【掲載日:平成22年11月30日】
・・・・・御食向ふ 味原の宮は 見れど飽かぬかも
旧き都の 難波の浜は 西に開けし 先進門戸
昔仁徳 孝徳再興し 今またこの地 帝都となるか
やすみしし わご大君の あり通ふ 難波の宮は 鯨魚取り 海片附きて 玉拾ふ 浜辺を近み
朝はふる 波の音騒き 夕凪に 楫の声聞ゆ
《天皇が いつも来られる 難波宮 鯨も捕れる 海続き 玉を拾える 浜近て
朝寄せてくる 波音響き 夕凪浜に 梶の音》
暁の 寝覚に聞けば 海石の 潮干の共 浦洲には 千鳥妻呼び 葭辺には 鶴鳴き響む
《夜明け寝覚めに 潮引くと 瀬の方で千鳥 連れ呼んで 葦辺の方で 鶴が鳴く》
見る人の 語りにすれば 聞く人の 見まく欲りする 御食向ふ 味原の宮は 見れど飽かぬかも
《見た人皆 誉めそやし 聞いた人らは 見たい言う ほんま良えとこ 味原の宮は》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇六二〉
あり通ふ 難波の宮は 海近み 漁童女らが 乗れる船見ゆ
《いつも来る 難波の宮は 海近て 海人乙女らが 乗る船見える》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇六三〉
潮干れば 葦辺に騒く 白鶴の 妻呼ぶ声は 宮もとどろに
《潮引いて 葦辺で騒ぐ 白鶴の 連れ呼ぶ声が 宮内響く》
―田辺福麻呂歌集―〈巻六・一〇六四〉
時は天平 四四の年 春は如月 皮切りに
霜降る月の 終わるまで 元正上皇 難波宮
天皇不在 気にもせず 左大臣諸兄 傍に置き
ここが都と 居座って 難波拠点に 此処彼処
傍若無人 行幸する 異常事態に 官人
帝仲麻呂 紫香楽派 諸兄上皇 難波派の
何れに着くか 日和見を すれど決まらず 年暮れる
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