【掲載日:平成21年6月20日】
たまきはる 宇智の大野に 馬並めて
朝踏ますらむ その草深野
間人皇女は 目を覚ました
「ビン ビン ビィーン・・・」
(ああ 父上の弓だわ
今日も 狩りに お出かけなさる
力強い響き たくましいお父さま)
「大王 皇女さまから 歌が届きました」
一息入れた 舒明大王に 間人連老が 差し出した
やすみしし わご大君の
朝には とり撫でたまひ 夕には い縁せ立たしし 御執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり
《王さんが 朝の早よから 撫でさすり 夕べ遅くに 引き寄せる ご自慢弓の 弦の音》
朝猟に 今立たすらし 暮猟に 今立たすらし 御執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり
《朝猟行くとき 響いてる 夕狩り出るとき 聞こえてる ご自慢弓の 弦の音》
―中皇命―(巻一・三)
(どんな ご様子での 狩りかしら 朝霞のなか 馬を並べて・・・)
たまきはる 宇智の大野に 馬並めて 朝踏ますらむ その草深野
《王さんが 宇智の大野で 狩してる 馬駆けさせて 朝露踏んで》
―中皇命―(巻一・四)
【宇智の大野―荒坂峠付近、後方金剛山】

「わしの 狩りを見ていたようではないか のう老」
間人連老は 平伏したまま 申しあげる
「はい まことに 殿の雄々しい姿 そのままなお歌」
大王は 大きく頷くと 命じた
「さあ 仕上げの 追い狩りだ ゆくぞ!」
朝霧も晴れ 草深野に 夏の日差し

<宇智の大野>へ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます