【掲載日:平成22年7月27日】
月夜には 門に出で立ち 夕占問ひ
足卜をぞせし 行かまくを欲り
世間の眼を憚るあまり
妻問いの足は 遠のく
せめて 歌の遣り取りでも と思うが
屋敷内の眼ともなれば
往き来にも 増して
気を配らねばならない 日々
春日山 霞たなびき 情ぐく 照れる月夜に ひとりかも寝む
《春日山 霞棚引き 人恋し 好え月やのに 独り寝すんか》
―大伴坂上大嬢―〈巻四・七三五〉
月夜には 門に出で立ち 夕占問ひ 足卜をぞせし 行かまくを欲り
《好え月や 家の外出て いろいろと 占いしたで 行きたい思て》
―大伴家持―〈巻四・七三六〉
離されれば 離されるほど
絆は 固さを増す
今の我慢は 後々の逢瀬のため
抑え心が 後々の結びつき誓いへと 駆りたてる
かにかくに 人は言ふとも 若狭道の 後瀬の山の 後も逢はむ君
《なんやかや 他人は言うけど 後々は 添い遂げられる そうやなあんた》
―大伴坂上大嬢―〈巻四・七三七〉
世間し 苦しきものに ありけらし 恋に堪へずて 死ぬべき思へば
《世の中は 苦しいもんと 分かったわ 苦恋堪え切れず 死にそなるから》
―大伴坂上大嬢―〈巻四・七三八〉
後瀬山 後も逢はむと 思へこそ 死ぬべきものを 今日までも生けれ
《後々に 一緒になろと 思うから 死なんと来たで 今日まで生きて》
―大伴家持―〈巻四・七三九〉
言のみを 後も逢はむと ねもころに われを頼めて 逢はざらむかも
《そのうちに 一緒なろやと うまいこと 言うてこのわし 騙すん違うか》
―大伴家持―〈巻四・七四〇〉
心に生まれる 一抹不安
かろうじての諧謔で 打ち消しにかかる家持
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