「新星★佐伯紺」
今月14日、第25回歌壇賞の授賞式が東京都内であった。受賞者は早稲田大学3年、
佐伯紺、22歳である。受賞作は★「あしたのこと」。~現実に息苦しさを感じつつ、前を見据えて生きる。その表現の確かさが高く評価された。
✿いくつもの家出をそっとあきらめて大きなかばんとともに暮らした
✿早起きの五時/夜更かしの二十九時誰にとっても夏なのですか
30首連作の中のこの2首は新かなを使っているためか散文のようで親しみやすい。私より半世紀以上も遅く生まれた佐伯紺さんの作品にすぐに共感できる。半世紀前とは環境はかなり異なっているが人間の気持ちは変わらないのだろう。
佐伯紺さんは小学生の時に俵万智、高校生で穂村弘を知り、早大に入学して、早稲田短歌会で本格的に短歌をはじめた。同人誌「羽根と根」を準備中。昨日の夕刊朝日「あるきだす言葉たち」に佐伯さんの10首が掲載されている。その中から私の好きな3首を抄出。
✿立ち並ぶビルがいちいちまぶしくて光源はみえないけれど朝
✿暖房の気配の残る部屋にいてどんな未来もあるって思う
✿窓を開けたら雨が訪ねてくる部屋に帰らなきゃいけないから帰る
(この歌を孫から送られてきたケータイのメールのように読みました。次は私の返信)。
❤ 紺ちゃんへ 歩けども歩けども一万歩にならず陸橋の下をながれる車
2月19日 晴れ 松井多絵子