【掲載日:平成25年7月23日】
紫の 帯の結びも 解きもみず もとなや妹に 恋ひ渡りなむ
次いで登場 歌種類 寄物陳思の その意味は
景色や物に 託し付け 心思いを 詠う歌
歌の並びは 物による 分類毎に 編む形
これも解して 恋心 移ろい順に 並び替え
男の恋は 未熟で青い
ちらと見た児に すぐ惚れ焦がれ
痩せた死ぬやと 言う一方で
他人の児とても 可愛いと惚れる
紫の 帯の結びも 解きもみず もとなや妹に 恋ひ渡りなむ
《紫の 帯紐何も 解かへんに 甲斐無あの児に 恋続けんか》【帯に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九七四)
朝影に 我が身はなりぬ 玉かぎる ほのかに見えて 去にし子ゆゑに
《ちらと見た あの児姿に 惚れて仕舞て 朝影みたい 痩せて仕舞たで》【玉に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八五)
かくしてぞ 人は死ぬといふ 藤波の ただ人目のみ 見し人ゆゑに
《こないして 人恋死ぬか 一目だけ 見ただけ惚れた あの児の所為で》【藤に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇七五)
浅茅原 茅生に足踏み 心ぐみ 我が思ふ子らが 家のあたり見つ
《浅茅原 胸きゅっとして 焦がれてる あの児の辺り 見遣ったこっちゃ》【浅茅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五七)
(茅生に足踏み=痛い)(心ぐみ=心が痛い)
あしひきの 山川水の 音に出でず 人の子ゆゑに 恋ひ渡るかも
《激し水音 させるん違ごて こっそりと 人妻あの児 恋い慕とんや》【川に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇一七)
小竹の上に 来居て鳴く鳥 目を安み 人妻ゆゑに 我れ恋ひにけり
《小竹上で 鳴く鳥みたい 感じ良て 人妻やのに わし惚れて仕舞た》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九三)