【掲載日:平成25年7月12日】
妹と言はば 無礼し畏し しかすがに 懸けまく欲しき 言にあるかも
あの児可愛いや いじらし限り
逢いたい言たに 何故顔隠す
結んだ下紐は 誓いの証
解くかわしが お前や無しに
おほかたは 何かも恋ひむ 言挙げせず 妹に寄り寝む 年は近きを
《言わんでも お前と共寝る日 来る云うに 焦がれするのん 怪っ訝しこっちゃ》
―作者未詳―(巻十二・二九一八)
死なむ命 此処は思はず ただしくも 妹に逢はざる ことをしぞ思ふ
《死ぬ命 惜し思わんが ただお前 逢えん様なるん 嫌だけなんや》
―作者未詳―(巻十二・二九二〇)
現にか 妹が来ませる 夢にかも 我れか惑へる 恋の繁きに
《お前来た 夢か現か 幻か 焦がれ激して わし惚けとんか》
―作者未詳―(巻十二・二九一七)
玉かつま 逢はむと言ふは 誰れなるか 逢へる時さへ 面隠しする
《逢いたいて 言うたん誰や そや云うに 逢うたら顔を 隠すんかいな》
―作者未詳―(巻十二・二九一六)
(玉かつま=立派な籠=蓋と身が合う→逢う)
ふたりして 結びし紐を ひとりして 我れは解きみじ 直に逢ふまでは
《二人して 結んだ下紐や 逢うまでは なんで一人で わし解くかい》
―作者未詳―(巻十二・二九一九)
いかならむ 日の時にかも 我妹子が 裳引きの姿 朝に日に見む
《何時来たら あの児の裳裾 引く姿 朝晩ずっと 見られんやろか》
―作者未詳―(巻十二・二八九七)
妹と言はば 無礼し畏し しかすがに 懸けまく欲しき 言にあるかも
《「お前」言ん もったいないな そやけども 言てみたいんや 「お前」て云んを》
―作者未詳―(巻十二・二九一五)
(相手は身分高い女か)