軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

雲場池の水鳥(3)カルガモ

2020-06-05 00:00:00 | 野鳥
 今回はカルガモ。5月に入ったころから、雲場池周辺の木々は一気に緑が濃くなり、さらに下旬ともなると辺りの様子は一変している。一方、冬に多く見られた水鳥をはじめ野鳥の姿はこの間にめっきり減ってしまった。


1月の雲場池(2020.1.11 撮影)


1月、うっすらと雪の積もった雲場池(2020.1.15 撮影)


3月の雲場池(2020.3.11 撮影)


3月、前夜からの雪に覆われた雲場池(2020.3.15 撮影)

4月の雲場池(2020.4.12 撮影)


5月、緑が急に濃くなった雲場池(2020.5.11 撮影)

6月の雲場池(2020.6.2 撮影)

 冬の間は、多い日には10種類以上の小鳥と、やはり5~6種類の水鳥を見ることができたが、今池にいるのはカルガモだけになっている。


冬の雲場池に集まるマガモ、カルガモ、ホシハジロ、キンクロハジロなどの水鳥たち(2020.3.13 撮影)

 少し前までは、首都圏からコロナ騒動で避難してきていた別荘族が散歩している姿も見られたが、いまはそれもなくなり朝、雲場池は静まり返っている。

 今回はそうした中で相変わらず今も姿を見ることができるカルガモを紹介する。冬にはマガモに次いで数の多かったカモの仲間である。

 このこのカルガモは「国内の各地で普通に繁殖する唯一のカモ類。全国の平野部に多く生息し、近年、増加傾向にある。」(野鳥観察図鑑、 2005年 成美堂出版発行)とされるとおり、どこにいても目にする機会の多い種である。

 暖かくなり、次第に他のカモ類の数が減っていく中にあって、1月から5月中旬頃まで一貫して見られた種はこのカルガモとキンクロハジロであった。そしてキンクロハジロの姿も見られなくなり、6月になった今、数羽のカルガモを残すだけになっている。

 先に紹介したように(2020.3.7 公開)、1-2月には一番多く見られたマガモであるが、北方に帰っていったのであろう、暖かくなるにつれて次第に数が減り、5月に入ってからはまったく姿が見られなくなった。

 さて、そうしたカルガモだが、1月に雲場池周辺の散歩を始めたころには、私が池に近寄っていくと飛び立って距離をとっていた。その後、次第に慣れてきたようで、慌てて逃げだすようなことは少なくなってきた。

 時には池周辺の遊歩道のすぐそばまでやってきて、池の縁の餌を探していることがあり、私の姿を認めるとチラと横目でこちらを見るが、そのまま食べ続けることもある。

 また、陸に上がっている時も同じで、最近では遊歩道の上にいて、私が近寄っていっても道を開けようとしないので、数メートル手前でこちらが気を使って進路を変えるということもあった。

 このカルガモ、いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年 保育社発行)には次のように紹介されている。

 「形態 ♂♀類似。マガモの♀に似る。嘴峰45~49mm、翼長245~292mm、尾長79~102mm、跗蹠41~51mm、頭上、背、腰、尾は黒かっ色で眉はん黄白色。過眼線は黒かっ色である。腮(サイ、顎部のこと)、喉は黄白色、胸は黄かっ色と黒かっ色とのまだらで下方に移るに従い黒かっ色となる。翼鏡金属藍黒色、三列風切の外弁白。嘴の先端と脚とは橙黄色。
  生態 蒙古・満州・ウスリー地方・朝鮮・樺太・日本など東亜に限られ分布する種類であり、我国では各地で繁殖する。水辺、沼沢地のアシ原などに営巣し雛を連れた親鳥は人に出あうと偽傷(翼をばたばた羽ばたいてあたかも負傷して飛び立てないような動作)をして人の注意を引き、雛を安全な草むらなどに退避させる習性がある。この習性はマガモにもある。冬期は昼間は大群にて海洋上に休むことが多い。
  分布 北海道・本州・四国・九州・喜界島で繁殖し、本州中部以南には冬季も多数滞留し、また伊豆七島・対馬・種子島などにも分布する。」

 形態のところで、「翼鏡」という名称が出てくるが、これは「鳥の翼の風切羽の一部で、普通は次列風切り羽にあって、金属光沢のある目立つ色彩によって構成されるもので、カモ類に特徴的に見られる」とされる。


 水面にいる時にもこの青く光沢のある「翼鏡」の一部は見えることがあるのだが、飛び立つとその全体がよく見える。この様子を撮影したくて何度か試みたが、なかなかいいタイミングで撮影できない。ようやく撮れたものを後で紹介する。

 では以下、今年雲場池で撮影した写真を紹介する。

 はじめは1羽だけの写真から。

雲場池のカルガモ (2020.4.22 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.4.12 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.1.29 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.3.16 撮影)


雲場池のカルガモ (2020.3.12 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.3.17 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.5.27 撮影)

雲場池のカルガモ (2019.2.19 撮影)


近づいても逃げようとしない雲場池のカルガモ (2020.3.17 撮影)


雲場池のカルガモ (2020.1.21 撮影)
 
 続いてペアの写真

雲場池のカルガモ (2020.5.3 撮影)

朝の光の中で不思議な色に写った雲場池のカルガモ (2020.2.4 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.3.17 撮影)

 次は、他の種の鳥との写真。

雲場池のカルガモとキンクロハジロ (2020.5.13 撮影)

雲場池のカルガモとオオバン (2020.2.25 撮影)

雲場池のカルガモとカワウ、珍しい組み合わせになった (2020.3.10 撮影)

 次は群れの様子。

雲場池のカルガモの群れ (2020.3.12 撮影)

雲場池のカルガモの群れ (2020.3.16 撮影)

一斉に同じ方向に泳ぎ始めた雲場池のカルガモの群れ (2020.2.9 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.4.10 撮影)

雲場池のカルガモ (2020.5.24 撮影)

 時には隣接した別荘地や、精進場川に出かけていることがある。

別荘地を歩くカルガモ (2020.5.8 撮影)

別荘地内の池で餌を探すカルガモ (2020.2.22 撮影)


隣接する精進場川のカルガモ(2020.5.29 撮影)

  私が近寄っても逃げることなく、チラと様子を伺ったり、餌を探し続けたり、遊歩道を占拠したり、眠り続けることもある(目はこちらを見ているようでもあるが)。

池の縁で餌を探し、逃げようとしないカルガモ(2020.4.19 撮影)

遊歩道脇の別荘地内で佇むカルガモ(2020.5.18 撮影)

池の縁で餌を探し続けるカルガモ(2020.5.31 撮影)

菖蒲の根元で餌を探し続けるカルガモ(2020.5.8 撮影)

遊歩道上を占拠するカルガモ(2020.5.29 撮影)


池の縁に上がり眠り続けるカルガモ(眼はこちらを見ているようにも見えるが、2020.5.20 撮影)

 雲場池への散歩は早朝なので、霧が出ていたり、朝の光が池に反射して美しい背景色を作り出したりすることがある。

霧が出た日の雲場池のカルガモ(2020.4.17 撮影)

朝日に照らされるカルガモ(2020.5.31 撮影)

柔らかな朝日の中のカルガモ(2020.3.12 撮影)

緑につつまれた雲場池のカルガモ(2020.5.27 撮影)

緑が濃くなってきた雲場池のカルガモ(2020.5.18 撮影)

緑につつまれた雲場池を泳ぎ移動するカルガモ(2020.6.2 撮影)

 最後に翼鏡を撮ることのできた写真。風切り羽を上面から見た時にのみこの青い構造色が見えることが分かる。

飛び立ち、青い翼鏡が見えるカルガモ 1/2 (2020.4.16 撮影)

飛び立ち、青い翼鏡が見えるカルガモ 2/2 (2020.4.16 撮影)

着水時、青い翼鏡が見えるカルガモ(2020.5.27 撮影)

飛翔時、青い翼鏡が見えるカルガモ(2020.3.16 撮影)

 ところで、マガモの首部分が緑や青に見えるというところでも触れたが、このカルガモの翼鏡の美しい青色は構造色といわれるものである。名前の通り金属光沢があり、明らかに他の部分の羽とは異なっている

 その詳細構造はどうなっているのかと思い、調べていて意外な情報に接した。それによると、この翼鏡だけではなく、鳥の羽の種々の色の多くもまた、金属光沢の有無にかかわらず構造色だという。

 構造色のうちで金属光沢を持つものは、光が差し込む方向や見る角度で色が違って見える。これはモルフォ蝶などに代表されるように、微細な周期構造によるもので、その構造は研究され明らかにされている。

 そうした昆虫での情報から、鳥の羽の色もまた、金属光沢がなく見る方向を変えても色変化の無いものは色素によるもので、構造色ではないと考えていたが、これは大きな誤解であった。

 ただ、その発色の機構については光の散乱が関係していると考えられていたものの、不明な点もあり長い間十分に理解されないままであったという。これが、今から10年ほど前に解明されていた。次の論文がそれである。 

 2010年にAdvanced Materials に発表された論文「”How Noniridescent Colors Are Generated by Quasi-ordered Structures of Bird Feathers”  by Heeso Noh et al.」( https://www.eng.yale.edu/caolab/papers/ADV10.pdf )に、金属光沢を示さない鳥の羽の色は構造色であり、準規則性を持つ空孔構造がその発色原理であるとしている。

 さて、最近の新聞紙上で、時々このカルガモの親子のことが報じられている。雲場池で繁殖しているのかどうかまだ判らないが、寒冷地なので、もう少ししたらここでも親子が一緒に泳いだり、歩いたりする姿が見られるかもしれないと楽しみである。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする