令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

黒人編(6)この日暮れなば

2009年08月18日 | 黒人編
【掲載日:平成21年8月28日】

何処いづくにか われは宿やどらむ
         高島たかしまの 勝野かちのの原に この日れなば


【勝野の原 高島町勝野】


帰着の黒人に 官よりの命が 届いていた 
《勤め 懈怠けたいにつき 今以降の出仕を 停止ちょうじす》

黒人は 旅の空にいた 
官の どころを失くし
寄るは 心の支え 鶴女たづめ

黒人の足 近江から 湖西 越前へ 
しなざかる 越への道 

いそさき 漕ぎみ行けば 近江あふみうみ 八十やそみなとに たづさはに鳴く
《磯の崎 漕いで回ると うみひらけ あちこち湊に 鶴の群鳴く》 
                         ―高市黒人―〔巻三・二七三〕
何処いずくに ろうや 鶴女たづめ

かくゆゑに 見じといふものを 楽浪ささなみの ふるみやこを 見せつつもとな
《そうやから 嫌やたのに 近江京ふるみやこ 見せたりしたら 寂しいやんか》 
                         ―高市黒人―〔巻三・三〇五〕
わが船は 比良ひらみなとに 漕ぎてむ 沖へなさかりり さ夜更よふけにけり
《夜も更けた 沖へ出らんと この船は 比良の湊で 泊まりにしょうや》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二七四〕
あともひて 漕ぎ行く船は 高島たかしまの 阿渡あと水門みなとに てにけむかも
《連れ立って 漕ぎ行った船 高島の 安曇あどの湊で 泊まったやろか》 
                         ―高市黒人―〔巻九・一七一八〕

おのが心を なおに出さず 歌に心を通わせる
景を詠み 景を見せ 背後に 心がにじ
人恋しさ 
自分恋しさの 世界 
鶴女たづめとの 別れが 黒人の歌を 他の追随を許さぬ高みへと 導く 

何処いづくにか われは宿やどらむ 高島たかしまの 勝野かちのの原に この日れなば
《日ィ暮れる 何処どこで泊まれば 良えんやろ 原っぱ続きの 高島たかしま勝野かちの》  
                         ―高市黒人―〔巻三・二七五〕

加賀を抜け 雪深い 越中へ 黒人の旅は続く 

婦負めひの野の すすき押しべ 降る雪に 宿やど借る今日し 悲しく思ほゆ
《降る雪が 薄を倒す 婦負めひの野で 宿を借るんは 悲してならん》 
                         ―高市黒人―〔巻十七・四〇一六〕



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