【掲載日:平成22年8月6日】
妹が見て 後も鳴かなむ 霍公鳥
花橘を 地に散らしつ
取り戻った 心の安らぎ
日々の暮らしに 落ち着きが戻る
思いを 橘に託し
植え 育て 花咲かし 実を成らす
日に日にの 成長に
互いの 思いの育ちを見
恋の成就を 願う 家持
いかといかと あるわが屋前に 百枝さし 生ふる橘
玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見るごとに
《庭植えて どない育つか 楽しみに してた橘 枝伸ばし
実ぃ薬玉に する五月 近づいたころ いっぱいに 花付けたんで 朝昼と 見に行く度 思たんや》
息の緒に わが思ふ妹に 真澄鏡 清き月夜に
ただ一目 見するまでには 散りこすな ゆめといひつつ ここだくも わが守るものを 慨きや
《命と思う お前ちゃん 澄んだ月夜に 一目でも
見せたるまでは 散らんとき 屹度やでえと 一生懸命 丹精したに 腹立つな》
醜霍公鳥 暁の うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて 徒らに
地に散らせば 術を無み 攀ぢて手折りつ 見ませ吾妹子
《アホほととぎす 夜明け前 鬱としことに 飛んできて 追いに追うても 来て鳴いて
花台無しに 散らしよる 仕様無いよって 残り花 折り採ったんや 見たって欲しな》
―大伴家持―〈巻八・一五〇七〉
十五夜降ち 清き月夜に 吾妹子に 見せむと思ひし 屋前の橘
《十六夜の 澄んだ月夜に お前にと 見せよ思てた 庭橘や》
―大伴家持―〈巻八・一五〇八〉
妹が見て 後も鳴かなむ 霍公鳥 花橘を 地に散らしつ
《ほととぎす 橘花を 鳴き散らす お前見た後 鳴いたら良のに》
―大伴家持―〈巻八・一五〇九〉
ほととぎすの 心通いの無さ
それを 嘆きつつ
大嬢への 心遣いの切っ掛けとする
家持は 満ち足りを味わっていた
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