【掲載日:平成26年2月18日】
息の緒に 我が思ふ君は 鶏が鳴く 東の坂を 今日か越ゆらむ
月日経ったな 帰るは何時か
残る日数を 指折り数え
今日は山道 越えてるやろか
明日峠を 越えるんやろか
愛しきやし しかある恋にも ありしかも 君に後れて 恋しき思へば
《あぁこんな 苦しもんかい 恋云んは 後残されて 恋し思たら》
―作者未詳―(巻十二・三一四〇)
春日なる 御笠の山に 居る雲を 出で見るごとに 君をしぞ思ふ
《山の上 春日御笠に 雲が居る それ見る度 あんた思うで》
―作者未詳―(巻十二・三二〇九)
曇り夜の たどきも知らぬ 山越えて います君をば いつとか待たむ
《辿る道 不案内やに 山越えて 出かけたあんた 帰るん何時や》
―作者未詳―(巻十二・三一八六)
草蔭の 荒藺の崎の 笠島を 見つつか君が 山道越ゆらむ
《草深い 荒藺笠島 見ながらに あんた山道 越えてるんかな》
―作者未詳―(巻十二・三一九二)
玉かつま 島熊山の 夕暮れに ひとりか君が 山道越ゆらむ
《島熊の 山を夕暮れ 一人して あんた山道 越えてるんかな》
―作者未詳―(巻十二・三一九三)
息の緒に 我が思ふ君は 鶏が鳴く 東の坂を 今日か越ゆらむ
《命やと 思うあんたは 今日辺り 東国峠 越えてんやろか》
―作者未詳―(巻十二・三一九四)
旅にありて 恋ふれば苦し いつしかも 都に行きて 君が目を見む
《旅先で 焦がれん辛い 都戻り あんた逢えるん 何時のことやろ》
―作者未詳―(巻十二・三一三六)
(行幸お供の女官の歌か?)