新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2月17日 その2 トランプ大統領の一般教書演説に思う

2019-02-17 10:51:21 | コラム
矢張り再選が最重要課題だと思っておられるようだ:

既に指摘したが、トランプ大統領の一般教書演説でメキシコ国境での壁を“get it built”という平明な表現で「必ず建設する」という強固な意志を表明された。そして、それが民主党の強烈な抵抗にあって予算措置が難航するや、以前から噂に上っていた「非常事態宣言」(National emergencyと言っていた)で強行突破を企てられた。この壁の建設は「全ての選挙公約を実行する」方針の大統領が積み残された3項目の中の一つである。だから万難を排しても実行するのだということだろう。

ここで、今頃になってあの一般教書演説を振り返ってみようと思うに至った。あれを聞かれた有識者や専門家の中には「あのような演説は初めて聞いた」と非難めいた感想を述べた方もおられたし、「格調が低いこと」を問題にされた方もおられた。私も確かに演説が上手いという定評があったオバマ大統領の美文調というか修飾語を数多く散りばめたものと較べれば、遙かに解りやすい口語体のような表現を数多く使っておられた。

私が聞いた具体例を挙げておけば、金正恩委員長との間柄を言うのに“My relationship with Kim Jong-un is”と来たので、次はどうなるかと思えば“is a good one.”となったので、恐れ入った。余りにもくだけた言い方であり、もっと洒落た(格調高き?)言葉が使えたのではないかと思ってしまった。瞬間に思い浮かべたのは“is in a beautiful shape”だった。その時に感じたのは月並みなことだが「大統領は明らかに彼の岩盤の支持層であるプーアホワイト以下の労働者層(トランプ大統領は“working class”と言ったが)にも解りやすいような言葉で語りかけていたのだ」という点だった。

即ち、トランプ大統領は格調であるとか美文であるとかいうオバマ大統領を語り方を変えて、誰にでも(38%乃至はそれ以上と言われる支持層のこと)解りやすい表現を貫いて、再選の足固めとすることが念頭にあったのだということ。私はそのような語調で語ることの善し悪しを論じても始まらないとすら感じていた。それは、この大統領は「公約は何としても実行し、アメリカ第一を実現することが、彼の支持層の為になり、再選への道が開ける」事が念頭を離れていないのだということの表れだろう。

しかしながら、今回の非常事態宣言は「目的のためには手段を選ばず」の様相が濃厚であり、英語に言う“End justifies the means.”であると思えるのだ。そのトランプ大統領の公約に忠実な強硬とも見える手法の結果がどう出るかは、我々はこの日本の地で見守っていくしかないのではないか。


河野太郎外相の対韓国の交渉に思う

2019-02-17 10:09:05 | コラム
適切な処理を求めた」で良いのか?:

河野太郎外相は韓国の康京和外相との会談で、徴用工裁判判の原告の弁護士が差し押さえた新日鐵住金の資産を売却する手続きに入った件に関して「適切な処理を求めた」と要求したと報じられていた。これを聞いた私は極めて遺憾に思った。即ち、これでは何も要求していないのと同じで、韓国側は「待ってました」とばかりに、彼らが信じる適切な処理である「何もしないこと」を選択するのは明らかなのである。

河野外相はこれまで見たり聞いたりしている限りでは「英語で自らが思うことといいたいことを表現する能力」は備えておられるようだ。だが、その能力と外国の代表とギリギリの(私は在職中は「命の遣り取りのような瀬戸際の交渉」と呼んでいた)「勝つか負けるか」か「こちらの主張を相手に受け入れさせるか」とは全く別な問題なのだ。私は既に何度か「アメリカのビジネスパーソンは自社の意向を相手にのませるのが使命」と言ってきたが、河野外相は康京和外相に「止めさせます」と言わせるのが使命だったはずだ。

私は河野外相の使命は「適当に処理しても良い」と解釈させてはならないのではなかったか。私は彼は未だ未だ対外国の代表との命を賭けたとでも言いたいような交渉には不慣れではないのかと危惧するに至った。かく申す私は20年以上もアメリカの会社の一員として「対日本の大手企業」との交渉の場にいた。私は日本人であるが、ここでは非常に恐ろしい場面であっても、日本人である事を離れて可能な限り厳しく且つ徹底的に論争を挑んで交渉し説得に努めたたものだった。

そのような交渉をするのは非常に辛いし、時には心苦しい場面さえあったが、そこはアメリカ式に言えば“That’s what I’m paid for.”であり、私は「その為に雇われている」のであるから、やる以外ないのである。であれば、河野外相は最低でも「何としても止めさせる方法を考えて、これ以上日本との関係を悪化させないように努めるのが貴女の役目ではないのか」と主張すべきではなかったか。私はこれだけを捉えて、敢えて「河野外相は甘い。あれでは未だ外国交渉に不慣れな日本人に過ぎない」と言っておきたい。