2016年7月10日 馬神溜池
2023年7月24日
馬神溜池は山形県西村山郡朝日町大谷の一級河川最上川水系大谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大谷地区には明治から昭和にかけて約10基の溜池が築造され、この溜池群を総称して『馬神ため池』と呼んでいます。
記念碑によればもともと当地区は養蚕業主体でしたが、昭和恐慌による生糸価格下落を契機に桑畑の開田を企図、その灌漑用水源として1949年(昭和24年)に馬神溜池が竣工しました。
事業主体は大谷村整地耕地組合ですので事業費の大半は受益農家の持ち出しで築造されたと思われます。
1986年(昭和61年)に県営ため池等整備事業が竣工し、ダム便覧ではこれを竣工年度としています。
管理者は耕地整理組合を引き継いだ朝日町土地改良区です。
馬神ため池群にはニッコウキスゲやヒメサユリが自生する一方、周辺の里山や農地と一体化した東北の農村風景を今に残しており、農水省により『ため池百選』に選ばれています。
馬神溜池には2016年(平成28年)7月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ訪問日時を記載しています。
池は県道112号沿いにあり、天端は車道。
左岸の洪水吐にかかる馬神橋の先に駐車スペースがあります。
(2016年7月10日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/78/0366b8b32546164205c39e6f886dfe33.jpg)
天端に並ぶ記念碑
右が昭和24年の竣工碑、左が昭和61年の改修記念碑。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/38/d1ac2f8502412a0a20fb7ff982b64b4b.jpg)
土地改良区の案内板。
(2016年7月10日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/1d/e62419cf51a1a129de4e3bf9774f964d.jpg)
本来の下流面はもっと上流側ですが、農道建設に合わせて土が盛られました。
斜行する道を下ると洪水吐減勢工に至ります。
(2016年7月10日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/f9/22646654ff4cc2dfddc07ef335282339.jpg)
こちらが減勢工。
越流した水がまるで滝のようで、このまま大谷川として流下します。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/ba/2f08d9c2eb53543fcffd29eb5bb7df81.jpg)
貯水池は細長く上流に続き総貯水容量は124万4000立米と本州の溜池としてはかなりのスケール。
ただし堆砂が多く有効貯水容量は50万立米に留まります。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/01/17602d838f33194806b4cc8b9645b933.jpg)
上流面はコンクリートブロックで護岸。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/49/99e254fa3fea369ada2d6c5916964328.jpg)
洪水吐
5枚目写真はここを下から見上げたものです。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/d9/430715a14eab87cb417c910a34687ecb.jpg)
左岸の横越流式洪水吐
梅雨前線による大雨で水位が上昇、勢い良く越流しています。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/35/9b81e049081e5ba23ee399a4ed51e7af.jpg)
アングルを変えて
見た目は美しい越流ですが、水は濁り受益農家にとっては宜しくない状況。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/ad/0dc911ce80ec9d5ab25223a68545eca6.jpg)
洪水吐の奥の斜樋。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/76/ff2bb74635dcb388cd5276567e7ed9df.jpg)
シャフトは一本
池のスケールにしては簡易な取水設備。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/56/9bcc20932b674aa08599a69a3e331f2f.jpg)
天端
右が本来の天端
農道建設により堤体下流側が厚く盛土されました。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/40/18430d01b026088f122d6bdc108fbe57.jpg)
『本来の』天端から。
(2023年7月24日)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/8a/7fe25d0fee016b68676b486d289b9d69.jpg)
0419 馬神溜池(0480)
ため池コード
山形県西村山郡朝日町大谷
最上川水系大谷川
A
E
24.8メートル(ため池データベース 23.3メートル)
123.2メートル(ため池データベース 85メートル)
1244千㎥/500千㎥
朝日町土地改良区
1949年竣工
1986年大規模改修
何も知らずに見れば、間違いなく滝です
ダムの越流にはこういう風景も見られるのですね。
それにしても124万4000立米が50万立米
三分の一までになる程の堆砂って・・
で、おバカな質問です
この堆砂を除去する作業って、やっぱり池底を攫うよな感じなんですか?
一方で電力会社のダムについては取水ができればOKという考え方から基本、堆砂は放置されていました。
ただ近年、堆砂によりダム上流での洪水が発生するなど、電力ダムでの排砂が問題化し、各社とも大きなダムについては定期的に土砂除去などを行い始めたところです。
ため池はその多くは堆砂まで想定して作られているわけではないので堆砂は進みます。
溜池の場合はだいたい25年~30年おきに大規模な改修を行うので、その際に必要以上に溜まった土砂を排出するようです。
溜池については東日本震災の際の藤沼ため池決壊から、堤体の耐震性強化が重要なポイントになっています。
堆砂を想定してのバイパストンネル
溜池の場合の土砂を排出
なにもかも「!!!!」という感じで
知らない事を知るのは、やはり楽しいです
(楽しいという言い方は語弊があるかもしれませんが)
また東日本震災の際の藤沼ため池決壊の事も
ここで初めて知りました。
丁寧に教えて下さり、有難うございました。
また頓珍漢な質問をする事もあると思いますが
呆れず、よろしくお願いします。
川を塞き止めるのですから、水だけじゃなく土砂が溜まるのは当たり前。
自然な水の流れを変えるのですからプラス面だけじゃなくマイナス面も当然顕在化します。
ダムや砂防事業で水害は減ったけど、遠州大砂丘や能登の千里浜のように土砂の流出量が減り海岸線が後退するなんてことも各地で問題化しています。
自然に手を加えるということは何かしらの反動を呼び、逆に人間社会にマイナスに来ます。
この点にどう折り合いをつけてゆくか?
大きな課題ですけど、100年後200年後にもその答えは見つかっていないでしょう。