【掲載日:平成26年2月14日】
玉かつま 安倍島山の 夕露に 旅寝えせめや 長きこの夜を
取替えた紐 見る度思う
あの児一緒や 道連れ旅や
紐の解けは 思いの証
夢に出るのも 思いの証
旅の夜の 久しくなれば さ丹つらふ 紐解き放けず 恋ふるこのころ
《旅先で 寝る夜続いて 取換えた 紐も解かんと 恋し思てる》
―作者未詳―(巻十二・三一四四)
我妹子し 我を偲ふらし 草枕 旅のまろ寝に 下紐解けぬ
《あぁあの児 わし思とんや 旅先の 着衣寝為とるに 下紐解けたで》
―作者未詳―(巻十二・三一四五)
草枕 旅の衣の 紐解けて 思ほゆるかも この年ころは
《結んでた 紐弱なって 良う解ける 妻に逢わんで 長ごうなったな》
―作者未詳―(巻十二・三一四六)
草枕 旅の紐解く 家の妹し 我を待ちかねて 嘆かふらしも
《旅先で 紐すぐ解ける わし待って 家であの児が 嘆いとるんや》
―作者未詳―(巻十二・三一四七)
我妹子に またも近江の 野洲の川 安寝も寝ずに 恋ひ渡るかも
《お前恋い また逢いとうて 安らかな 眠り出けんで 焦がれとるんや》
―作者未詳―(巻十二・三一五七)
澪標 心尽して 思へかも 此処にももとな 夢にし見ゆる
《心から 妻が思うて くれてんや 旅空夢に 始終出るんは》
―作者未詳―(巻十二・三一六二)
玉かつま 安倍島山の 夕露に 旅寝えせめや 長きこの夜を
《安倍島の 山に露置き 冷えて来て 旅寝ること出来ん 夜長いのに》
―作者未詳―(巻十二・三一五二)
(玉かつま=立派な籠=蓋と身が合う→アヘ)
留まりにし 人を思ふに 秋津野に 居る白雲の やむ時もなし
《残し来た お前思うん 常時や 秋津野懸かる 白雲みたい》
―作者未詳―(巻十二・三一七九)