新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

英単語の話

2023-07-30 07:50:26 | コラム
「出来る」という意味の“can”の使い方:

今朝ほど、偶々仏文学のTK博士と意見交換した中に、このcanの意味を誤解した(のだろう)為に生じた果てしない議論の例に触れたので、ここに何故そうなってしまったかを諸賢の参考までに取り上げておこうと思う。

それは1993年の秋だったかと記憶する。あるアメリカの弁護士さんが、バブルが弾けた後で方々に発生していた「アメリカに不良資産を抱えて困っている企業」の一社を訪れて、“REIT”(=Real Estate Investment Fund)での処分を提案した時のこと。私は証券化については何の知識もないままに、通訳を頼まれて付いていった次第。

担当の課長さんは「英語で話せるから通訳は不要」と言われたので、ただ黙って座っていた。課長さんは「そんな案を今日の時点では上司に提案できない」と言いたくて“I cannot 云々.”と言われてしまった。ここで「言われてしまった」にご注目願いたい。それを聞いた弁護士さんと助手の女性は「貴方が出来ないと言われるのならば、どうしたら出来るようになるのか。出来るようにお手伝いしたい」と申し入れた。何故、アメリカ側がそう解釈したのだろう。

すると課長さんはやや不満顔で“I said I cannot.”と反撃。アメリカ側は「だから。どうすれば貴方が上司に提案できるようになるか教えて下さい」と食い下がった。答えは憤然として“Didn’t I say I cannot.”と突っ返した。アメリカ側は「好意で手伝うと言っているのに、何故怒るのか」と言わんばかりにキョトンとなってしまった。ここで、無用の通訳が割って入ってその場を収めて、再会を願って退出に持ち込んだ。帰路、何故怒っていたかを解説して、驚いて貰った。

課長さんは「現時点では上司にそういう提案をするべきではないと思う。時期尚早」という風に言うか、「残念ながら、私はそういうポジションにはいない」のように言えば理解されたかも知れない。思うに単語帳的にcanの「出来る」という意味だけ覚えたので、通じなかったのだろう。

もう一つcanのおかしな使い方の例を挙げてみよう。あるところのロッカールームには“You cannot use your mobile phone here.”という英文のポスターが貼ってあった。これだと「いや、俺はここでも出来る」と言いたい人が出てくるだろうと思った。「使ってはいけない」と言いたいのならば、ズバリと「禁止する」という意味のprohibitかbanを使うか、簡単に“Don’t use your mobile phone, here.”でも解って貰えたと思う。

実際には、そのポスターには日本語で使用禁止とあるが、そこでスマホを使っている人は多いのだ。あーあ。


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