令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家持・青春編(一)(7)馬うち渡し

2010年08月10日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年6月22日】

千鳥鳴く 佐保の河門かはとの 清き瀬を
             馬うち渡し 何時いつかよはむ



〈こんなひとが 居ただろうか
 しかと 容貌かんばせを見てはいない
 声さえ  聞いていない
 なのに  この胸狂おしさは なんなのだ〉
宮中で見た ひとりの娘子おとめ
身も心もの  一目惚れ
打算など  差し挟む余地とて無い
〈これが  恋 
 これこそ  恋
 探し求めた 本物まことの恋〉

懊悩おうのうきわ
あふれ出る思いを 矢継ぎばや 歌に

かくしてや なほや退まからむ 近からぬ 道のあひだを なづみまゐ来て
《苦労して 来たのに帰れ うのんか 遠い道のり 難儀むりして来たに》
                         ―大伴家持―〈巻四・七〇〇〉 

こころには 思ひ渡れど よしを無み よそのみにして 嘆きぞ我がする
《心では おもうてるけど 伝手つてうて 余所よそながら見て わし嘆いてる》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一四〉 
千鳥鳴く 佐保の河門かはとの 清き瀬を 馬うち渡し 何時いつかよはむ
《佐保川の 千鳥鳴いてる 清い瀬を 馬走らして 早よかよいたい》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一五〉 
夜昼よるひると いふわき知らず 我が恋ふる 心はけだし いめに見えきや
《思てるで  夜昼無しの 恋ごころ きっとあんたの 夢に出たやろ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一六〉 
つれも無く あるらむ人を 片思かたもひに 我れし思へば わびしくもあるか
《惚れたけど 連れないり されてもて ひとり思うん せつないこっちゃ》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一七〉 
思はぬに 妹がゑまひを いめに見て 心のうちに 燃えつつそ居る
微笑顔ほほえみを 思いがけずに 夢に見て わしの恋心こころは 燃え上ったで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一八〉 
大夫ますらをと 思へる我れを かくばかり みつれにみつれ 片思かたもひをせむ
《このわしが 苦恋こいするもんか おもてたに 胸きむしる 片恋かたこいすんや》
                         ―大伴家持―〈巻四・七一九〉 
村肝むらぎもの こころくだけて かくばかり 我が恋ふらくを 知らずかあるらむ
《この胸が  張り裂けそうな わしの恋 あんたほんまに 知ってんやろか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七二〇〉 

かくばかり 恋ひつつあらずは 石木いはきにも ならましものを 物はずして
《こんなにも 恋い焦がれんと 石や木に 成りたいもんや 心のたん》 
                         ―大伴家持―〈巻四・七二二〉 

家持は 打ちひしがれていた
〈届かぬ思い 
 我れとしたことが・・・ 
 こんなことがあって良いものか 
 恋とは  残酷
 片恋は なんとみじめなものよ〉

ふと よぎる 過ぎてった女たち
その破れた恋心に  思い致す家持


最新の画像もっと見る

コメントを投稿