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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(二)(33)雪な踏みそね

2011年04月26日 | 家待・越中編(二)歌心湧出
【掲載日:平成23年8月16日】

大殿おほとのの このもとほりの 雪な踏みそね
  しばしばも 降らぬ雪ぞ

  山のみに  降りし雪ぞ
  ゆめ寄るな 人や な踏みそね 雪は



久米広縄ひろつな殿 聞き及びしに 
 そなた いにしえの歌集めに 執心しゅうしんよし
  どうかな 雪の歌 何か ござらぬか」
家持のうながしに 久米広縄ひろつな
されば と かねて用意の歌 披露に及ぶ

大殿おほとのの このもとほりの 雪な踏みそね
  しばしばも 降らぬ雪ぞ

  山のみに  降りし雪ぞ
  ゆめ寄るな 人や な踏みそね 雪は

《お屋敷の まわりの雪を 踏まんとき
 滅多めったらん 雪やから
 山しからん 雪やから
  そこのお前ら 近づくな 踏んだらあかん その雪を》
                         ―三形沙弥みかたのさみ―(巻十九・四二二七)

ありつつも し給はむぞ 大殿おほとのの このもとほりの 雪な踏みそね
《いつまでも 見よとなされる 雪なんや 御殿ごてんまわりの 雪踏みないな》
                         ―三形沙弥みかたのさみ―(巻十九・四二二八)

「これなん 藤原房前ふささき様 お召により 三形沙弥殿 お読みの歌 伝えたは 笠子君かさのこぎみ殿」

得意説明の ひろつなに 
家持 たわむれかかる
「さすが ひろつな殿
  それでは 『雪』に似た字に『雷』があるが
  これは どうじゃ 広縄殿」
得たり と 広縄
おそれ多くも その昔 聖武みがどに奉りし 
 犬養命婦みょうぶ(橘三千代)様の御歌」

天雲あまくもを ほろに踏みあだし 鳴神なるかみも 今日けふまさりて かしこけめやも
蹴散けちらして 雲粉々こなごなにする かみなりも 今日の畏怖おそれに 勝つこと出来できん》
                         ―縣犬養三千代あがたいぬかいのみちよ―(巻十九・四二三五)

 では 私めも」
と 遊行女婦うかれめ蒲生がもうも 続ける

天地あめつちの 神は無かれや うつくしき 我が妻さかる 光る神 鳴りはた娘子をとめ たづさはり 共にあらむと 思ひしに こころたがひぬ 
《この天地 神さんほんま らんのか あいらし妻は 死んで仕舞た 光る娘子おとめの 可愛かわい児と 手ぇたずさえて 生きてこと おもてたのんに ごて仕舞た》
言はむすべ すべ知らに 木綿ゆふたすき 肩に取りけ 倭文しつぬさを 手に取り持ちて なけそと 我れは祈れど きて寝し 妹が手本たもとは 雲にたなびく
《言うもるんも からんで 木綿もめんたすきを 肩掛けて 倭文しつぬのぬさ 手に持って ってれなと 祈ったが 手枕てまくら巻いて 共寝た妻は 雲になびいて って仕舞た》
                         ―作者未詳さくしやみしょう―(巻十九・四二三六)
うつつにと 思ひてしかも いめのみに 手本巻き寝と 見ればすべなし
《生きてこそ 意味あるのんに ゆめなかで 手枕てまくら共寝ても 甲斐かいないこっちゃ》
                         ―作者未詳さくしやみしょう―(巻十九・四二三七)