変わってきている。

 そう考えれば、こんなふうにストーミングとポジショナルプレイはいつかは融合する運命だったのだろうか?

 リバプールとシティに起こった変化を見ればそう考えざるを得ない。

 フットボールとは、こんなふうに進化していくのである。

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