令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(24)戯奴(わけ)は恋ふらし

2010年06月08日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年8月20日】

わが君に 戯奴わけは恋ふらし たはりたる
             茅花ちばなめど いやせに



安貴王あきのおおきみ ああ どうして 
 あんな 年寄りにとついだのかしら 
 でっぷり  太った
 当初は 世間知った たくましい人だった
 あの当時  若い男は 頼りなかったわ
 今は  違うの 細身の 若いのが いい
 そう あの 貴公子然の 家持やかもちなんか 抜群
 あの人  すごく 恋人 多いの
 私には  若すぎて 恋人は 無理だけど
 小母おばさま いえ お姉さま でのお付き合い
 ちょっと  からかって みようかしら〉
紀郎女きのいらつめは 侍女じじょを 花みに やらせた
〈「茅花ちばな合歓ねむ」この 取り合わせが いいわ
 これに 歌をえて と〉

戯奴わけがため わが手もすまに 春の野に 抜ける茅花ちばなそ してえませ
《ぼんちをば おもうてった 茅花ちばな食べ ちょっとえてや 痩せ身のぼんち》
                         ―紀郎女きのいらつめ―〈巻八・一四六〇〉
昼は咲き よるは恋ひる 合歓木ねむの花 君のみ見めや 戯奴わけさへに見よ
《昼咲いて 夜は恋見る 合歓ねむの花 ねえさま見たで ぼんちも見いや》
                         ―紀郎女きのいらつめ―〈巻八・一四六一〉

ほどなく  家持からの 返歌が 届く
〈まあ  早速に
 家持坊や  まんざらでもないのね〉

わが君に 戯奴わけは恋ふらし たはりたる 茅花ちばなめど いやせに
ねえさまに ぼんち恋した ろた茅花はな たけどせる またまた痩せる》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六六二〉 
吾妹子わぎもこが 形見の合歓木ねむは 花のみに 咲きてけだしく にならじかも
合歓ねむの花 いとしあんたに 似てる花 はなやかやけど 〈恋の〉らへんわ》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六六三〉 
〈ふむ  ふむ 
 魅力的だけど  恋はしません だって
 照れているのね  あの坊や
 男ごころ  って 複雑なんだ〉

春のおぼろ 
かりに 梅の花 かそけく にお
家持のもとに 清らかな 歌が

ひさかたの 月夜つくよきよみ 梅の花 心ひらけて おもへる君
清々すがすがし つき光に 梅咲いた うちの心も あんたに咲いた》
                         ―紀小鹿郎女きのおしかのいらつめ―〈巻八・一六六一〉
                   〈紀郎女は紀鹿人きのかひとの娘 ために「小鹿」の愛称〉
〈あの 小鹿おしかのばあさん 取り違えたか〉
家持は  苦笑するしかない

まさか妻問いは  なかろうと思いつつ
居待ちの月を  眺めやる 紀郎女

闇夜やみならば うべも来まさじ 梅の花 咲ける月夜に 出でまさじとや
闇夜やみよなら えへのんは 仕様しょうないが 梅花はな咲く月夜 なんで来んのや》
                         ―紀女郎―〈巻八・一四五二〉 



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