【掲載日:平成21年9月2日】
天地の 底ひのうらに 吾が如く
君に恋ふらむ 人は実あらじ
【越前市 味真野苑 犬養孝揮毫「天の火もがも」歌碑】
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しなざかる 越
山間 味真野の 日暮は早い
殺伐たる 風景が 霞んでいく
夜の 静寂に 娘子が浮かぶ
旅といへば 言にそ易き 少くも 妹に恋ひつつ すべ無けなくに
《配所暮らし 仕様ないけども その上に お前恋しさ 重なり辛い》
―中臣宅守―〔巻十五・三七四三〕
思はずも まことあり得む やさ寝る夜の 夢にも妹が 見えざらなくに
《出来るかい お前忘れて しまうこと 寝てたら夢に ずっと出るのに》
―中臣宅守―〔巻十五・三七三五〕
思ひつつ 寝ればかもとな ぬばたまの 一夜もおちず 夢にし見ゆる
《毎晩に お前の夢を 見るのんは いつも思うて 寝るからやろか》
―中臣宅守―〔巻十五・三七三八〕
逢はむ日を その日と知らず 常闇に いづれの日まで 吾恋ひ居らむ
《逢えるんは 何時のことやろ 悶々と お前思うて 日ィ過ごしてる》
―中臣宅守―〔巻十五・三七四二〕
思わず漏れる 愚痴
かくばかり 恋ひむとかねて 知らませば 妹をば見ずそ あるべくありける
《逢わん方が 良かったやろか こんなにも 苦しい恋と 知ってたんなら》
―中臣宅守―〔巻十五・三七三九〕
〔何を 言われるの 離れていても
こんなに 恋しく 思っているに〕
天地の 底ひのうらに 吾が如く 君に恋ふらむ 人は実あらじ
《この世では うちほどあんた 恋慕い 思うてるんは 誰も居らんで》
―狭野弟上娘子―〔巻十五・三七五〇〕
わが宿の 松の葉見つつ 吾待たむ 早帰りませ 恋ひ死なぬとに
《苦しいて 死んでまいそや 家の松 見ながら待つで 早よ帰ってや》
―狭野弟上娘子―〔巻十五・三七四七〕
春の日の うらがなしきに おくれ居て 君に恋ひつつ 現しけめやも
《残されて 春の日ィかて 悲しいわ あんた思たら 正気で居れん》
―狭野弟上娘子―〔巻十五・三七五二〕
残された 娘子
独り寝の 淋しさが 日に日に増していく
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