まるでベヒシュタインのような、コンパクトでシックなたたずまい。ペダルも金具もピッカピカ。音もマイルドな中にYAMAHAの明るさがあり、低音もとても良い音に。これが実家に眠っていた、私のあまり好きじゃなかったピアノと同じものとは、とうてい思えません。今までごめんね。
そもそもの始まりは、秋にショッピングモールの楽器屋さんで出会った、中古のアップライトピアノから。私も真剣にピアノの活動を始めて今年で8年。そろそろ本物のピアノが必要だと感じていました。ただ、置く場所もないしお金もないのに、グランドピアノが欲しいという夢を捨てきれず、適当なアップライトを購入する、という発想はあまりなかった。
楽器屋さんで見たものは、40歳くらいのYAMAHAのもので、確か40万くらいだったと思います。これが欲しい!と思ったものの、40万というお金が出て来ない(笑)子供にこれからガンガンお金がかかる矢先、自分のものに40万は出せない、と思いました。中古というのもちょっとした心配がありました(素晴らしい海外のものなら、中古もよくある話ですが)
それを見た数日後に、ひっきーさんから、昔使っていたアップライトをもらって欲しいとのお話があり、弾かせてもらったらまたそれが好みな感じの音でした。やはり40歳くらいのKAWAIのもので、明るめの茶色というのも素敵でした。で、ちゃんと使えるものかどうか確認のために、わざわざ調律師さんを頼んで、使えそうだということで頂く手配をしたものの、原因はわからないのですが、工房に運んだ時点で自立しなくなってしまい、苦渋の選択で頂くお話を振り出しに戻しました。
そんなこんなでまたピアノ探しが始まり、今年の元日にダンナさまの実家近くのショッピングモールで、プレンバーガーという小さめのアップライトを見つけました。猫足のオシャレなデザインで、何でもスタインウェイの元技術者だった人のブランドとのこと。弾きしろが浅めなのがいかにもスタインウェイっぽく、お値段も50万円以内。新品だしこれはいい!と思い、家に帰ってスマホで調べてみたところ、歴史が浅い会社なので、将来手放すときに買い手がつかないかも、というようなご意見があり、一瞬で断念。中古に40万出すお金がないのに、新品に50万出すお金はもっとない(笑)いいとは思ったんだけどな~と、ほんの数時間の夢でした。
何だかお正月から縁起がいいのか悪いのかわからんな~、などと考えつつ、ダンナさまの実家から直で大阪の実家へ。それが1月2日のことです(その翌日に有楽町の火事があり、1日ずれていたら東京駅でにっちもさっちもいかなかったところでした)新幹線に乗っていたら、娘が窓の外を指して「虹が出てる!」と。それはそれは見事な大きな虹でした。それで一気に縁起がよくなり、写真を撮ってとあるSNSへUPしたところ、音楽サークルの先輩から「ジョー・サンプルの虹の楽園をリクエスト」というコメントをもらいました。その時は何の気なく読んでいたのですが、あ、そういえば私、レパートリーに「ほたる×虹の楽園」があるわ!と気づき、翌日時間があったので、実家のピアノで動画を撮り、YoutubeにUPしたら、その先輩がとても喜んで下さり、何とその日のうちにベース、ドラム、ギターをつけた音源を送って下さいました。
そんな事をしていた時、ベヒシュタインのオーナーでもある音楽仲間のsattonさんから「ジャズ向きのいい感じの音のピアノですね」というコメントが。あれ?もしかして私、灯台下暗しだったのかも、とそこで気がつきました。
子供の頃はピアノの練習が大嫌いで、ほとんど弾いていなかった。学生になりバンドがやりたくてピアノに再び向かった時も、曲として弾くというより、耳コピの音を取るための道具として使っていました。ジャズピアノを習い始めてからは、実家に帰った時は時々弾いていましたが、グランドピアノの音を知ってしまったら、何だかますます実家のピアノの音が薄っぺらく聞こえてしまい、好きになれませんでした。本物のピアノが欲しいんだという話をしたら、母からはこのピアノをさいたまに持って行けば?と何度か言われていたんですが、その頃はまだグランドピアノへの夢も捨てきれず、うやむやにしていました。
でも数年前に何度か調律に来て頂いた方から、このピアノは響板がとてもいい、良いピアノですよ、というお話を聞いていたので、何となくもったいないなあ、という気持ちはずっと心のどこかにありました。
スマホでYAMAHAの修理サービスのサイトに、メールで修理の見積もりをお願いしてみたら、20万くらいできれいに再生してもらえるとのこと。そこからとんとんと話が進み、再度実家に帰るのにちょうどいい日程で、運搬業者さんもお願いできることになったので、思い切ってお願いすることにしました。お友達のお母さんにその話をした時「何でも新しいものを買うのが普通の今どき、古いものを使おうというのはとてもいい事だと思う」と言ってもらえたことも、修理でどの程度いい音、いいタッチになるかという不安から、本当にこれでいいのかな?という迷いの気持ちがあったのですが、ポーンと背中を押してくれた気がします。
そして今日、届いたものをじっくり弾いてみました。コンパクトな作りにするために、どうしても鍵盤が軽めになったり音に深みがなかったりするということは、以前から聞いていたので、どの程度良くなったかな、と。大阪の調律師さん、素晴らしいです。私がお願いした通りの調整をして下さってました。今まで弾いた中で最高にいい音になっていました。鍵盤もちょうどいい重さになったし、何かガラガラとした音もクリアになっていて、何の遜色もない、まるで新品のようなピアノに生まれ変わりました。私と同じ昭和42年生まれの47歳が、こんなにフレッシュになるなんて・・・
メンテナンスって大事だなあ、と思いました。
近々動画を撮ってUPします。やはり生ピアノは相当音にパンチがあるので、防音についてがこれからの課題ですが、実家に置いたままにしていたら、そのままタケモトピアノかどこかに引き取られていく運命だったのが、こちらで色んな人に弾いてもらって、ピアノとしての本来の役目を全うしてもらいたいと思います。
本当に最良の選択でした