令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

あぢま野悲恋(3)人は実(さね)あらじ

2009年09月08日 | あぢま野悲恋
【掲載日:平成21年9月2日】

天地あめつちの そこひのうらに が如く 
          君に恋ふらむ 人はさねあらじ


【越前市 味真野苑 犬養孝揮毫「天の火もがも」歌碑】


しなざかる 越 
山間やまあい 味真野あじまのの 日暮は早い
殺伐たる 風景が 霞んでいく 

夜の 静寂しじまに 娘子おとめが浮かぶ
旅といへば ことにそやすき すくなくも いもに恋ひつつ すべけなくに
配所たびらし 仕様しょうないけども その上に お前恋しさ 重なり辛い》 
               ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七四三〕
思はずも まことありむ やさの いめにもいもが 見えざらなくに
《出来るかい お前忘れて しまうこと 寝てたら夢に ずっと出るのに》 
                         ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七三五〕
思ひつつ ればかもとな ぬばたまの 一夜ひとよもおちず いめにし見ゆる
《毎晩に お前の夢を 見るのんは いつも思うて 寝るからやろか》 
                         ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七三八〕
逢はむ日を その日と知らず 常闇とこやみに いづれの日まで あれ恋ひらむ
《逢えるんは 何時いつのことやろ 悶々もんもんと お前思うて 日ィ過ごしてる》
                         ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七四二〕

思わず漏れる 愚痴ぐち 
かくばかり 恋ひむとかねて 知らませば 妹をば見ずそ あるべくありける 
《逢わんが 良かったやろか こんなにも 苦しい恋と 知ってたんなら》
                         ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七三九〕

〔何を 言われるの 離れていても 
 こんなに 恋しく 思っているに〕 
天地あめつちの そこひのうらに が如く 君に恋ふらむ 人はさねあらじ       
《この世では うちほどあんた 恋したい 思うてるんは 誰もらんで》 
                         ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七五〇〕
わが宿やどの 松の葉見つつ あれ待たむ はや帰りませ 恋ひ死なぬとに
《苦しいて 死んでまいそや うちの松 見ながら待つで 早よ帰ってや》
                          ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七四七〕
春の日の うらがなしきに おくれて 君に恋ひつつ うつしけめやも
《残されて 春の日ィかて 悲しいわ あんた思たら 正気でれん》
                         ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七五二〕

残された 娘子おとめ 
独り寝の 淋しさが 日に日に増していく 



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