酒も人も嫌いな夫
昨日・6月27日の朝日歌壇入選歌のなかに✩✩こんな歌がある。
♥ 酒呑めずついでに大の人嫌いそんな男の妻である君 (塩釜市) 佐藤龍二
選者の高野公彦と永田和彦がそれぞれ第6席に選んでいる。この2人の選者はお酒が好きなのに、なぜか「酒呑まず」の男を選んでいる。選者の「評」がないので私が勝手に作者の気持ちを思ってみる。酒を飲めない男は私の周りには少ない。飲む夫にうんざりしている妻たちのボヤキの多いこと。私もその一人だ、夜ごとの晩酌は手間もお金もかかる。まして家に飲み友を連れ込まれたら災難だ。佐藤さんは「大の人嫌い」なら申し分のない夫だ。
「そんな男の妻である君」とは妻に「ボクは面白くない男ですまないね」と言っているのか。もし佐藤さんが私やボヤキ仲間の夫だったらさぞ感謝され大切にされるだろうに。或いはこの歌は「オレの妻で君は幸せだよ」と言いたいのではないか。「夫が家につれてくるのは魅力のない男ばかり」とは妻たちの不満だ。楽しい、魅力のある友達なら大いに歓迎し、オイシイ料理も作る、でも、夫が連れてくる男はヤレヤレの男たちばかり。
♥ このままでいいはずはなくこのはずく頭の中でホーホーと鳴く 佐藤龍二
この歌は2011年 ✿読売歌壇年間賞 俵万智選である。「震災以降、以前にもまして積極的に歌作りに取り組み、多くの秀歌を寄せてくれた佐藤龍二さん、直接震災を詠んだ力作もあったが、少し距離を置いてウイットを効かせ、精神性を感じさせるこの歌が一番心にもホーホーと響く」と俵万智は書いている。(2012年、1月9日 読売新聞)
日本有数の漁港を中心とする港町の塩釜市は3・11の被害から立ち直るのはきびしいことを実感しながら、龍二さんは詠むことに専念している。妻も彼を応援しているのだろう、あの大地震が佐藤さん夫妻の絆をさらに、、、かもしれない。
6月28日 松井多絵子 、
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