この御子三つに
―袴着後に桐壺更衣病む―
生まれし皇子も 三歳となり
袴着儀式 第一皇子に
負けず劣らず 豪華にて
貯蔵宝物 総出しの
帝ご意志の 盛大さ
世人誹りの 声あれど
皇子の容貌 心映え
比類無きにて 自ず止む
またの世人は 目見張りて
うっとりばかり 言うことに
「未だわれ見ず 斯く如き
人の俗世に 生まれ出を」
【袴着】
幼児から少年への成長を祝う儀式
この年夏に 桐壺更衣病み
実家罷り出を 願い出も
帝ならじと 留め置かる
病勝ちなは 常と見て
「暫し様子」の 仰せぞも
日に日病患い 重み増し
五、六日間に 重篤に
桐壺更衣母君 泣く泣くに
帝願い出 退出許可
退出当たりて 共に出ば
如何な貶め 皇子及び
災禍受くやと 留め置きて
人目忍びに 出で給う
留め置きたき 思えども
病篤きを 宮中に
置いて置けぬは 道理にて
更衣身分に ありしかば
見送りさえも ならぬ身を
悔し思えど 定めにて